2026年4月1日(水)8:50発表
日本 日銀短観2026年1-3月期

【1】結果:2026年1-3月期の日銀短観は改善、先行きでは悪化予想

2026年1-3月期の日銀短観では、全規模全産業の業況判断DIは18ポイントとなり、前四半期から横ばいでした。前回(2025年10-12月期時点)の先行き予想では、5ポイント低下の13ポイントが見込まれており、それと比較すれば、業況はポジティブな推移となりました(図表1、右)。一方で翌四半期(2026年4-6月期)の見通しは7ポイント低下の11ポイントが見込まれ、先行きは保守的な見方が示されました。

【図表1】企業規模合計・全産業の業況判断DIの推移(「良い」-「悪い」、%ポイント)
※右図薄色線は2025年10-12月期時点の先行き。シャドーは景気後退期。
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

業態・企業規模別に業況判断DIを確認すると、大企業の製造業は前四半期から1ポイント改善し、17ポイントとなりました。非製造業は36ポイントと横ばいで、ある程度底堅い推移と言えるでしょう。

一方で、先行きの業況感は中堅・中小企業含め、どの企業規模でも低下する見込みです。今回の調査期間は2月26日~3月31日と公表されています。この期間中に米国・イスラエルによるイランへの攻撃が始まり、その長期化が意識されたことが、一定程度先行きの不透明感につながったものと推察されます(図表2)。

【図表2】業態・企業規模別 業況判断DIの推移(「良い」-「悪い」、%ポイント)
※シャドーは景気後退期
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:2026年度の設備投資は例年通り保守的見通し ソフトウェア投資が伸び悩み

2025年度の設備投資計画は、期初から徐々に上方修正されてきました。今回発表された着地見込みでは、小幅に下方修正され、前期比7.9%が見込まれています(図表3-1、黄色)。ある程度、底堅い設備投資需要が示唆された一方で、2026年度の設備投資計画は、同1.3%増見込みとされました(図表3-1、赤)。例年、3月時点での翌期見通しは保守的になりがちであり、外部環境などを確認しながら計画の上方修正が行われる傾向があります。

【図表3-1】全産業 設備投資計画修正の推移(前年度比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

業態・企業規模別に設備投資計画を確認しても、2026年度は同様に保守的な見通しでのスタートとなりました。しいて言えば、現時点では大企業の製造業における設備投資計画が、例年比で見劣りしています(図表3-2)。中身を見ると、企業規模問わずソフトウェア投資が減速する見込みとされています(図表3-3)。

2026年に入り、人工知能(AI)がソフトウェアサービスを代替するといった懸念から、ソフトウェア関連の株式が軟調に推移しています。一部にはこのAI代替懸念が、ソフトウェアへの投資計画を減速させていると想像されます。

【図表3-2】業態・企業規模別 設備投資計画修正の推移(前年度比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成
【図表3-3】ソフトウェア投資計画(2026年1-3月期時点、前年度比%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

もっとも、人員不足を補うための資本増強需要や、国内の設備投資を喚起する政策などを背景に、全体として設備投資需要は、先行きでも堅調に推移していくとみています。上述のように、AIによる既存サービスのディスラプト(革新的な技術やビジネスモデルが、既存の市場秩序を崩壊・混乱させ、業界の構造を根本から変革する現象)は、今後数年間のホットトピックとなるのは間違いないでしょう。

一方で、既存設備の更新投資など、国内経済の観点では地に足のついた設備投資にも相応の資金が振り向けられると想定しています。投資判断の観点では、防衛セクターや製造拠点の分散を目的に、国内の製造拠点を増強する方針の企業などが注目されるとみています。

【3】所感:国内経済は底堅く短観は利上げ後押しの内容/中東情勢の不確実性が鍵

企業の1年後の物価見通しも、前年比2.6%と、前回調査から0.2ポイント上昇しました(図表4、青丸)。そのほかの期待インフレ指標もある程度、2%目標に近い水準で推移しています。短観の内容は底堅く、物価の観点からもある程度、追加利上げが容認される内容と見受けられます。実際に、本稿執筆(2026年4月1日)時点で、市場は4月の日銀金融政策決定会合での利上げを、70%ほど見込んでいます。中東情勢の不確実性をどう評価するかは、金融政策判断においても重要です。

一方で、個人的には利上げを急ぐ必要はないと考えています。原油高といったコストプッシュインフレに対し、利上げによるインフレ抑止は限定的であり、その一方で、利上げは経済の下押し懸念を助長する可能性が相応にあるとみているからです。結局のところは、中東情勢の早期進展により、霧が晴れることが鍵です。金融政策の観点でも重要な局面と言えるでしょう。

【図表4】期待インフレ指標の推移
出所:日本銀行、Bloomberg、QUICKよりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太