2026年5月8日(金)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2026年3月分速報

【1】結果:実質賃金は3ヶ月連続でプラス 伸び減速も底堅い推移

2026年3月の名目賃金は、前年同月比2.7%増と前回2月(改定値)から0.7%ポイント伸びが減速しました。基本給にあたる所定内給与が同3.2%増と、同様に伸びが減速したほか、ボーナスなどにあたる特別に支払われた給与は同1.5%減となりました。サンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベースの所定内給与は同2.7%増で、減速がみられたものの、総じて底堅い結果となりました。

【図表1】毎月勤労統計調査2026年3月速報値結果
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、所定内給与は事業規模5人以上、調査産業計

測定に用いられる物価指標が3ヶ月連続で2%を割り込んだことから、実質賃金は前年同月比1.0%増となりました。市場予想は下回ったものの、3ヶ月連続でプラスとなりました。また、ヘッドラインの消費者物価指数(総合指数)にて試算された実質賃金は同1.3%増となりました。

【図表2】実質賃金の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)はマイナス表示

【2】内容・注目点:所定内給与が基調物価を下支えしていくかがポイント

物価の上振れリスクが意識される足元の局面において、良好な賃金指標が示される結果となりました。基調的な物価動向を測るうえで、賃金やサービス関連のインフレ基調が重要で、日本銀行もこれらの指標に注目しています。中でも、毎月勤労統計調査における、共通事業所ベースの所定内給与は同一サンプルにおける基本給の推移を捕捉することができます(図表3)。

同指標を確認すると、2026年に入り、2025年は2%台前半で推移していた同指標の前年同月比伸び率が切り上がっていることが確認できます。先行きにおいても、3年連続で5%を超える公算が高い春闘の賃上げ率などを理由に底堅い賃金動向が期待できるでしょう。この点は基調的な物価が日本銀行のターゲットである2%近辺で推移することを下支えする効果を発揮するものと筆者はみています。

【図表3】共通事業所ベース 一般労働者 所定内給与の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成

日銀の政策運営においては、ビハインド・ザ・カーブ(主に金融・経済分野で中央銀行などの政策対応が景気やインフレに遅れる「後手に回る」状態)に陥らないことが重要な局面と言えます。まだ、実測される指標では2%にアンカーされていることが確認できなくとも、上述のようにある程度底堅い推移が見込める前提で政策決定をしていくといったフェーズと考えられます。

【3】所感:政治サイドも利上げを否定できない

足元の市場は、次回の日銀金融政策決定会合(2026年6月15・16日開催予定)での利上げを70%ほど見込んでいます(執筆日の5月8日時点)。賃金の底堅さの観点では、利上げを肯定する内容であると考えられるでしょう。一方で、実測される物価指標では、それが上振れする様子はまだ確認できない状況です(物価についての最新レポート:【日本】4月の東京CPIは前年同月比1.5%と前月から0.1ポイント伸び拡大 エネルギーの上昇は限定的)。

前回(2026年4月27日・28日)の金融政策決定会合後の会見で、植田日銀総裁は「基調物価は未だ、2%にアンカーされていない」との認識を示しました。この発言を素直にとれば、利上げを急ぐ理由はないでしょう。一方で、国内では連休期間も含め約4~5兆円規模の為替介入が実施されたと報じられており、政府サイドも円安の歯止めを意識している局面と言えるでしょう。過去と比べて、政策金利や内外の金利差だけで為替相場を説明できる状況ではなくなってきているものの、金利差の縮小が一定程度の円高誘因となると考えられ、政治サイドからも利上げを否定的にとらえる声は少なくなってきているのではと想像しています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太