目下の市場には、どちらかと言えばリスク・オン(選好)のムードが拡がっており、中国株の急騰を横目にしながら、日経平均株価も連日で大幅高を演じるといった展開になっています。しかし、実際には今・来週のなかで非常に重要な複数のイベントを控えているだけに、先行き不透明な事案が数多いことも事実であって、やはり一定の警戒は怠れないものと心得ておく必要があるでしょう。
周知のとおり、まず今週24日にはユーロ圏財務相会合の日程が控えています。いまやギリシャの債務問題は焦眉の急を告げる事態となっており、果たして欧州連合(EU)とギリシャ政府との間で何らかの妥協点、適当な落とし処を見出すことができるのか、それとも再び5月11日の会合まで合意が先延ばしされるのか、まったく見通せない状況です。5月12日には、国際通貨基金(IMF)に対してギリシャが約8億ユーロの債務返済を行わなければなりません。IMFのラガルド専務理事は遅延を認めない姿勢を強調しています。
また、来週28-29日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が行われます。すでに4月のFOMCにおいて利上げが実施される可能性は「ぼほない(unlikely)」ものとされており、今回はFRB議長の会見も行われないわけですが、それでも完全に"無風"で通過するということも考えにくいのではないでしょうか。少なくとも、市場は6月以降の利上げの可能性について、またあらためて様々な思惑を巡らせ、その思惑に基づいて相場に多少の波乱をもたらす可能性があるものと見られます。
そして、来週30日には日銀の金融政策決定会合が行われます。どうやら、一部の英調査会社が今回の会合における「日銀追加緩和説」を吹聴しているようであり、イベント・ドリブン型と呼ばれる一部のヘッジファンドは積極的に日本株を買い上げている模様であると言われます。結果的に、追加緩和の実施決定が下されなかった場合、彼らが投じた資金を一旦ゴソッと引き揚げる可能性もないとは言えません。
昨日(21日)は、浜田宏一内閣官房参与が東京都内の講演で「(エネルギーと食品を除いた指数)のコアコアでも(物価目標を)達成できないなら追加緩和が必要」などと述べたと伝わり、ますます「4月30日 日銀追加緩和説」が現実味を帯びるようなムードとなる場面がありました。浜田氏の立場でこのような発言をすることの是非も大いに問われるところですが、現実的には「あれから(13年4月4日から)2年余り」という歳月が流れたにも拘らず、いまだ目標とは程遠いレベルにあるということの方が問題でしょう。
本日(22日)、日経平均株価は再び2万円台に乗せる動きとなっています。そこにある強気が日銀の追加緩和に対する期待とまったく無縁であるとは思えません。しかし、その一方でドル/円がなおも21日移動平均線に上値を押さえられ、方向感に乏しい展開を続けていることも事実です。互いを比較すれば、足下ではドル/円の動きの方がより現実的と言えるものと思われます。
本欄の4月8日更新分において、ドル/円と31週移動平均線(31週線)との位置関係を「見える化」するために週足のボリンジャ―バンド(31週)の話題を取り上げました。現在の31週線は117.07円のレベルにまで持ち上がってきており、バンド幅は着実に収束し始めています。それでも、大きな変化が訪れるまでには、まだ一定の時間を要するものと思われます。よって、今しばらくはもみ合いの展開を続ける可能性が高く、ときにドル/円が再び調整含みとなることもあるものと心得ておくことが必要でしょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役