AI株一服も、底堅い決算を背景に幅広い銘柄へ資金がシフト

先週(10月19日週)の米国株式市場は、AI関連株に売りが出る一方、それ以外の幅広い銘柄が買われる展開となりました。

ダウ工業株30種平均は週間0.41%上昇して3週続伸した一方、S&P500とナスダック100は2週続落。S&P500は0.47%、ナスダック100は0.8%下落しました。マーケットの評価を分けたのは、佳境を迎えた第3四半期の決算発表と、AI投資を支える資金の行方です。

AI向けデータセンター投資の資金調達に不安が残るなかでも、企業業績は底堅さを示しました。

スリーエム[MMM]、ノースロップ・グラマン[NOC]、ハスプロ[HAS]の好決算は、ゼネラルモーターズ[GM]やGE エアロスペース[GE]の下落を補い、投資家心理を支えました。決算を手掛かりに、ハイテク以外にも投資機会を探す動きが続いています。

上場後2回目の決算発表を行ったスペースX[SPCX]は、売上高が前年同期比161%増の約146億ドルに拡大するなど、市場予想を上回る決算と強気の見通しが好感され、株価は7.8%上昇しました。

テスラ[TSLA]は好決算と採算改善を評価

10月21日(水)に発表されたテスラ[TSLA]の決算も、前向きに評価できる内容だったと思います。
7~9月期売上高は280.46億ドルと前年並みでしたが、調整後EPSは0.48ドルと会社集計の市場予想0.45ドルを上回りました。フリーキャッシュフローは前年比62%減ながら、予想の45.06億ドルの赤字に対して15.31億ドルの黒字となりました。将来事業へ投資しながら現金を生み出せたことは前向きな材料です。

排出権売却益を除く自動車粗利益率は前四半期の16.3%から18.1%へ改善しました。また、テスラの北米の新車納車のうち75%以上にサブスクリプション契約のFSD(運転者の監視を必要とする高度な運転支援機能)が含まれていました。運転支援機能の普及は、継続収入の拡大につながる材料で非常にポジティブと言えます。

GAAP純利益は前年比43%減の7.87億ドル、営業利益率は前年の5.8%から2.6%へ低下したものの、自動車の採算には改善が見られました。

決算発表後にテスラの株価が下落しましたが、その背景には、スペースXとの合併を巡る期待もあったとみています。株主の提案を受け、両社に特別委員会を設けて合併の可能性を検討する方針は示されましたが、今回の決算説明会では追加の説明がありませんでした。進展を示す新たな情報が得られなかったことも、株価の重荷になった可能性があります。

メタ[META]の好業績と膨らむ投資負担

AI関連株への警戒を強めたのは、メタ・プラットフォームズ[META]の投資負担でした。

売上高は前年同期比26%増の646億ドルと市場予想を上回りましたが、通期設備投資見通しはリース元本返済を含め1350億~1450億ドルへ下限を引き上げました。フリーキャッシュフローも21.2億ドルの赤字となり、成長のための支出をいつ回収できるかが、改めて問われています。

指数下落の陰で広がる市場の裾野、「安全資産(債券)への逃避」の動きも

10月22日(木)にナスダック100が2.9%下落し、6月以来最大の下げとなった場面では、S&P500も1.21%下落しました。

しかし、注目したいのは相場の中身です。S&P500構成銘柄の約75%は上昇し、各銘柄を同じ比率で組み入れるイコールウエイト(均等加重)指数は0.77%上昇。時価総額加重の指数を1.98パーセントポイント上回り、2年以上ぶりの大きな差となりました。

生活必需品セクターは2月以来の最高値を更新し、公益、ヘルスケア、金融もそれぞれ1%超上昇しました。指数が下がっても、相場の裾野が広がっているのは注目に値すると思います。

金利にも変化がありました。米10年国債利回りは10月の高値5.37%から一時4.95%へ低下し、週末は4.99%となりました。ハイテク株の調整や中東情勢への不安を背景に、資金が米国債へ向かった面があります。「安全資産への逃避」です。インフレ懸念から株と債券が同時に売られる局面もありましたが、今回は債券が株安時のクッション役を果たす動きが見られました。

大型IT決算とFOMCが次の焦点、AI投資の真価と広がる分散投資

今週(10月26日週)はマイクロソフト[MSFT]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、アルファベット[GOOGL]の決算が焦点です。

データセンター建設に必要な巨額の借入れや株式発行に市場が動揺し、AI投資を行う企業と、その恩恵を受ける企業がともに売られていますが、その懸念を払拭してくれるか注目です。クラウド事業の売上高が4~6月期の力強さを保てば、投資家心理が落ち着く可能性があります。

同時に、FOMC(米連邦公開市場委員会)にも注目です。中間選挙を前に金利据え置きが見込まれるなか、焦点はウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長が物価と景気をどう評価し、今後の政策運営についてどのような姿勢を示すかです。原油高が続くだけに、インフレへの警戒をどこまで強めるかを見極めたいと思います。

今週(10月26日週)は企業の成長力と、その価値を評価する際の金利環境を、併せて確かめる一週間になりそうです。

マーケットは、AIの成長を支える巨額の費用を誰がどう賄い、いつ利益として回収するのかを、より厳しく問い始めています。需要が強くても、投資を続ける財務余力や回収までの時間は企業ごとに異なります。売上高の成長率に加え、利益と現金収支がどうなっているかを確認することが欠かせません。

その一方で、生活必需品や公益、ヘルスケア、金融などにも投資家の関心が広がり、債券には分散効果を示す動きがありました。ハイテク以外の企業利益にも目が向くことは、分散を意識しながら長期投資を続ける個人投資家の皆さんにとっても、心強い材料だと思います。