再び注目を集めるバフェットの教訓「他人が恐れている時こそ貪欲に」
米オンライン金融・経済ニュースメディアThe Streetの9月6日付の記事「Warren Buffett has a stark message for stock market investors(ウォーレン・バフェットは株式市場の投資家に対し厳しいメッセージを送る)」によると、米投資会社バークシャー・ハサウェイ[BRK.B](以下バークシャー)の会長ウォーレン・バフェット氏が2008年にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した「アメリカ製品を買おう。私は買っている」と題する記事のアドバイスが、再び注目を集めているという。
記事が掲載されたのは、2008年10月、S&P500指数が最高値から3分の1以上下落し、米国が深刻な大不況に陥っていた時期だった。寄稿文の中でバフェット氏は、経営基盤が弱く負債比率の高い企業は深刻な問題に直面する可能性があることを認める一方、健全な企業の長期的な健全性に対する懸念は誇張されているとし、ほとんどの企業は「5年後、10年後、20年後には新たな利益記録を打ち立てるだろう」と述べた。
バフェット氏は2026年5月米CNBCとのインタビューで「私がバークシャーの経営を引き継いでから、株価が50%以上下落したのは3回あった」と語った。そして、「これは何でもないことだ」、「大幅な下落があれば、資金を投入する」、「市場が崩壊して誰も電話に出ない時こそが最高の買い時だ」と語った。「他人が恐れている時にこそ貪欲になれ」という、長年の自身の助言を改めて強調したという。
2026年後半まで株価が上昇し続けるのか、それとも本格的な下落局面を迎えるのかは誰にも分からないが、バフェット氏の教訓は常に有効だ。歴史は繰り返す。長く市場に身を置くことがいかに重要なのかについては、バフェット氏自身の60年以上にわたる実績からも明らかだろう。
不安定な市場環境で浮上する「ヘッジ」としてのバークシャー
市場の水面下には、安定とは程遠い状況が潜んでいる。株式市場の変動率の、市場全体の変動率に対する比率が異常に高くなっていて、インフレと米連邦財政赤字の規模への懸念から債券利回りは上昇している。加えて、AI開発に必要な巨額の投資に見合うリターンが得られるのかという不安も高まっている。このような状況下においては、事態が悪化した場合のヘッジが重要になろう。
9月5日、フィナンシャル・タイムズ紙に掲載されていたオピニオン記事「Why Berkshire Hathaway might be an active hedge(なぜ、バークシャー・ハサウェイがアクティブヘッジとなるのか)」は、積極的なヘッジ効果が期待できる資産のひとつとして、ウォーレン・バフェットと故チャーリー・マンガーによって築かれた投資会社バークシャー・ハザウェイを取り上げている。
バークシャー・ハサウェイは過去2~3年間、S&P500指数のトータルリターンを20%以上下回っている。この低迷の理由はいくつかあるが、例えば、時価総額の約3分の1に相当する巨額の現金を蓄積し、十分に投資されていない状態にあることだ。アルファベット[GOOGL]への360億ドルの出資を除けば、AI(人工知能)構築に直接的かつ大規模な投資を行っていないこと。さらに、一部の投資家はグレッグ・アベルへの世代交代について懸念を抱いているかもしれない。
しかし、こうした懸念は、バークシャーの資産を全体で評価するという点を見落としていると指摘している。バークシャーが持つエネルギーネットワークは、米国で消費される天然ガスの15%を供給している。鉄道事業は、鉄道貨物輸送全体の28%を担っている。保険事業は、業界で3位という強力な地位を占めている。
市場の危機を「投資の好機」に変える、バークシャーの巨額資金と底力
バークシャーの株価はこの1年、市場全体のパフォーマンスを下回っているものの、1995年以降の長期で見た場合、アウトパフォームしている。バークシャーの長期にわたる企業としての強靭性がうかがわれる。広範な金融混乱が発生した場合、もちろんバークシャーも影響を受けることは想定されるが、市場全体の動向との相関性が低いため、下落幅は緩和されるだろう。
バークシャーの企業文化には積極的なヘッジ機能が組み込まれている。長年にわたり、数々の優良案件が、経営難の局面でバークシャーに持ち込まれてきたのは、同社が迅速に対応できる資金力と企業文化を備えているからだ。状況が悪化した場合でも、バークシャーは豊富な資金を魅力的な価格で優良資産に投資できる体制を整えている。これは投資家を市場のタイミングを計るという不可能な作業から解放してくれる。
スペースX[SPCX]の株価からひもとくIPO投資のポイント
水と油の巨頭が交差、マスクが長年望んだ「バフェット株主」が実現
ビジネス・インサイダーの8月21日の記事「イーロン・マスク、ついにウォーレン・バフェットを株主に迎える — ある意味で」は、米テスラのCEOイーロン・マスク氏が長年にわたり、ウォーレン・バフェット氏を株主として迎えたいと望んできたが、その願いがある意味でついに実現したと伝えている。
バークシャーがアルファベット株の一部を保有し、アルファベットがスペースX(スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ・コーポレーション)[SPCX]株の一部を保有しているという構造に基づくと、6月30日時点で、バークシャーはスペースX株の約0.04%を間接的に保有しているという。
バフェット氏は、2023年のバークシャーの株主総会でマスク氏について、「途方もなく優秀な男」と評価した。「彼は不可能な仕事に挑むのが好きで、彼の夢には強固な基礎がある。そして、実際にそれを何度も成し遂げてきた」と、その実行力を称え、テスラ[TSLA]を成功させた実績を高く評価していた。
一方で、マスク氏の破天荒な振る舞いや、リスクを顧みない姿勢には懐疑的だった。バフェット氏は「他社の参入を防ぐ強固な参入障壁(モート)を持つ企業」を好むが、マスク氏はこれを「時代遅れだ。重要なのはイノベーションのペースだ」と批判したことがある。
これに対しバフェット氏は、バークシャーが保有するシーズ・キャンディーズを例に取り上げ、「イーロンがどんなに優秀でも、キャンディー業界の我が社の堀をひっくり返すことはできないだろう」と反論。マスク氏の才能を認めつつも、自分たちの投資対象としては選ばないという姿勢を示してきた。
膨張する宇宙マネーとスペースXの現在地:成長期待型IPOへの警鐘
宇宙、衛星産業に特化した世界的な市場調査会社、ノバスペース(Novaspace)の最新の宇宙経済レポートは、グローバルな宇宙経済の規模について2025年時点で6260億ドル(約102兆円)に達しており、2034年までに1兆ドル(約162兆円)を突破すると予測している。
スペースXは8月5日、上場後初となる2026年4-6月期決算を発表した。売上高は前年同期比92%増の78億1400万ドル。最終損益は5億4100万ドルの赤字(前年同期は10億ドルの赤字)だった。売上高と最終損益は市場予想を上回った。人工知能(AI)やロケット部門の赤字を通信サービスで補う構図が続いている。
直近、スペースXの株価は公開価格(135ドル)を上回る150ドル程度で推移しているが、収益性が明確でない成長期待型の企業の場合は、初値で評価されても公開後のパフォーマンスが芳しくないというケースが多々見られる。IPOの成功は市場のボラティリティや金利環境、マクロ経済情勢に左右されやすく、タイミングや需給環境も重要だ。
このあと2026年中にはAI企業のアンソロピックといった大型の上場も控えている(オープンAIについては上場の延期が取り沙汰されている)が、IPO投資では、話題性だけで判断するのではなく、上場後の株価変動にも注意が必要だ。銘柄によってはIPO後の株価パフォーマンスには大きな差が出るため、ブームに乗らず個別に収益性や需給の動向を見極めることが必要になるだろう。
石原順の注目5銘柄
