海外投資家が4月になると日本株を買い越すといった傾向は、今年にも当てはまるのでしょうか。買っているような感じはしないし、買っているとしても大幅ではなさそう。逆に、まだ売りが続いているような動きをしている主力株もあります。特に、今年は3月3週までの11週間で日本株(先物・現物合算)を8兆4,000億円も売り越しているため、4月は売り過ぎた一部を買い戻す期待は先行しやすい。買いが入るか、入らないかによって、相場の見方は大きく変わるでしょう。
ただ、どうなのでしょうか。日経平均に採用されている企業ベースの利益でみると、12倍台のPER(株価収益率)に割安感はありますが、株価が高値や安値を付けるときと同じように、割安感があるままでこんなに長く放置されることはありません。市場が下方修正を織り込んでいるのか、または、海外勢は米中貿易戦争の激化が日本の景気を下押すリスクや、安倍政権が失脚する政治リスクを相当気にしているとか。しかし、そこまで日本の内情を詳しく勘ぐって、売買しているとも思えない。きっと、こんなに売り越しが続いたのは、海外投資家の保有するポジションが予想以上に痛んでいるためだと思います。たとえば、「FANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)」や「MANT(マイクロソフト、アップル、エヌビディア、テスラ)」に相当依存していましたから、それらが崩れたことによって、我先にと、アベノミクス相場で積み上げた日本株を選択の余地なく、手放している可能性も高いと思います。まだ、海外投資家が見送っているなら、日本株は米国株が落ち着くまでの間、しばらくは上げ下げの繰り返しでしょうけど、8兆円売られても日経平均は昨年安値を下回っていません。ある意味で底堅く、長期の上昇トレンドは健在です。いつもそう思うのですが、できれば買いが入る前に仕込みたいですね。

さて、前回お伝えしました、CFTC(全米先物取引委員会)が毎週公表するCME通貨先物市場における投機筋の円ポジションですが、円売りポジション超過がさらに減少し、3月27日時点ではたったの3,668枚に急減していました。2月後半ぐらいの段階では10万枚を超えていたのです。円売りポジション超過が10万枚を超えると円安がとまる、円高に転じるケースは過去に何度もありました。逆に、円売りポジションが大幅に減少すると、円安方向に動き出す傾向が強い。なぜかと言うと、例えば、10万枚の売りのポジションを保有している人の大部分がさらなる円安で恩恵を受けるためには、さらに10万枚以上の新規の売り圧力が発生して円安が進まない限り、先に売りポジションを持ってた売り方は身動きがとれません。でも、いずれ時間が経つにつれ、あきらめて退散してしまう。そうなると、少しの円売り圧力が加わるだけで円安方向に振れやすくなるという理屈です。「日柄調整」とよくいいますが、まさにそのメカニズムです。ですので、足元も円安に向かいやすい環境が整ったといえます。直近では、ドル/円が一時1ドル=107円台を回復するなど、需給の改善が進んでいる、と思わせる動きがみられます。ダウ平均が一時700ドル超下げた4月2日の米国市場でも、105円台前半まで円高が進むことはなかったのです。
今は材料待ちの状況にあるわけですが、ポイントは6日に発表されるアメリカの3月雇用統計とみています。前回2月分は、非農業部門雇用者数が市場予想を上回る強い結果となった一方、2月の株価急落の引き金となった賃金の伸びが市場予想を下回る伸びにとどまったことで安心感が広がりました。当日のダウ平均は前日比で440ドル程度の上昇幅となったのですが、そのあとまもなく調整に入った経緯があります。結局のところ、賃金の伸びが抑えられたからといって、株価は上がらない。足元は当時よりも株式市場の不安定さが増しており、指標結果に過剰反応する可能性が高い点には注意が必要です。
もちろん結果はわかりませんが、その前後が円安・株高が明確になる最初のタイミングになると考え、ゴールデン・ウィーク前後には22,700円程度の戻り高値に期待しています。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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