前回更新分(10月1日)の本欄で、ドル/円は「長い目で強い基調を続ける」としながらも、短中期的には「110円の大きな節目に到達したことで、ある種の達成感が生じる可能性もある」と述べました。そして、今のところ10月1日高値=110.09円が当面の天井となり、以降は調整色の濃い展開を続けています。
ドル/円との関連が深い他の市場に目を向けてみると、まずNYダウ平均が9月19日高値=17350ドルを当面の天井として、以降は明らかに調整色の濃い展開となっています。また、日経平均株価は9月25日高値=16374円を当面の天井として、やはり以降は大きく値を切り下げる展開となっています。よって、どうやら短中期的な観点からは金融市場全体の潮目に一定の変化が生じてきているように感じられます。
ここであらためてドル/円の価格推移に目を向けると、前回も述べたように110円前後の水準には02年2月高値と07年6月高値を直線で結ぶ「長期レジスタンスライン」の存在が確認されており、これは当面の上値抵抗として意識されやすいものと考えられます。また、下の図で確認できるように、今年7月10日安値から直近(10月1日)高値までの上げ幅が、昨年10月8日安値から今年1月2日高値までの上げ幅とほぼ等しくなっていることもわかります。これは必ずしも「偶然の一致」というものではないでしょう。
なお、今年1月2日に105.44円の高値をつけて反落したドル/円は、約1ヶ月後の2月4日に100.75円まで大きく下押すこととなりました。もちろん、この約1カ月の間にドル円を取り巻く環境が劇的に変化したわけではありません。ここは、やはり105円台という大きな節目に到達したことで目先の達成感が生じ、後に適当な価格調整を交えることになったと考えるのが自然でしょう。
そう考えると、足下で調整色を濃くしているドル/円が今年1月2日高値から2月4日安値までの下げ幅と同程度の調整を今後交える可能性は十分にあると考える必要があるでしょう。ちなみに、その値幅は4.69円でしたから、それを110.09円から差し引くと105.40円という水準が弾き出されます。振り返れば、今年2月4日の安値は一目均衡表(日足)の「雲」下限付近で下支えされる格好となったわけですが、今回も同じような展開になるのかどうか、今後の行方を興味深く見守りたいところです。
もっとも、今後のドル/円が本格的な調整を交えることとなるためには、まだ幾つかの条件をクリアする必要があるものと思われます。まずは、昨日(7日)終値で下抜けることとなった21日移動平均線(21日線)を明確に下抜けるかどうかを確認する必要があるでしょう。また、日足の「遅行線」が日々線を一旦下抜けるかどうかということも重要なポイントになってきます。
さらに、10月1日高値と10月3日高値を小規模のダブルトップと見做すなら、そのネックラインとなる108円ちょうどの水準を明確に下抜けてくるかどうかも確認したいところです。なお、このネックラインを明確に下抜けた場合、そこから2円程度(110.09円とネックラインとの間の値幅)下方の水準=106円あたりが一つの下値メドとして意識されやすくなる可能性もあるものと思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役