先週24日、ついにドル/円は一目均衡表の日足「雲」下限を下抜け、いわゆる三役暗転(陰転)の弱気シグナルを発することとなりました。また、今年8月24日安値と10月15日安値を結ぶ中期サポートラインも同時に下抜ける展開となっています。この時期には避けがたいポジション調整絡みの動きが主因とは言え、幾つかの弱気シグナルが投資家心理に及ぼすインパクトは決して小さいものではありません。

加えて、先週の週足ロウソクは、下図でも確認できるとおり、終値で62週移動平均線(62週線)を下回る結果となりました。昨年7月の調整時や今年8月の調整時にも、ドル/円の下値をガッチリと支えた62週線だけに、それを明確に下抜けることとなれば、一時調整局面入りの可能性を考慮しはじめないわけには行きません。

目先の焦点となるのは、この週末(年末)時点でドル/円が位置する水準です。現在、62週線は120.58円に位置しており、まずは「同水準を上回ったところで今週を終えるかどうか」ということが一つ。また、いま一つに「この年末時点で今年の年初に位置していた水準を上回るかどうか」という点も大いに気になるところです。

今年1月2日のドル/円は、始値が119.69円で終値が120.49円でした。現在とほぼ同水準にあることから、どのみち2015年の「年足」は「十字線」のような形状となることが見込まれるわけですが、心理的には年末の終値が年初の始値を上回るかどうかによって違ってくる部分というのもあるでしょう。

このようにチャート上、幾つかの弱気シグナルが散見されるようになってきたことは事実ですが、なおも破られていない幾つかのサポートが機能していることもまた事実です。周知のとおり、それは一つに120円ちょうどの心理的節目であり、いま一つに長期サポートライン(2012年9月安値と2014年7月安値を結ぶライン)の存在です。

下図であらためて確認できるように、この長期サポートラインは62週線と同様に、2012年の秋以来ずっとドル/円の下値を支える役割を担ってきました。非常に強い下値支持であるだけに、そう簡単に破られるものではないでしょう。ただ、それほど強いサポートであるだけに、ひとたび同水準を下抜けると後に少々まとまった調整が入る可能性もあると言うことは否定できません。

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今まさに、ドル/円は重要な下値支持水準における瀬戸際の攻防を繰り広げています。仮に前記の長期サポートラインを明確に下抜ける展開となれば、短中期的に今年10月安値が位置する118円近辺、それを下抜ければ今年8月安値が位置する116円近辺が意識されやすくなるものと、一応は念頭に置いておく必要があるでしょう。

一方、120円ちょうどの心理的節目や長期サポートラインが強力な下支えとなり、あらためて元のやや強気の流れに戻った場合は、まず前記の中期サポートライン(現在は一つの上値抵抗)を試すこととなるでしょう。同水準を上抜ければ、足下の弱気の流れも一巡したとの感が強まりますが、上方には日足「雲」や89日移動平均線、21日移動平均線などが控えており、どうにも上値の重い展開はしばらく続くものと見られます。

ドル/円の値動きが年間で過去最小レベルとなりそうな2015年も、そろそろ終わりを迎えます。この1年間、本欄をご愛読いただきまして誠にありがとうございました。また来年も1月6日より全力で取り組んで参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役