週明け8日の早朝、ドル/円は前週末に発表された米雇用統計(11月)の強気サプライズの流れを汲んで一時121.85円まで上値を伸ばす場面がありました。しかし、反落後は徐々に下値を切り下げる展開となり、昨日(9日)のロンドン・フィキシングにかけては一時的に118円割れの水準まで売り込まれる場面もありました。
10月末の日銀による追加緩和実施の決定後、1カ月以上に渡ってまさにチキンレースの様相を呈していたドル/円相場ですが、ここにきてようやく上げ一服となり、長らく利益確定のタイミングを見計らっていた投資家らが一斉に動いたものと見られます。折しも、中国や欧州などで株価が大幅に下落し、市場全体にリスク回避ムードが拡がったことで、格好の利益確定の場が提供されたとの感もあります。
下図(左)に見るように、ドル/円は11月3日以降に形成された上昇チャネル内での推移を続けてきました。また、この間に一目均衡表(日足)の転換線が下値サポート役として機能していたことも見て取ることができます。昨日は、この転換線とチャネル下限を一時的に下抜ける場面もありましたが、終値ベースでは再びチャネル下限と転換線を上回る水準まで戻す展開となりました。
よって、目先はこれらの節目を終値ベースで下抜けるかどうかに注目しておく必要があるものと思われます。仮に明確に下抜けた場合、目先的にはドルの上昇もとりあえず一服といったムードが拡がりやすくなり、まずは昨日の安値=117.94円や日足の基準線などをあらためて試す展開になるものと見ておく必要がありそうです。
実のところ、足下ではユーロに対するドルの上昇もとりあえず一服となる可能性があるものと見られます。今週8日、ユーロ/ドルは米雇用情勢の改善などを受けて一時1.2247ドルまで下値を切り下げる場面がありました。下図(右)でも確認できるように、この8日安値水準というのは10年6月安値と12年7月安値を結ぶ長期サポートラインが位置するところとピタリ一致しています。いずれは下抜ける可能性も十分あるものと思われますが、当面はこのサポートラインが下値支持役として一定の機能を果たすものと見ておく必要もあるものと思われます。
足下では、ギリシャの政情不安などによって、あらためてユーロに売り圧力がかかる可能性もあることは事実です。しかしながら、現状においては欧州株の下落がリスク回避ムードの高まりを通じて米金利を押し下げ、むしろ目先的にはドルが買われにくいムードを醸し出しています。また、欧州株安が日米の株価にも下押し圧力としてのしかかってきており、短期的にはドル/円の上値が押さえられやすい状況にもなっています。
もちろん、本日(10日)のように日経平均株価やTOPIXなどが大きく押し下げている場面では、下値で日銀によるETFの買い入れが行われる可能性も高く、株価の下押しは一定の範囲に留まることも考えられます。それでも、株価がある程度調整すればドル/円にもそれなりの下押し圧力はかかるわけで、そこは少し長い目で押し目買いの好機ということになるものと思われます。いまだ、市場全体がボラティリティーの高い状況にあることも否定はできないため、やはり押し目買いといっても投資資金を小分けにしながら段階的に仕掛けて行くことが肝心でしょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役