本欄の前回更新分で注目したように、ドル/円の直近(11月9日)高値は8月28日につけた急落後の戻り高値と同じように、今年1月安値と4月安値、7月安値を結ぶ"以前のサポートライン"の延長線が位置するところで上値を押さえられる格好となりました。そして、いまだに同ラインを上抜ける動きとはなっていません。

ただ、一方でドル/円の21日移動平均線(21日線)が先週13日に200日移動平均線(200日線)を上抜け、さらに昨日(17日)から89日移動平均線(89日線)をも上抜ける動きとなってきたことは大いに注目されます。結果、其々に計算期間の異なる移動平均線が上から21日線、89日線、200日線の順で並ぶ「パーフェクト・オーダー」が再び示現することとなり、これは基本的に強い基調であることを示します。

今後、現在横向きで推移している89日線が明確に上向きになってくると、さらなる上値を試す可能性が一段と高まるものと考えられます。また、前回の本欄で述べたように、いずれ6月5日高値と8月12日高値を結ぶ上値抵抗ラインを上抜けてくれば、いよいよ125円台が再び視野に入ってくるようになるものと思われます。

なお、足下のドルの強みは対ユーロでの動きにおいて、より鮮明に発揮されるようになってきています。本欄の10月28日更新分において、今年の3月半ばあたりを起点とするユーロ/ドルのリバウンド局面は「そろそろ終止符を打つ可能性が高い」という話題を取り上げました。それは、ユーロ/ドルが中期的に形成していた上昇チャネルの下辺を下抜ける可能性が高まっていたことによるわけですが、当時はまだ明確に下抜けたとは言い切れない状況にありました。

しかし、下図においても確認できる通り、後にユーロ/ドルは中期上昇チャネルの下辺を明確に下抜けることとなります。その後は、想定していた通りに1.1000ドル、1.0800ドルなどといった節目の水準を次々と下抜け、目下は1.0600ドル台まで値を切り下げる動きとなってきています。こうした値動きは「10月15日高値とその後の高値を結ぶラインとそれに平行して10月28日安値を通るラインとで形成される下降チャネル(図中に青線で示した部分)」の範囲内での推移と見て取ることもできるものと思われます。

20151118_tajima_graph.jpg

よって、今後も基本的には下降チャネル内での推移が続くものと見られます。仮に、このチャネル上辺を一旦上抜ける動きが見られたとしても、上方から下降してくる21日線のプレッシャーは相当に強いものと見ておく必要があるでしょう。欧州中央銀行(ECB)の次回理事会は12月3日に予定されており、そこでは何らかの追加緩和策が打ち出される可能性が高いと見られます。しかるに、市場では当面の下値メドを1.0500ドルあたりと見る向きも多くなってきている模様です。

今回のように、中期的に形成された上昇チャネルから相場が下放れた場合、一般に「同チャネルが形成されていたときの値幅(およそ0.082ドル)と同じ値幅を取った水準までブレイクポイント(1.1060ドルあたり)から押し下げる」と考えるのがテクニカル分析を行ううえでのセオリーです。よって、少し長い目で見れば、いずれは1.0200ドル台半ばあたりまで下押す可能性があると考えることもできるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役