株式相場における反発地合いが継続
トランプ米大統領は3月30日、戦争終結に向けた本格的な協議を行っていることを明らかにし、米国側の和平案に関して「イランがその大半に合意した」と言及。翌31日以降、市場参加者の間では中東情勢に対する楽観的な見方が強まり、株式相場における持ち直しの動きが続いてきました。
この反発局面において発表された米大手ハイテク企業の決算は、市場予想を上回る概ね良好な結果でした。また、大手ハイテク企業が人工知能(AI)関連の設備投資を継続する姿勢を示し、半導体関連企業への期待が高まったことから、関連銘柄が急騰したことも相場を押し上げました。
社会へのAIの浸透速度の速さや日々の進化を踏まえても、十分に納得できるものです。さらに、向こう数年における大手ハイテク企業の設備投資拡大も見込まれているため、ハイテク関連株が下落基調への転換する事態は想定しにくいと考えられます。ただ、米国株式市場全体のさらなる上昇余地を考えるうえでは、バリュー株をはじめとする他の銘柄へ投資家の物色が広がることも重要になるでしょう。
そこで今回は、足元の反発局面で出遅れ感のみられる米国バリュー株式の投資妙味について考えてみたいと思います。
原油価格や金利の高止まりは米国バリュー株式の相対的な優位性を高める可能性
米国とイランの戦闘終結に向けた協議は合意に至っていないものの、表向きには両者の停戦状態が継続しています(2026年5月13日時点)。ただ、ホルムズ海峡の実質的な封鎖は依然として続いているうえ、仮に開通された場合でも、湾岸諸国における一部の生産者は停止した油井の全面再稼働に3-6ヶ月を要するとの見方もあります。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのナセルCEO(最高経営責任者)は5月11日、「仮にホルムズ海峡が今日開通したとしても需給バランスが回復するには数ヶ月かかる。開通が数週間遅れれば、正常化は2027年にずれ込む可能性がある」との見方を示しました(同社はそれより短期間での対応が可能としています)。
こうした状況を踏まえれば、原油をはじめとする資源価格は新たな中東関連報道に左右されながらも高値圏での推移が続く公算が大きく、実際、米原油先物市場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油が1バレル101ドル付近で取引されています(2026年5月13日時点)。
過去の原油高局面における運用成果をはかるため、代表的な株式運用スタイルであるグロースとバリューに分けて相対リターンを確認したのが、図表2です。
原油価格の変動による影響が広がるまでのタイムラグを勘案し、WTI原油の前年比騰落率を6ヶ月先行させています。こちらをみると、原油価格の上昇後に米国バリュー株式の相対パフォーマンスが改善している局面がみられ、特に1998年前後や2021年以降の原油高局面において顕著だったことがわかります。
1998年頃といえば石油輸出国機構(OPEC)が原油の減産を行っていたほか、米国をはじめとする世界経済が回復に向かっていた時期でした。また、2021年以降についてはコロナ禍以降の経済の持ち直しに対する期待が高まる環境下にあり、原油需要の増加に関する市場の織り込みが進んだ局面でした。
過去のデータも示唆する好材料
原油価格が高止まりするものの、中東情勢の緊迫化に伴う経済へのさらなる悪影響が回避されれば、エネルギーや素材(鉱業など)といったセクターの相対的な業績優位性につながるとみられます。加えて、原油高はインフレ押し上げ要因になることから、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測の後退につながるとみられますが、金利上昇も景気の底堅さを伴っていれば、バリュー株式の相対優位性につながり得る要素です。
また、過去の経済・金融環境と株式のパフォーマンスを確認すると、経済協力開発機構(OECD)が発表している景気先行指数が足元の水準である約100.8を超え、かつ米10年債利回りが13週前比(約3ヶ月)で0.5%以上上昇していた局面では、米国バリュー株式は米国グロース株式を平均して3.2%程度アウトパフォームしていました。2026年5月13日時点の米10年債利回りは4.469%で、2026年2月27日に付けた3.941%と比較すると0.528%の上昇となっています。
今後も足元の米10年債利回り上昇の流れが継続すれば、13週前比でも0.5%超の上昇が定着し、上記の条件を満たすことになるでしょう。金利上昇は金融関連銘柄における利ざや改善を通じた業績拡大期待につながるとみられます。
こうした過去のデータを踏まえると、経済環境の底堅さや堅調さが維持されているなかでの原油価格や金利の高止まりは、米国バリュー株式にとって好材料になる可能性があり、経済環境の変化とともに今後の動向が注目されます。
米国グロース株式に対する米国バリュー株式のバリュエーションは引き続き過去と比べて割安
米国・イスラエルとイランの軍事衝突前に、HALO銘柄(重厚な資産を持ち(Heavy Asset)陳腐化リスクが低い(Low Obsolescence)銘柄)を選好する流れがあったこともあり、2026年の米国バリュー株式は米国グロース株式に対する出遅れをやや取り戻す兆しがみられています。予想株価収益率(PER、向こう12ヶ月)に基づく相対バリュエーション(米国バリュー株式の向こう12ヶ月予想PER÷米国グロース株式の向こう12ヶ月予想PER)にも持ち直しの動きがみられますが、それでも0.64倍と過去30年平均(0.70倍)を下回っています(図表3)。
デジタル化の進展や米当局による緩和的な金融政策を背景に、グロース株式優位の展開が長期にわたり続いてきましたが、景気の底堅さを伴った緩やかな資源高・金利高局面を迎えれば、バリュー株式が再評価され、投資家による物色対象の広がりを伴って株式相場全体を押し上げる展開になると筆者はみています。
長期的な視点で相対的に低いリスク特性を備える米国バリュー株式
過去30年における米国バリュー株式と米国グロース株式の特性値を確認すると、リターンについては米国グロース株式が相対的に高い一方、リスクについては米国バリュー株式の方が相対的に低いことがわかります(図表4)。
また、リターン効率の高さを示す「リターン÷リスク」は米国バリュー株式と米国グロース株式で同水準なうえ、米国バリュー株式と米国グロース株式を50%ずつ組み入れた場合の仮想ポートフォリオでは数値が向上する点がみてとれます。近年においてはポートフォリオがグロース株式に偏っている投資家が多いと想像されますが、一部に米国バリュー株式を組み入れるとポートフォリオの分散効果が期待できるものと考えられます。
なお、1996年5月以降のリターンデータを用いて3年リスクを毎月計算して図示したものが、図表5です。こちらを見ると多くの期間において米国バリュー株式のリスクが相対的に低くなっており、資産特性として頭の片隅に置いておきたいところです。
米国バリュー株式の具体的な活用方法
ここまで、米国バリュー株式の投資環境や特性を中心にみてきましたが、具体的な投資を検討するうえでは前述のようにエネルギーセクターや素材セクター、金融セクターから各企業のビジネスモデル、PERをはじめとするバリュエーション指標、業績見通しなどを調査・分析し、銘柄選別をする方法があります。
一方、運用会社がバリュー株というテーマに即した銘柄に基づいてポートフォリオ運用を行う上場投資信託(ETF)を活用する方法もあります。以下ではマネックス証券で取り扱う米国バリュー株式に関連したETFをシンボルのアルファベット順に掲載しますので参考にしていただければと思います。
