世界中の家庭で毎日使われている日用品やトイレタリー製品。洗面所、浴室、キッチンなどに並ぶおなじみの製品の背後には、巨大なグローバル企業同士の熾烈なシェア争い(ライバル対決)が存在します。

この記事では日用品・トイレタリーの世界最大手、日本でもおなじみのプロクター・アンド・ギャンブル[PG](以下、P&G)を軸に代表的なブランドや強み、市場での競争について簡単に解説します。

浴室の頂上決戦、ヘア&ボディーケア市場の戦い、P&G[PG]対ユニリーバ[UL]

「パンテーン」のP&G[PG]

浴室の主役ともいえるシャンプー市場では、日用品・トイレタリーの2大巨頭のP&Gとユニリーバ[UL]が強力なブランドを擁して激突しています。P&Gの看板ヘアケアブランドといえば「パンテーン」です。

1940年代にスイスで誕生したパンテーンは、髪の健康に有効なビタミン成分「プロビタミンB5(パンテノール)」の発見から始まりました。P&Gは企業買収を通じて傘下に収め、世界的なメガブランドへと育て上げています。「ダメージを補修し、内側から輝く髪へ」というメッセージを打ち出し、多くの女性の支持を集めています。

「ラックス」「ダヴ」のユニリーバ[UL]

これに対抗するのが、ユニリーバの「ラックス」と「ダヴ」です。「ラックス」はもともと英国で生まれた石けんのブランドで、現在の主力であるシャンプーではやや高い価格帯のプレミアムブランドという位置づけです。元来が石けんブランドであるため、ボディーソープにも強みを持ち、「髪や肌を美しく輝かせる」ことをサポートすると説明しています。

「ダヴ」は1950年代に米国で誕生した石けんのブランドで、それまで汚れを落とすことだけが使命だった石けんに「うるおい」という新たな価値をもたらしました。「うるおい」という保湿力を武器に今やシャンプーやボディーウオッシュなどヘアケアとボディーケア、スキンケアを網羅する巨大ブランドに成長しています。

世界シェアは両者で棲み分け?

世界市場シェアをみると、シャンプーではP&Gが一歩リードする半面、ボディーソープではユニリーバが頭一つ抜けているようです。両社はほかの分野でも競合していますが、世界市場では一部、棲み分けを図っているともみられます。P&Gの売上高に占める米国市場の割合が49%、その他の市場は51%(2025年6月期)と米国の比重が高いのに対し、ユニリーバはアジア太平洋・アフリカが48%、米州が37%、欧州が19%と新興国に強みを持っています。

企業概要:プロクター・アンド・ギャンブル[PG]

日用品・トイレタリーの世界最大手。1837年にウィリアム・プロクター氏とジェームス・ギャンブル氏が立ち上げたビジネスが祖業で、創業者2人の名前が社名となった。最大の顧客はウォルマート(WMT)で売上高全体の16%相当を占める。

【図表1】プロクター・アンド・ギャンブル[PG]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は6月
【図表2】プロクター・アンド・ギャンブル[PG]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月5日時点)

企業概要:ユニリーバ[UL]

日用品・トイレタリーの世界大手で、P&Gのライバル。石けんメーカーの英リーバ・ブラザーズとマーガリン製造のオランダのユニーが1930年に合併して誕生した。多様な製品を開発し、新興国市場向けの製品開発とブランド展開に強みを持つ。

【図表3】ユニリーバ[UL]:半期ベースの業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成 ※期末は12月
【図表4】ユニリーバ[UL]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月5日時点)

洗面台の覇権争い、オーラルケアブランドの対決:コルゲート・パルモリーブ[CL]、ケンビュー[KVUE]

「コルゲート」のコルゲート・パルモリーブ[CL]

洗面台では歯磨きをはじめとするオーラルケアの分野で覇権争いが行われています。歯磨き粉の世界最大手はコルゲート・パルモリーブ[CL]で、「コルゲート」ブランドが有名です。いまからちょうど130年前、1896年に世界で初めてチューブ入り歯磨き粉を発売し、その後もブランド価値を積み上げてきました。日本ではあまり見かけませんが、200を超える国・地域で販売しており、海外旅行などでは赤地に白抜きの文字が入ったパッケージを目にする機会も多いと思います。

P&Gは歯磨き粉事業で「オーラルB」や「クレスト」のブランドを展開しています。このほかに歯磨きという領域では「オーラルB by ブラウン」という商品名で電動歯ブラシを販売しています。「ブラウン」はP&G傘下の電気ひげ剃りの世界的ブランドで、電動モーター技術に定評があるため、電動歯ブラシでもブラウンを前面に打ち出しているとみられます。

「リステリン」のケンビュー[KVUE]

一方、2023年に医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]からスピンオフしたケンビュー[KVUE]はマウスウオッシュ(洗口液)の「リステリン」で、世界の洗口液市場をリードしているようです。リステリンは手術用の消毒液として開発された歴史があり、強力な殺菌力と独自の爽快感が大きな特徴です。

ケンビューはこのほかにも解熱鎮痛薬の「タイレノール」や禁煙補助剤の「ニコレット」といった有力商品を持ち、発売から100年以上が経過したばんそうこうの「バンドエイド」はほとんど普通名詞になっていますが、紛れのない同社のブランドです。

ただ、3年前にスピンオフしたばかりのケンビューは早くも企業合併・買収(M&A)の対象になっています。2025年11月にはキンバリー・クラーク[KMB]が総額487億ドルでケンビューを買収すると発表しており、2026年下期にも買収が完了する予定です。

企業概要:コルゲート・パルモリーブ[CL]

歯ブラシや歯磨き粉といったオーラルケア製品を軸に食器用洗剤の「パルモリーブ」、液体ハンドソープの「ソフトソープ」、ペットフードの「ヒルズ」などを展開する。

【図表5】コルゲート・パルモリーブ[CL]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表6】コルゲート・パルモリーブ[CL]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月5日時点)

企業概要:ケンビュー[KVUE]

セルフケア、スキンヘルス&美容、エッセンシャルヘルスが主力事業。スキンヘルス&美容では、ボディーローションやハンドクリームなどの「ニュートロジーナ」、シャンプーやコンディショナーの「OGX」、保湿液の「アビーノ」といったブランドも展開する。

【図表7】ケンビュー[KVUE]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表8】ケンビュー[KVUE]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月5日時点)

リビング・トイレの王者、ティッシュ・紙おむつの競合:キンバリー・クラーク[KMB]

「クリネックス」「スコット」のキンバリー・クラーク[KMB]

ケンビューを買収するキンバリー・クラークは衛生紙製品に強みを持ちます。ティッシュペーパーの「クリネックス」は1924年に使い捨ての化粧落としとして発売し、その後にハンカチの代わりとして普及しました。現在では175ヶ国超で愛用されています。トイレットペーパーの「スコット」も同社のブランドです。

キンバリー・クラークは紙おむつの分野でも「ハギーズ」という世界トップクラスのブランドを持ちます。日本ではあまり知られていませんが、おむつのフィット感や漏れにくさを追求する技術力で信頼を勝ち得ています。ただ、この市場でも立ちはだかるのがP&Gです。P&Gの紙おむつブランドは日本でもよく知られる「パンパース」で、世界市場では「ハギーズ」と首位争いを繰り広げているようです。

洗濯洗剤では「タイド」「アリエール」などP&G製品が存在感を示す

「衣食住」の「衣」の手入れでは洗濯洗剤、柔軟剤、消臭剤などに分けられ、いずれもP&Gの製品が存在感を示しています。洗濯洗剤の主力ブランドは北米などで強い「タイド」と欧州や日本で展開する「アリエール」です。

ユニリーバは欧州に強いブランドでP&Gと競合しますが、新興国に照準を合わせた「オーモ」を展開するなど世界市場ではP&Gと直接張り合わないように棲み分けを図っているようです。柔軟剤はP&Gが「レノア」、ユニリーバが「コンフォート」です。

さらに布や生活空間で使う消臭スプレーではテレビCMでもおなじみのP&Gの「ファブリーズ」が有名ですが、ユニリーバには直接競合する商品はないようです。

企業概要:キンバリー・クラーク[KMB]

1872年に創業した。パルプや紙をベースにした衛生用品に特化しており、主力ブランドの「クリネックス」はティッシュの代名詞的な存在。生活に密着した消耗品であるため、景気後退局面でも売上高が落ちにくく、ディフェンシブ性の高い事業構造を持つ。2025年11月にケンビューの買収で合意したと発表。

【図表9】キンバリー・クラーク[KMB]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表10】キンバリー・クラーク[KMB]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月5日時点)

百貨店1階のライバル、デパコスと高級スキンケア:エスティローダー[EL]

名だたるブランドを抱えるエスティローダー[EL]

化粧品大手のエスティローダー[EL]はこれまで紹介してきた銘柄と明らかに毛色が異なります。百貨店の1階の売り場を占有するデパートコスメに位置づけられる高級ブランドであり、スキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケアなどの分野で高価格帯の製品を提供しています。

エスティローダーは化粧品の試供品を無料で配るマーケティングを始めた企業としても知られています。予算不足で大規模な広告キャンペーンができない状況を打破するため、直接訴求できる試供品の提供を始めたところ、効果はてきめんだったようです。

P&GはSK-II(エスケーツー)を傘下に

一方、P&Gのスキンケアブランドは「SK-II(エスケーツー)」です。もともとはマックスファクターが保有していましたが、P&Gがマックスファクターを買収し、傘下に組み込みました。

この製品を開発したのはマックスファクターの日本法人です。日本酒を造る高齢の杜氏(とうじ)の手が若々しいことに着目し、酵母が発酵する過程で発生する成分を製品開発に役立てた話はよく知られています。

企業概要:エスティローダー(EL)

スキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケア製品を展開する化粧品大手。中核の「エスティ ローダー」をはじめ、「クリニーク」「マック(M・A・C)」「ボビイブラウン」「ジョー マローン ロンドン」など、名だたる高級ブランドを傘下に持つ。高収益で高付加価値なビジネスモデルを持つ。

【図表11】エスティローダー(EL):業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は6月
【図表12】エスティローダー(EL):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月5日時点)