ドル/円が現在のもみ合いから抜け出すのはいつのことか?

今年(15年)1月21日更新分の本欄で、筆者は以下のような注目点を挙げました。
*昨年(14年)12月高値からのドル/円の値動き(121円台から115円台まで下落)は昨年1月初旬から2月初旬にかけての調整場面によく似ている。

*昨年2月初旬以降(14年2月4日に一時100.75円まで下押した後)もドル/円は、実に7か月間もの長きに渡って値幅の乏しいもみ合いの展開を続けた。

*現在(今年1月21日時点)は、1年前(昨年1月下旬)と似通った状況下で等しく調整局面を迎えていると言え、しかるに当面のドル/円相場はしばらくもみあいの展開を続ける可能性があるものと思われる。

そして実際に、昨年12月8日に121.85円の高値を付けたドル/円は、昨年12月16日と今年1月16日に115円台まで値を下げた後に反発し、3月10日には一旦122円台まで上伸するものの、反落後は118円台前半から120円台後半の間の限られた値幅のなかでもみ合いを続ける展開となっています。

昨年1月初旬以降、都合8カ月余りに及んだ調整局面と今回の調整局面に共通しているのは、下図にも見られるように、ドル/円の日足ロウソクが21日移動平均線(21日線)を挟んでの上げ下げを長らく繰り返していることや、一目均衡表の日足「雲」ならびに「遅行線」と絡み合う状態を続けていることなどにあります。これは、やはり昨年10月初旬から同月半ばにかけての調整局面とは明らかに異なる展開です。

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また、昨年1月から米連邦準備理事会(FRB)が債券購入額の規模縮小(テーパリング)をスタートさせたという事実も見逃すことはできません。その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれるごとに債券購入規模を100億ドルずつ縮小する決定が下されることとなりました。最終的には昨年10月のFOMCにおいて米国の量的緩和策(QE)が終了する運びとなるわけですが、テーパリングのスタートからしばらくはその行方や影響が読み切れず、ドルは買うに買えない、売るに売れない状態となりました。

そして今回は、言うまでもなくリーマン・ショック後で初となる利上げのタイミングを市場がうかがっている状況です。6月利上げの可能性はほぼ消滅しかかっているものの、9月になるのか12月になるのかは今後の景気データ次第とされ、やはりドルは買うに買えない、売るに売れない状態となっています。

ここで注目しておきたいのは、昨年の8月下旬あたりからドル/円は徐々に調整局面を脱出する動きを見せ始め、そこから10月初旬にかけて一気に値を上げる展開となったことです。この時点では、もはや「10月でQE終了」が確定的となり、むしろ市場は次の段階=利上げ実施への土台づくりがスタートしてドルは強含みになると踏んだのでしょう。

つまり、今回も利上げ実施の決定が実際に下される前の段階でドルは徐々に強含みの展開となり、ドル/円は昨年12月以来の調整局面から脱出することになる可能性が高いと見られます。その実、NY連銀のダドリー総裁は昨日(12日)、「利上げが行われる際は大きな驚きとはならないはずだ」と述べました。ただし、現在のもみ合いパターンから抜け出すのは、まだもう少し先になるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役