先週(4月6日週)の動き:米イラン停戦合意で国内外の金価格が続伸、一方で和平協議の行方への懸念、インフレ再燃懸念も高まる

米イラン停戦合意でNY金続伸

先週(4月6日週)のニューヨーク市場の金価格(NY金)は、週足ベースで続伸した。NY金の4月10日の終値は4,787.4ドルとなった。週足は前週末比107.7ドル(2.3%)高の続伸となった。パキスタンのシャリフ首相が仲介に乗り出し、4月7日に米イラン間で2週間の停戦合意が成立したことが買い要因となった。市場横断的にイラン戦争収束に向けた期待感が高まり、それまでの危機モードによる原油高や米ドル高が反転したことを受け、NY金は週末にかけて反発基調が続いた。

レンジは4,626.2~4,888.0ドルで値幅は261.8ドルと前週(412.5ドル)から大きく縮小し、金市場を取り巻く環境の沈静化を思わせた。シャリフ氏は4月7日に続き4月8日にも、「イランと米国が即時停戦で合意した」とSNSで改めて発表した。NY金はこの日100ドルほど水準を切り上げて、その後は4,800ドル近辺でのレンジ相場に移行した。

難航が予想される和平協議、NY金上昇はショートカバー

ただその一方で、それ以上の高値追いが重くなった背景には、イスラエルによる、隣国レバノンを拠点とする親イラン組織ヒズボラへの空爆が続いたことがある。ヒズボラへの攻撃中止は停戦の条件に入るとするイランと、範囲外とする米国・イスラエル側の協定への解釈の食い違いがさっそく表面化し、協議の先行きに暗雲が広がった。

さらに、イランが保有する濃縮ウランの扱いを巡っても米イラン間で見解の相違がみられる。4月11日にパキスタンの首都イスラマバードで開催される米イラン和平協議を前に、双方の主張が大きく異なる点が警戒感を高めた。

上値の重さを内部要因からみると、停戦合意を受けた買いの多くは、空売り筋の買戻し(ショートカバー)が主導したとみられる。つまりショートカバーが一巡した後、新規買い(フレッシュロング)が見られないためだ。

NY金の上値を抑える米インフレ再燃観測

さらに先週(4月6日週)発表された米主要経済指標の内容も、NY金には上値の重さを意識させるものが多かった。好悪まちまちの内容の中で総じてFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測を後退させるものが目立ち、NY金の上値を重くした。

2月末に始まったイラン戦争の影響で原油の供給が混乱し、ガソリン価格が急騰するなど、インフレ再燃を意識させる材料が増えた。一方で、先行きの経済減速を思わせる内容も含まれていた。

2月米PCE価格指数は伸びが加速

まず4月9日に発表された2月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、前月比0.4%上昇と伸びが加速した。上昇幅は2025年2月以来の大きさとなった。

PCE価格指数は、FRBがインフレ指標として注視していることで知られる。対イラン開戦の影響を受けて、3月も上昇した可能性が高いことから、当面は利下げに動かない公算が大きいとの見方が高まった。

3月米CPI約4年ぶりの伸び

さらに4月10日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)もインフレ再燃を思わせた。前年同月比3.3%上昇し、2月の2.4%から加速した。前月比では0.9%上昇と、2月の0.3%から加速し、2022年6月以来、約4年ぶりの大幅な伸びとなった。ガソリン価格は21.2%と大幅に上昇し、CPIの前月比上昇分の約4分の3を占めた。FRBによる年内の利下げ観測は一段と後退した。エネルギーコストの上昇は経済に対する家計の信頼感も悪化させている。

同じ4月9日に発表されたミシガン大学の4月の消費者信頼感指数(速報値)は過去最低の47.6に急低下した。3月の確報値は53.3だった。この調査で、消費者は今後12ヶ月でインフレ率が急上昇すると予想していることも明らかになった。具体的には1年先期待インフレ率は、3月の3.8%から4月は4.8%に大きく上昇した。

2025年10~12月期GDPは大きく減速

一方、4月9日に発表された2025年10~12月期の国内総生産(GDP)確報値は年率換算で前期比0.5%増と、改定値の0.7%増から下方修正された。7~9月期の4.4%増から大きく減速した。在庫積み増しなどを含む企業投資の下方修正や、2025年の政府機関閉鎖が影響したとみられる。経済の3分の2以上を占める個人消費の伸び率は、前回発表の2.0%から1.9%に下方修正された。

これらの指標はFRBにとって今後の政策運営の難しさを示している。足元の状況が、経済の停滞とインフレが併存する「スタグフレーション」の状態にあることは、パウエル議長をはじめ、FRB高官が否定している。しかし、傾向的にその可能性を否定できない状況にあるのも確かだろう。

国内は円高の影響で週足上げ幅縮小

こうした中で、先週(4月6日週)の国内金価格もNY金に連動する形で上昇した。ただし、米ドル/円相場が米イラン停戦合意を受け一時前週末比2円近く円高に振れたことで、上げ幅は削られることになった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の4月10日の終値は2万5060円となった。週足は前週末比167円(0.67%)高で続伸した。

なお米ドル/円相場は4月8日に一時157.89円(FactSet)まで付けた。時差の関係でこの動きが国内金価格に反映されて、4月9日のJPX金は1日で527円安となった。先週のJPX金のレンジは2万4234~2万5495円で値幅は1261円と前週の2042円からは縮小したものの、なお振れ幅は大きいと言える。

今週(4月13日週)の見通し:米イラン協議決裂で緊張高まる市場、指標では3月の米生産者物価指数(PPI)に注目

和平協議が物別れに終わり、米強硬策への警戒が高まる

金市場は中東をめぐる地政学リスクと米経済指標の合間で、今週(4月13日週)も方向感の出にくい環境が続きそうだ。

4月11日の米イラン間の協議は物別れに終わったと伝えられた。協議継続とはされるものの、5月に延期した米中首脳会談が迫る中で、イラン戦争収束に向け一定のめどを立てたいトランプ米大統領だが、こう着する局面の打開のために強硬策に出る可能性もあり、緊張感が強まりそうだ。ここまではいずれも、イラン側の妥協を引き出すためのディール上の強硬姿勢にとどまっているとみられるが、具体策に打って出る可能性は否めない。

週明け日本時間の4月13日午前の時点で、トランプ米大統領は「米海軍がホルムズ海峡への船舶の出入りを封鎖する措置を開始する」と表明した。イランに通航料を支払ったすべての船舶を、米国が公海上で拿捕(だほ)するとも述べたとされる(ロイター)。地政学リスクは偶発的な側面もあり展開は読みにくいが、仮に双方の交戦状況が悪化した場合、NY金の下値のめどはまず4,600ドル程度とみている。状況により4,500ドル割れもありそうだ。

3月の米生産者物価指数(PPI)

米経済指標では4月14日(火)に発表される3月の米生産者物価指数(PPI)が注目指標となる。エネルギー価格急騰の影響が反映される見込みで、前月比1.1%上昇と4年ぶりの大幅な伸びとなる可能性が指摘されている。そうなれば足元の金市場では、売り要因となりそうだ。