前回(7月8日)更新分の本欄では、ドル/円の下値支持について「121.85-122.00円の下値支持ゾーンを明確に下抜け、さらに89日移動平均線(89日線)まで下抜けるといった展開になれば、当面は120円前後にまで目線を下げる必要が生じる」、「今後も円安・ドル高の大きな流れが継続するためには、やはり119-120円という水準を明確に下抜けてはならない」などと述べました。
実際、先週8日のドル/円は中国本土市場での株価急落などを背景に大きく値を下げ、120円前後の下値支持ゾーンに続いて一目均衡表の日足「雲」、89日線などの重要な節目を次々に下抜ける場面があったものの、最終的には120.41円を底に切り返し、その後は大きく値を戻す展開となっています。
下図でも確認できるように、8日安値の120.41円は「6月5日高値と6月24日安値を結ぶレジスタンスラインと、同ラインに平行して6月10日安値を通るサポートラインとで形成された下降チャネル」の下辺が位置する水準とほぼ同じレベルであったことがわかります。つまり、中国株安などで大きく下げる場面もありましたが、基本的に「それはチャネル内での推移であった」ということになります。
もちろん、極めて重要なサポートゾーンと考えられる119-120円の水準が一時的にもすぐ下方に迫ったことで、自律的に下げ止まって反発したという側面もそこにはあることでしょう。加えて、26日前の価格(終値)を示す日足の「遅行線」が120.70円を底に下げ止まってV字型で切り返したということも重要です。
反発後のドル/円は、まず9日に89日線を上抜け、10日には日足「雲」上限まで値を戻すこととなりました。さらに、今週13日には21日移動平均線(21日線)を上抜け、同時に前述した下降チャネルの上辺までをも上抜ける展開となっています。言わば、6月初旬から形成されていた下降チャネルをついに上放れたということであり、これは強気シグナルの一つと捉えていいでしょう。
また、前記の下降チャネル形成中に119-120円のサポートゾーンを下抜けなかったことによって、少なくとも5月下旬あたりを起点とする中期的な円安・ドル高基調はまだ終わっていないと判断することができるものと思われます。
足下では、日足「雲」上限がドル/円の上値を押さえるような格好になっており、目先はこの日足「雲」上限を明確に上抜けるかどうかが焦点ということになります。同水準を明確に上抜けた場合、ドル/円相場は文字通り「晴れ」の局面を迎えることとなり、後にこの日足「雲」上限が下値のサポート役として機能し、比較的底堅く推移するようになるものと見込まれます。
とはいえ、当面は124円前後の水準に上値の抵抗が感じられることも事実であり、ここからは再びもみあい色の濃い展開がしばらく続く可能性もあるのではないかと思われます。さしあたっては、本日(15日)と明日(16日)のイエレンFRB議長による議会証言の内容が大いに注目されるところであり、それを市場がどのように受け止めるのかをしっかり見定めたいところです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役