雨が降っています。空の感じが、もう梅雨のようです。しかし未だ五月、梅雨と云うには早過ぎるかなと思った瞬間、道端に紫陽花(あじさい)が咲いているのを見つけました。「あぁ、やっぱり梅雨だ」-思わずそう呟いてしまいました。あの紫陽花の青い色、柔らかくて、私は好きです。朝顔の青色も、私は好きです。

ところで不思議なことにこの紫陽花と朝顔は、古今集の中で一回も詠まれていません。紫陽花は古の時代より、朝顔も奈良時代にはあった筈にも拘わらずです。紫陽花は土のPhによって青色と赤紫色の間を移ろいます。朝顔も花によって青色だったり赤紫色だったりします。そう云った不安定さを、平安の貴人は嫌ったのでしょうか?或いは今は(少なくとも私には)素敵に見えるあの青色は、当時は品のない色だったのでしょうか?或いはまた紫陽花と朝顔の形が、どこかウケない理由があったのでしょうか。今となっては解き明かすことの出来ない謎です。美の認識・基準は、時代と共に変化するものです。
平安時代の紫陽花に降った雨と、現代の紫陽花に降る雨。古の時代に思いを馳せながら、降りしきる雨を眺めたいと思います。