確定申告の有無にかかわらず、金融所得が保険料・窓口負担割合に反映

高齢者の金融所得が保険料や窓口負担割合などに反映されるようになります。「健康保険法等の一部を改正する法律」が2026年6月5日公布され、75歳以上の後期高齢者医療制度に、株式や投資信託の売却益や配当などの金融所得が総合的に反映されることになります(法律の施行は2029年1月。2028年分の金融所得が2029年8月から医療費負担割合などに反映)。

後期高齢者医療において、上場株式の配当等の金融所得を保険料の算定や窓口負担割合等の判定に公平に反映するため、金融所得の支払に係る報告書等(法定調書)を金融機関等がオンラインにより後期高齢者医療広域連合へ提出する義務等を設ける。
※「後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映のスケジュールについて」(厚生労働省保険局)

現在、金融所得のうち上場株式の配当などは、確定申告の有無により保険料・窓口負担に反映されるかどうかが変わります。具体的には、源泉徴収ありの特定口座で、公募株式投信や上場株式、国内外債券などを保有している場合、確定申告をするとその売却益や普通分配金、配当、利子などが後期高齢者医療制度の保険料や窓口負担割合、高額療養費の計算基準に反映されます。

一方、同じように金融資産を保有していても、確定申告をしないと上場株式等の売却益や配当、利子などは反映されず、保険料や窓口負担などが抑えられていました。

【図表1】これまでの後期高齢者医療制度の保険料への反映
 出所:「後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映のスケジュールについて」(厚生労働省保険局)

所得の種類

窓口負担・保険料への反映

年金・給与所得・不動産所得など

〇

上場株式の配当等の

金融所得

〇

(確定申告する場合は市町村が所得把握が可能)

×

(源泉徴収のみで確定申告しない場合は市町村が所得把握が不可能)

出所:「後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映のスケジュールについて」(厚生労働省保険局)

このように、確定申告の有無によって保険料・窓口負担等が変わるのは不公平との指摘を受けて、それを是正しようというのが改正の趣旨です。

今回の改正により、原則として2029年8月からは確定申告の有無にかかわらず、こうした金融所得が保険料の算定や窓口負担割合などの判定に反映されるようになります。

NISAと預金は対象外

対象となる金融所得は公募株式投信や上場株式、国内外債券などの売却益や普通分配金・配当・利子などです。

一方、NISA(少額投資非課税制度)で保有している上場株式の配当や投資信託の普通分配金、売却したときの利益などについては保険料の算定や窓口負担などに反映されることはありません。また、預金の利子なども対象外です。

資産形成と資産の取り崩しの2つのタイミングで、NISA優先がますます大事に

こうしたことを踏まえると、これまで以上に、資産形成においても、資産の取り崩しにおいても、どの口座-課税口座、課税繰延口座(DC)、NISA-を優先的に利用するか、どの順番で引き出していくかを検討することが非常に大事になってきます。

資産形成期:NISAの非課税保有限度額を優先的に埋める

資産形成期にある人は、投資をするなら、1人当たり1800万円のNISAの非課税保有限度額(総枠)を優先的に埋めていくことが大切です。新規資金でNISAの枠を埋められない場合には、特定口座などの課税口座で保有する上場株式や投信などを、早めにNISA口座に移していくという選択肢もあるでしょう。

リタイア後:取り崩しの優先順位は、課税口座・特定口座>NISA口座

一方、リタイア後に金融資産を取り崩していく場合、課税口座とNISA口座で保有する資産を取り崩す順番も大切になってきます。「健康保険法等の一部を改正する法律」施行後は、先に、課税・特定口座で保有する上場株式や投資信託などを解約することを検討しましょう。そのあと、NISA口座で保有する金融資産を解約するということになります。

同程度の金額の金融資産を保有していても、75歳以上ではNISA口座から上場株式や投資信託を解約して利益が出た場合と、課税・特定口座などで保有する上場株式や投信を売って利益が出た場合とでは、医療費の保険料・窓口負担などに差が出るからです。

ただ、実際にはお金を使いたい時期はライフプランなどによっても異なります。また、実際にはそう単純ではなく、公的年金や退職給付なども含め、受け取り方を考える必要があります。リタイア後の取り崩しを考えるには、テクノロジーと人(アドバイザー)両面からのサポートが必要です。

自営業・フリーランスは法人成りも視野に

参考に挙げた厚生労働省の資料では、国会審議での指摘として、「国民健康保険制度や介護保険制度等における金融所得の勘案についても検討すべき」といった記載もありました。今後、医療保険だけにとどまらず、介護保険制度や、個人事業主などが加入する国民健康保険にも影響が広がる可能性があります。

国民健康保険に加入する自営業・フリーランスの方は、この機会に法人成りすることも視野に入れてもよいかもしれません。

【参考】「後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映のスケジュールについて」(厚生労働省保険局、令和8年10月16日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001759824.pdf