多くの方が御存知のように、東証は取引時間の延長をする予定です。現物株式に於いては、前場の終了時間を30分延長して、昼休みをその分短縮する方向です。この件について、最近よく記者の方から感想・意見を聞かれます。そこで今日はその回答を簡単に紹介したいと思います。因みにここに書くことは、私の理解では東証の考え方と同一であり、私のオリジナルアイデアではございません。

先ず昼休みについては、立ち会いが止まっている間も、ToSTNeTという取引所内立会外取引で大きな流動性が発生しています。これは立ち会いが止まっているから出来る部分もあるので、昼休みは残した方がいいでしょう。しかし香港・シンガポールなどの取引所とオーバーラップして開いている時間を増やした方がいいことは、流動性向上にとって自明ですから、昼休みは短くした方がいいことになります。

問題はむしろ午後3時以降どうするかで、このことについても取引所は継続検討の余地を残しました。日本の企業の大多数は3時以降に重要事実や業績の発表をします。その結果東証が閉まった後に、シンガポール、ロンドン、ニューヨークなどで多くの取引が行われ、かつその企業の新しい株価の形成が行われます。即ち日本企業の日本株ビジネスが国外に流出し、かついわゆる"取引所の価格発見機能"が東証に於いて発揮されなくなる訳です。この問題に対するひとつの方法は取引時間を夕方・夜と延長することですが、これには様々な事情からの反対もあります。

そこで今回、売買停止時間の短縮を進めると共に適時開示の促進をしました。即ち、場中に取締役会決議で重要な事柄が決まったり認識されたならば、すぐに開示して下さいと云うことです。その替わり売買停止時間を縮めましょうと。これは合理的な考え方です。重要事実の発生から開示までの時間が短くなりますから、インサイダー的な問題のリスクも下げられます。他国に流れていた流動性や価格発見機能の問題も解決されます。報道機関にとっても仕事が平坦化して好ましいでしょう。

もちろん問題が全くない訳ではありません。個人投資家を含めた様々なタイプの市場参加者の事情に配慮する必要があります。しかし基本的にこの方向性は、日本の資本市場の発展に資することであり、延いては市場参加者の全員に最終的に利益をもたらすことだと私は思っています。当社の親会社である、上場企業・マネックスグループ(株)も、この東証の方向性を導入していく方針です。
マーケットは堅牢に作られた、しかし微妙な存在です。ちょっとした運用の違いで、多くのエネルギーを取り戻すことが出来ることもあります。日本だって何もしていない訳ではないのです。マーケット頑張れ!