いよいよ本日(28日)のNY時間に米連邦公開市場委員会(FOMC)が終了し、論議のあらましを綴った声明文が発表されます。その瞬間を今や遅しと待ち続ける市場は全体に様子見ムードを強めており、なおもドル/円は前回更新分で触れた"週足チャート上に認められる複数の節目"(一目均衡表の週足「雲」上限、62週移動平均線、2012年9月安値と2014年7月安値を結ぶ長期サポートライン)に下支えされた状態を続けています。
今回のFOMC声明の内容や29日に閉幕する中国の「5中全会」、30日に行われる日銀金融政策決定会合などの結果次第では、前記の節目を次々と下抜ける可能性もあり、ここは少々神経質な対応が求められるところと言えます。少なくとも、ドル/円の週足ロウソクが週足「雲」のなかに潜り込み、週足の「遅行線」が週足ロウソクの位置するところを下抜けるような展開になると、単純にチャートフェイスから受ける印象がこれまでとは大きく違ってきます。
チャートフェイスから受ける印象という意味では、すでにユーロ/ドルのチャート上に変化の兆しが表れ始めているという点も見逃せません。下図でもあらためて確認できるように、ユーロ/ドルは今年の3月13日に一時1.0462ドルまで押し下げて底入れし、以降は中期的な上昇チャネルを形成するリバウンド局面にありました。
ところが先週22日以降、ユーロ/ドルは大きく値を下げる展開となり、21日移動平均線(21日線)、一目均衡表の日足「雲」下限、89日移動平均線(89日線)などといった重要な節目を次々と下抜けた挙句、ついには中期的に形成してきた上昇チャネルの下辺水準をも下抜けることとなったのです。また、先週の週足ロウソクは週足「雲」下限を一気に下抜け、長らく下支え役として機能していた31週移動平均線(31週線)も難なく破られるという弱気の展開になりました。
先週23日に一時1.1000ドル割れの水準まで売り叩かれたユーロ/ドルは、ほどなく1.1000ドル台に値を戻して下げ渋る動きとなっており、今のところは「まだ中期上昇チャネルの下辺を明確に下抜けたとは言い切れない」との印象が残ります。果たして、ユーロ/ドルは近いうちに中期上昇チャネルの下辺を明確に下抜け、3月半ば以来のリバウンド局面に終止符を打つこととなるのでしょうか。
周知のとおり、先週22日に行われた欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見でドラギ総裁は、次回12月の理事会で追加の金融緩和策実施を決定する可能性を強く示唆し、さらに中銀預金金利を追加的に引き下げる可能性にも言及しました。総裁の口から相当に踏み込んだ内容の発言が飛び出したのは、それだけ欧州景気の下振れリスクが高いという深刻な認識の表れに違いありません。
よって、このあたりで一旦はユーロ/ドルのリバウンド局面が終了してもおかしくはないものと思われます。FOMCをはじめとする今週内のイベント結果次第では一時的にユーロが買い戻される場面もあり得るものと思われますが、仮にそうなれば戻り売りの好機をうかがいたいところです。今後、あらためて1.1000ドルの節目を明確に割り込んだ場合には、次に節目の1.0800ドル、1.0600ドルなどといった水準を順に試す展開となって行く可能性も十分にあるものと思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役