先週(6月8日週)の動き:NY金はベアマーケット入りから週末に急反転、国内金価格も2025年12月初旬の価格から反発
先週(6月8日週)のニューヨーク市場の金価格(NY金)は、荒い値動きの1週間となった。「イラン情勢の緊迫化と米利上げ観測による急落」から「電撃的な和平合意観測による急反発」へと、地政学的リスクに激しく翻弄された。
6月11日には年初来の上げ幅をすべて失い、終値で4,114.0ドルと、2025年11月以来、約6ヶ月半ぶりの安値水準まで切り下げた。テクニカル上は直近高値からの下げが20%を超えて下落トレンドが持続するとされるベアマーケット(弱気相場)入りとなった。
ただし、週末6月12日にはイラン情勢の好転観測を受けて、直近安値(6月11日の4,046.2ドル)から200ドルほど切り返す(6月12日高値4,267.8ドル)など、荒れる展開となった。
6月12日の終値は4,238.8ドルで、週足は前週末比126.5ドル(2.9%)安の2週続落となった。レンジは4,046.2~4,388.6ドルと、前半に付けていた高値から急落し、週末に急速に戻ったものの4,300ドル台回復はならなかった。
週前半の急落局面
6月5日に発表された米雇用統計の上振れを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測によりNY金売りの基調となる中で、週初めはイランとイスラエル、さらには米軍を巻き込んだ戦闘の長期化が警戒され、株式市場を含め市場全体がリスクオフに傾いた。
具体的には米イラン間の戦闘激化(イランによる米軍ヘリ撃墜や米軍の報復爆撃)が重なり、相場は4営業日続落した。6月10日の終値は4,133.3ドルと終値ベースでの過去最高値(5,354.8ドル、1月29日)から22.8%下落したことで、テクニカル上の「弱気相場(ベアマーケット)」入りとなった。
6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)では、総合指数が前年比4.2%上昇し4月の3.8%から加速、2023年4月以来の高い伸びとなった。また変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年比2.9%上昇と、4月の2.8%上昇から加速した。これにより、FRBによる利上げ観測がさらに高まり、NY金は売られた。
週後半の急反発局面
6月11日の午前中、5月の米生産者物価指数(PPI)が発表された。前年比6.5%上昇し、2022年11月以来、3年半ぶりの大幅な伸びとなったことで、NY金は売られていた。前日にベアマーケット入りしていたこともあり、一時4,046.2ドルまで下げ、終値は4,114.0ドルといずれも約6ヶ月半ぶりの安値となっていた。
6月11日の取引時間外となる米東部時間の午後、トランプ米大統領がイランへの空爆中止と「和平合意が極めて近い」ことを電撃発表し、相場の潮目が変わった。「米国・イラン間の和平合意(イスラマバード覚書)」への期待に市場の関心がシフトし、これが強烈な買い戻し材料となった。6月5日の米雇用統計と6月10日の米CPIを受け、FRBの利上げ観測から売りポジション(ショート)が膨らんだとみられていたが、その買い戻し(ショートカバー)を巻き込みながら相場は急伸することになった。
その上昇は翌6月12日の終値に反映され、前日比124.8ドル高の4,238.8ドルとなった。
国内金価格も6月11日に年初来安値更新から反発
NY金の上下動が国内金価格にもそのまま反映された。時差の関係で、6月10日の米5月のCPIを受け急落したNY金の値動きを反映した6月11日、国内金価格は年初来安値を更新した。
6月11日の大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、終値が2万1556円、取引時間中の安値が2万1232円だった。いずれも3月23日に記録していた終値(2万2236円)、取引時間中の年初来安値を下回ることになった。6月11日の終値(2万1556円)は2025年12月11日以来(2万1540円)、取引時間中の安値(2万1232円)は同12月5日(2万1190円)以来の安値となる。
6月12日のJPX金の終値は2万2010円で週足は前週末比1503円(6.39%)安で5週続落となった。下げ幅、下げ率ともに3月23日週のそれぞれ1916円(7.5%)安以来の大きさとなった。レンジは2万1232~2万3645円で値幅は1635円に拡大したが、これは3月30日週(2042円)以来の規模となる。
なお代表的な金地金の店頭小売価格(10%税込)も6月11日2万3262円が年初来安値となった。2025年12月9日(2万3212円)以来の安値水準となる。
今週(6月15日週)の動き:ケビン・ウォーシュ新議長率いるFOMCと今後のNY金のテクニカルの好転に注目
米イラン合意6月19日に署名予定
週明けの日本時間6月15日午前の時点で、米国とイランがホルムズ海峡を再開させる和平合意に正式に達したと報道されている。トランプ米大統領は米東部時間6月14日、米国とイランとの間で、軍事作戦の停止を含む和平合意が成立したと明らかにし、イラン側もそれを認めている。さらに6月19日にはスイスで署名が行われるとしている。これにより、6月15日アジア時間のNY金は、再び4,300ドル台を回復する力強いスタートを切っている。
テクニカル面でどの時点で200日移動平均線を上抜けられるか
5月中旬以降、当欄では足元の安値追いの環境は、中長期の観点から新規買いのポイントとしてきた。原油を中心にエネルギー価格の高騰からインフレ再燃が懸念され、それがFRBの政策スタンスの方向性を利下げから利上げに変えるとの見方から、NY金は大きく売られてきた。その根幹のイラン戦争が終息方向に転じたことで、NY金は反転することになった。
テクニカル面では、下落モメンタムに歯止めがかかったNY金が、どの時点で200日移動平均線を上抜けるかが焦点となる。
ケビン・ウォーシュ新議長率いるFOMC
今週(6月15日週)の焦点は、ケビン・ウォーシュ新議長が初めて率いるFOMC(米連邦公開市場委員会)となる(6月16~17日開催)。ウォーシュ氏は市場とのコミュニケーションの取り方の変更などFRB改革を唱えている。金利据え置きが織り込まれる中、新議長の記者会見や声明文から、FRBの今後の政策スタンス(利上げの可能性など)をどう読み解くかがカギとなる。
米経済指標では6月17日に発表される5月の小売売上高に注目したい。ガソリンや食品価格の上昇にもかかわらず消費者が持ちこたえているか否かが焦点となる。
