朝日新聞などの報道によると、経済産業省の北畑事務次官は、講演の中でデイトレーダーについて、「経営にまったく関心がない。本当は競輪場か競馬場に行っていた人が、パソコンを使って証券市場に来た。最も堕落した株主の典型だ。バカで浮気で無責任というやつですから、会社の重要な議決権を与える必要はない」と発言したそうです。私はこの発言に対して、抗議を述べたいと思います。

先ず「経営にまったく関心がない」と云いますが、北畑氏が資本市場にまったく関心がないのではないでしょうか?また、競輪場や競馬場に行く人のことを、暗に「堕落した」人と決めつけているようですが、競輪も競馬も公共賭博ですから、国が率先して国民を堕落させていると云うことでしょうか?そもそもそのように批判されることに気が付かないと云うのは、あまりにもお粗末ではないでしょうか。それに長期間持ち続けるだけが「いい株主」であると云うのは、株式市場に対する理解が欠けていると云わざるを得ません。株式が転々縷々する仕組み、即ち株式市場を創ったことにより、経営と所有の分離や、会社の資本に継続的・永遠の命を与えることが可能になり、それが現代経済を飛躍的に成長させたことは明らかであり、そのことを経済政策に携わる官庁のトップが理解していないと云うことに、唖然とします。

株式の発行体から見ると、一人の株主が10年間持ち続けるのも、3650人の株主が、1日ずつバトンタッチで持ち続けるのも、本質的には同じ筈であり、そしてこれが可能だからこそ、株式に流動性が生まれ、発行体企業の企業活動が支えられ易くなる訳です。更に合法的に自由に経済活動をしている国民を指して、全体の奉仕者と憲法で定義されている国家公務員が、「バカで浮気で無責任というやつ」とは何事でしょうか。

憲法は、公務員を選定・罷免するのは国民固有の権利であるとも決めており、これでは主権在民と云う民主主義の根本に対する挑戦、もしくは無理解とも受け止められかねません。私企業として、真面目に経済活動をし、多額の法人税を国庫に納めている当社としても、これでは殆ど営業妨害であり、それが企業活動をサポートすべき官庁のトップの口から出るとは、甚だ遺憾で、私は厳重に抗議します。

最後に「会社の重要な議決権を与える必要はない」と発言していますが、逆に私は一国民として、また納税している一企業の代表として、このような発言をする人に、我が国の経済の重要な事柄に対する決定権を与えていることに、大いなる不安を感じます。こう云う発言を看過してはいけないと思います。