世界的な株価の上昇が続いています。今週(10月5日週)アメリカのS&P500とナスダック市場は共に市場最高値を更新。日経平均も70,000円の大台を回復し、さらなる上昇期待が高まっています。
株高をもたらす要因の1つはインフレ
金利が上昇し債券価格が下落している中で株価が上昇している要因の一つとして、インフレがあります。
インフレになれば企業の売上も名目上、増えていきます。それに伴い利益も増加していけば、企業価値の拡大につながり株価にポジティブな影響が期待できるというロジックです。
インフレには3つのパターンがある
日本では昭和のバブルが崩壊した1990年代前半から30年近くデフレ経済が続きましたが、ここに来てインフレ経済への転換が明確になってきました。
インフレが発生するメカニズムは経済学の教科書的には3つのパターンに分類されます。
【1】コスト・プッシュインフレ、【2】ディマンド・プルインフレ、そして、【3】貨幣的インフレです。
【1】コスト・プッシュインフレ:2022年、ロシアのウクライナ侵攻がきっかけ
コスト・プッシュインフレとは原油・穀物などの輸入価格の高騰、円安による輸入コストの上昇、人手不足に伴う賃金や物流費用のアップによって発生するインフレです。
日本をインフレ経済に転換させたきっかけは、2022年のロシアのウクライナ侵攻です。さらに米国のイラン攻撃の影響で食料とエネルギーの価格が上昇し、世界的なコスト・プッシュインフレとなりました。原油をはじめとするエネルギーや農作物を輸入に依存する日本にとってはネガティブです。
この間の円安も国内の物価上昇に影響しています。
今後、もし世界的な地政学リスクの高まりが長期化すればこのコスト・プッシュインフレの影響が続くことになります。
【2】ディマンド・プルインフレ:半導体や電子部品が需要をけん引
コスト・プッシュインフレに加え、ディマンド・プルインフレも発生しています。
これは、需要(ディマンド)が強くなって供給を上回り、物価が上方に引っ張られる(プル)インフレです。
世界経済の需要を牽引するのが、AI革命の影響による半導体や電子部品です。スマホなどの情報通信、テレビなどの家電、ゲーム機器、カーナビなどに価格上昇が波及しています。
もともとは資源高・円安によるコスト・プッシュ型が主因だった物価上昇が賃上げの動きや内需の回復に伴い、需要や賃金の上昇に伴うディマンド・プル型への移行が進んでいる状況といえます。
日本の消費者物価はまだ上がる
2つのインフレ要因が相まって日本国内の企業物価指数は前年同月比で2026年5月が+6.3%、6月が+7.1%、7月が+7.2%、8月の速報値が+7.6%と高い上昇傾向が続いています。
企業物価の高騰は数ヶ月のタイムラグを経て消費者物価(CPI)へ転嫁されていくというのが経験則です。
海外発のコスト・プッシュ型のインフレが一巡した後も、持続的な賃上げを背景にしたサービスインフレが、2%を超える消費者物価指数の上昇を定着させるとみています。
【3】貨幣的インフレ:法定通貨の価値そのものが下落
インフレは名目的な価値が変わらない中で、気づかないうちに保有資産の実質的な価値が毀損されていく経済状態です。
その中でコスト・プッシュインフレやディマンド・プルインフレよりも恐ろしいのは貨幣的インフレ(Monetary Inflation)です。これは、市場に出回る通貨量が世の中のモノやサービスの量に対して増えすぎた場合に、法定通貨の価値そのものが下落するために、相対的にモノの値段が上がることによるインフレです。
中央銀行による過度な通貨発行や量的金融緩和の継続、あるいは政府が財政赤字を埋めるために国債を大量に発行することなどが原因とされます。
先進国の財政赤字の拡大は、このような貨幣的インフレのリスクを高めていくことになります。
資産運用でインフレ率に負けない資産防衛を
いずれにしても、今後インフレが鎮静化する事は考えにくいと思っておいた方がよいでしょう。
とすれば、個人投資家はインフレ率を超えるリターンを資産運用によって実現する必要があります。そうしなければ実質的な保有資産の価値が減少していくことになるからです。
日本国内では銀行の預金金利競争が激化していますが、消費者物価指数を上回ることはなく、資産防衛にはなりません。
インフレの継続によって、資産運用する人としない人の資産格差が広がることは確実です。インフレを意識して長期で実質的な資産価値を守っていくような資産運用を続けるべきでしょう。私はアセットアロケーションを使った長期分散投資こそが、そのための最も着実な手法だと思っています。
