今週22日、23日の2日で日経平均株価は635円余り上昇し、本日(24日)も執筆時点においては前日終値比プラスでの推移となっています。まさに目を見張るほどの値上がりであり、そこには過去に例を見ないほどスケールが大きい「グローバル金融相場」のなせる業といった側面があることも否定はできません。その意味で、今後も世界の金融市場においては、ときに我が目を疑うほどダイナミックな展開を目の当たりすることが少なくないものと心得ておく必要があるでしょう。

たとえば、いずれドル/円が130円から140円あたりまで一段と上昇する可能性というのも決して否定はできないものと思われます。周知のとおり、ドル/円は6月5日に125.85円まで上昇した後反落し、10日の黒田日銀総裁発言がきっかけとなって一時は122円台半ばあたりまで大きく調整する場面がありました。結果、最近では「125円の壁」などという言葉が用いられ、再び125円台を試すような動きになったとしても、結局は介入への警戒から伸び悩むとの見方がなされることも少なくありません。

ただ、米有力ヘッジファンドなど海外投資家のなかには「130円から140円あたりまで一段と円安・ドル高が進む」と見る向きも少なくないと言われ、そこに「125円の壁」などというものは存在していないようです。彼らの論理は「日米金融政策の方向性は180度異なっているのだから、ミスター・クロダが突如、現行政策の方向転換でもしない限り趨勢的なトレンドは変わらない」と実に明快です。

一説によりますと、6月10日の黒田日銀総裁発言がもたらした影響は「4兆円規模のドル売り・円買い介入に匹敵する」とされます。それは強烈なインパクトです。実は、同日ちょうど同じ時間帯に市場へ舞い込んできた注目のニュースがありました。それは「東京海上ホールディングス(HD)が米保険会社HCCインシュアランス・ホールディングスを約75億3千万ドル(9413億円)で買収する」というものです。円ベースの買収額は日本の金融機関による海外M&A(合併・買収)で過去最大級のものであり、黒田日銀総裁発言がなければ、このニュースでドル/円は大きく上昇していたかもしれません。

ことは、それで終わりではありません。翌11日の日本経済新聞朝刊には『保険大手、海外買収を加速』という記事が掲載され、そこには「国内より高い成長を見込める海外市場の開拓に向け、ほかの大手損害保険や生命保険各社も海外買収を加速。案件も大型化してきた」、「生損保とも国内は人口減で保険料収入の大幅な伸びは見込みにくく、各社がこぞって成長の源泉を海外に求める構図」と記されていました。

どうやら、1ドル=120円台まで円安が進んでも、日本の大手金融機関による海外事業拡大に賭ける思いが萎えることはなさそうであり、むしろ今後一段と加速して行くものと考えられます。東京海上HDの例で言うと、実に1兆円近くにも上る巨額の買収資金は豊富な手元資金で賄われる見込みであり、結果として同規模の円売り・ドル買い需要が今後発生することとなる模様です。同様の事例がこれからも相次ぐこととなれば、それは潜在的で大きな円安・ドル高要因として意識されなければなりません。

一方、米国経済が本格的な拡大局面を迎えるのもこれからです。筆者は今月上梓した新刊『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)のなかで「実のところ、すべてはこれから始まるのです」と述べています。その実、米利上げも次期米大統領選に向けた選挙戦もこれから始まります。ご興味ございましたら、ご一読いただけますと幸いです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役