先週28日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文は、12月のFOMCにおける利上げ実施の可能性を強く示唆することとなりました。また、前回の声明文で指摘していた「世界情勢が成長を抑制」との文言が外され、結果として利上げ判断のハードルが相当程度下がったとの印象を市場にもたらすことにもなりました。

29日に閉幕した中国の「5中全会」からは『一人っ子政策の廃止』以外に目立ったサプライズは飛び出しませんでしたが、公式の声明として掲げられた「中速度から高速度の成長を維持する」との方針を実現するための建設的な議論も戦わされたと伝わっており、どちらかと言えば前向きな印象を受ける会合となったように思われます。

もちろん、中国が抱える構造的な問題への懸念は今後も折に触れて取り沙汰されることでしょうし、目下はこれまでに打ち出した様々な株価対策や金融緩和の効果が目立って現れているというわけでもなく、今後も大型の景気刺激策が発動されるとの期待は引き継がれることとなるでしょう。とはいえ、当面は中国問題に対する市場の関心が少々薄らぐものと見られ、そのことが年内の米利上げ期待を高める一因となり得ることは見逃せない事実であると言えます。

当然、今回のFOMC声明にも「経済指標次第」との文言は明記されており、その意味では今週末発表される10月の米雇用統計の結果は大いに気になるところです。ただ、8月、9月の結果がやや弱めであっただけに、その分市場の期待値も低下しており、過度な期待が裏切られた結果、強い失望の反応が市場で顕著に見られる可能性というのも、もはや足下ではだいぶ低下しているものと思われます。

先週の日銀会合では政策据え置きとの判断が下されました。大方のメディアは「追加緩和の効果に疑問符」などとしていますが、なおも市場では追加緩和期待が円買いを思いとどまらせる方向に作用しやすく、一方でドルは総じて買われやすいといった状態が続く可能性が高いものと見られます。

本欄の10月21日更新分で注目したように、なおもドル/円は一目均衡表の週足「雲」上限に下値を支えられる格好での推移を続けており、今後も同サポートが機能し続けるかどうかが一つの焦点です。再来週あたりから週足「雲」上限は120円台後半から更に上方へとせり上がってくるため、一旦は「雲」のなかに潜り込む格好となる可能性もないではないものと思われます。それでも89日移動平均線線(89日線)や長期サポートライン(2012年9月安値と2014年7月安値を結ぶライン)が下値を支える可能性は残り、極端に下値を切り下げるような展開にはなりにくいものと思われます。

一方、前回更新分の本欄で述べたように、すでにユーロ/ドルは3月半ばから形成されていた中期上昇チャネルの下辺を明確に下抜けたものと考えられ、今後は同チャネルの下辺(=以前のサポートライン)が上値抵抗として機能しやすくなるものと考えられます。

10月22日に行われたECB理事会後の急落に続いて、28日のFOMC声明発表後の急落もあり、さすがに最近のユーロ/ドルの下げ方は少々オーバースピード気味との感があることも否めません。よって、当面は1.1000ドルの節目を挟んだもみ合いを続ける可能性もあると考えられ、ときに一定の戻りを試すような動きが見られた場合には、基本的に戻り売りの姿勢で臨むことが有効なのではないかと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役