ようやくギリシャ情勢は一旦落ち着いたものの、なおもユーロ/ドルは下げ基調の只中にあると言えます。本欄の7月1日更新分において、筆者は「(3月半ば以降に形成された)上昇チャネル下辺を明確に下抜けると、中期的なトレンドが転換した=リバウンドは終了したとの感が強まる」と述べました。そして実際、ユーロ/ドルは7月初旬にチャネル下辺を下抜け、さらに7月中旬には89日移動平均線(89日線)、一目均衡表の日足「雲」下限などを次々に下抜けて中期トレンドが転換したとの感を一層強めました。

下図でも確認できるように、目下のユーロ/ドルは6月18日高値と7月10日高値を結ぶレジスタンスラインと、それに平行して6月29日安値を通るラインとで形成される下降チャネル内(図中、桃色直線)での推移を続けているものと見られます。昨日(21日)あたりから一旦反発する動きとなっていますが、その上方には日足「雲」や89日線、21日移動平均線(21日線)、下降チャネル上辺など、数々の上値抵抗が待ち構えており、相当に上値は重いといったムードです。

何より注目しておきたいのは、目下のユーロ/ドルが5月15日高値と6月18日高値のダブルトップを形成しているのではないかと見られる点です。そのネックラインは5月27日安値が位置する1.0819ドルの水準と考えられ、同水準を明確に下抜ければ「ダブルトップは完成した」と見做されることになります。一昨日(20日)は一時1.0809ドルまで下押す場面があり、その時点では前記のネックライン水準を下抜けました。

ただ、昨日は少々長めの陽線を描いて反発しており、今はまだダブルトップが完成したとは言えない状況にあります。今後、仮にダブルトップが完成した場合、そこからの下値余地は大いに拡大する可能性があります。5月と6月の高値水準からネックラインまでの値幅は大よそ0.06ドルであり、そのぶんだけネックラインより下方に目標水準を置くとすると、いずれは3月13日安値=1.0462ドルをも下抜けるということになるのです。

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とりあえず一段落したギリシャ問題を巡ってユーロ圏首脳らが交わしたやり取りや駆け引きの様子を振り返ると、やはり「政治同盟なき通貨同盟は機能し続けることが難しいのではないか」との疑念をあらためて抱かされます。結局、ユーロは依然としてバラバラのままなのです。将来的に政治的な同盟関係が固く結ばれ、真に「ユーロ国」としての成り立ちを得るまでの道のりは一層遠くなったとしか思えません。

一方、アメリカ合衆国連邦というのは、個々に主権を有する各州が強固に結合した連合国家としての立派な成り立ちを得ています。そのように考えると、そもそも1ユーロを1ドル以上のレートで交換するというのは、どこか間違っているといった気がしてこないでしょうか。実際、かねて市場では「いずれユーロはドルとパリティ(等価)か、それ以下の水準になる」との見方が少なくありません。

もちろん、そこに至る過程は決して直線的なものではないはずです。投機マネーの存在なども考慮すれば、ある程度ユーロ安が進んだ後に一定の揺り戻しがあるのも当然と言えるでしょう。それでも、やはり大きな流れはあくまでユーロ安・ドル高なのでしょうし、投資家の立場からすると、ユーロ/ドルがある程度の戻りを見せる場面にあっては、それを「戻り売りの好機」と捉えることが適当であろうと思われるのです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役