会社概要:世界最大級のチップメーカーが主要顧客

ラム・リサーチ[LRCX]は、エッチングと成膜に特化したウェハ製造装置メーカーです。エッチングとは、ウェハ製造において、化学薬品やガス、プラズマを用いて不要な部分を除去して微細な回路パターン(配線)を形成する工程です。一方、成膜とはシリコンウェハ上に特定の機能を持つ薄い膜を形成する工程です。

同社はこのチップの性能を決定づける最重要工程で圧倒的な強みを持っており、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]やサムスン電子、SKハイニックス、インテル[INTC]、マイクロン・テクノロジー[MU]など世界最大級のチップメーカーを主要顧客としています。

HBM製造のボトルネック領域で圧倒的地位

その圧倒的な技術的優位性は、AI革命により半導体デバイスの構造が飛躍的に高度化・複雑化する中で、旺盛な需要を享受する強みとなっています。特に、AIサーバー向けGPUの性能を支える広帯域メモリ(HBM)製造における独占的地位は注目されるところです。

HBM(広帯域メモリ)は、複数のDRAMチップを垂直に積み重ねて作られます。この上下のチップ同士を電気的に接続するために、シリコンウェハを貫通する微細な穴を開け(ドリル工程)、そこに銅を流し込んで埋める(フィル)技術が「TSV(シリコン貫通電極:Through-Silicon Via)」です。TSV工程は、HBM製造における最大のボトルネック(難所)とされています。

同社は、このTSV工程に不可欠な2つのコア工程「ドリル・アンド・フィル」において、業界標準とも言える最先端装置を提供しており、前述のとおり、SKハイニックス、サムスン、マイクロンといった半導体メーカーに採用されています。こうした技術的優位性を背景に、2026年の先進パッケージング関連収益は前年比で50%以上の成長が見込まれています。

次世代技術への移行でシェア拡大の好機を捉える最先端装置

この成長を製品レベルで牽引するのが、次世代エッチング・プラットフォーム「Akara(アカラ)」です。Akaraは、長年業界標準として同社の収益を支えてきた「Kiyo」シリーズのノウハウを継承しつつ、プラズマ源や基本設計を根本から刷新したフラッグシップ装置です。

現在の半導体微細化はナノメートルを超え、さらに小さな「オングストローム(100億分の1メートル)」単位の精度が求められる領域に突入しています。Akaraはその極限の精度を実現しつつ、量産現場での高い歩留まりと生産性を両立させています。

メモリメーカーがDRAMを1cノードへ移行させ、NANDを200層超へ多層化する際、従来の装置では対応しきれない極めて難易度の高い高アスペクト比(深く細い)エッチング工程が発生します。Akaraはまさにその技術的ハードルを越えるために投入された製品であり、ラム・リサーチにとって、次世代の技術インフレクション(屈曲点)でシェアを拡大するための最大の武器と言えます。

業界の技術移行と、このような次世代機の投入により、ウェハ製造装置(WFE)市場全体における同社の獲得可能市場(SAM)は構造的に拡大しており、2026年に30%台半ば、将来的には30%台後半に達すると予想しています。

力強い業績見通し

2026年度第4四半期の見通しも強いです。売上高は66億ドルと予想されており、前四半期比で13%増、前年同期比で28%増となる見通しです(中間値)。最終利益についても、調整後EPSが前年同期比24%増の1.65ドルと予想されており、利益を伴った成長が継続します。

この背景には、マレーシアにおける第2製造拠点の開設があり、効率化の進展により粗利益率は約50.5%へと一段と上昇する見込みです。加えて、これまで同社の装置納入において一時的な足かせとなっていた「顧客側のクリーンルーム不足」という物理的な制約も徐々に緩和される見通しであり、旺盛な需要をスムーズに売上へと転換できる供給環境が整いつつあります。

市場全体のパイも拡大しており、同社は2026年のWFE(ウェハ製造装置)業界の投資見通しを1350億ドルから1400億ドルに上方修正しました。大手ハイパースケーラー4社によるAIインフラ投資は合計で6500億ドル~7000億ドル規模に達すると予測されています(前年比77%増)。またTSMCも、2026年の設備投資計画を520億~560億ドルと設定しており、2024年の約298億ドルから急拡大を見せています。

リスク要因:米国による対中輸出規制の強化

株価を抑えている要因があるとすれば、それは中国依存度の高さだと思われます。中国売上は直近四半期のシステム売上高の34%を占めています。これまで中国の「汎用(マチュア)プロセス」向け投資の需要を受けてきました。

しかし、4月下旬、米国は中国第2位のファウンドリである華虹半導体への製造装置の輸出を禁止しました。これは旧世代チップ向けであっても厳格に規制されるフェーズへの移行を意味し、同社も輸出ライセンス要件の拡大が業績に悪影響を及ぼす可能性を警告しています。最先端AIインフラ向けの力強い成長がこの減少分をカバーする公算が大きいものの、中国ビジネスの縮小は避けられないダメージであり、中長期的な投資判断において注視すべきところとなります。

短期的には圧力となりますが、一方で、2026年の先進パッケージング関連収益は50%以上の成長が見込まれています。HBM(広帯域メモリ)製造の核心である「ドリル・アンド・フィル」工程における事実上の独占状態が、中国での減益分を吸収できる構造であり、中長期では持続的な利益成長が期待できるでしょう。

財務健全、成長性に期待

好調な業績によりキャッシュフローも良好で、第3四半期単体で、営業活動から11億4100万ドルのキャッシュを創出しました。ここから設備投資を差し引き8億1000万ドルがフリーキャッシュフローとして残されています。同社はこのキャッシュを成長投資、負債の圧縮、株主還元に配分しています。

財務の健全性についても、進展がありました。当四半期中には、満期を迎えた7億5000万ドルのシニア債を自己資金で完済しました。これらの積極的な還元と負債の払い戻しを実行した結果、2026年3月末時点の現金および現金同等物は47億7000万ドルとなりました。前四半期末から23%減少しており、手元流動性が細ったように見えますが、実際には将来の利払い負担が軽くなるなど、財務面は筋肉質化されています。全体としても、有利子負債は37億ドルで、現金でカバーできる実質無借金の状態にあります。

株主還元については、四半期中に7億9600万ドルを自社株買いで、3億2600万ドルを配当で還元しました。自社株買いは前年の2.3倍、配当は前年を10%上回る規模となりました。同社ではフリーキャッシュフローの少なくとも85%を長期的に株主に還元するという方針を採っており、株主は利益増の恩恵を大きく享受できます。なお、自社株買いプログラムには43億ドルの残高があるとされ、今後も1株当たりの価値の上昇と株価の下支えとなることが期待されます。

【図表1】ラム・リサーチ[LRCX]年間配当推移
出所:Bloombergより筆者作成
※2014年~2026年、2026年は予想値(直近四半期実績を通期換算)
【図表2】ラム・リサーチ[LRCX]とS&P500の株価推移比
出所:Bloombergより筆者作成
※S&P500およびラム・リサーチ[LRCX]株価は1985年3月29日を1とした数値