村上ファンドが注目を集めています。賛否両論色々ありますが、私は村上氏は我が国の資本市場、株主資本主義の成長に大きく貢献してきたと考えています。企業の持つ冨・生む冨の行き先は3ヶ所しかありません。資本家即ち株主か、労働者即ち従業員か、社会の3つです。

我が国に於いては、企業の冨の分配先として株主が大幅に蔑(ないがし)ろにされてきました。その替わりに社会資本は充実し、労働者即ち国民の生活水準は大幅に向上してきた訳です。その反射として、株主価値はあまり上がりませんでした。そこに村上氏のようなアクティビストが登場し、企業の富の配分に対して大きな影響を与え、それが最近の配当性向の上昇や自社株買いなどに繋がり、結果として株価の上昇にも無視出来ないポジティブな影響を与えてきたと思います。何よりも、「我が国が採用している株主資本主義というシステムは何ぞや?」ということを啓蒙してくれた点に大きな貢献があると、私は思っています。

しかしこれは賛否両論のあるところで、下世話ないい方をすると彼はいい者か悪者か、善意の人か悪意の人か、国士か所謂ハゲタカファンドの手先か、等々は色々な見方があり、好き嫌いも分かれる所でしょう。それはそういうものです。その点について私は特に村上氏を擁護もする気はありません。しかし、「村上ファンドはこれだけ株式市場にもタイガース球団にも影響力があるのだから、その資金の出し手を公開すべきだ」との一部論調には賛成出来ません。資金の出し手の匿名性が担保されるという法的枠組みの中でお金が集まり、それを合法的に運用しているだけです。国が決めたルールを前提にファンドが作られ、そのルールを前提に行動している訳ですから、この件に関して誰かを批判するとしたら、それは村上氏ではなくて国だと思います。

そしてその国の立法機関の構成員を選出しているのは、他でもない私たち有権者です。ですから議論の矛先は村上氏ではなくて私たち自身であるべきだと思います。今のようなルールで本当にいいのか、私たち自身がしっかりと考える時期に来ているのではないでしょうか。そしてマスコミにはその音頭を正しく取ってもらいたいと願いますが、それは期待しすぎでしょうか。