日経平均は一気に54,000円台に駆け上がり、その後も地合いの強い展開が続いています。きっかけはサプライズとも言える衆院解散報道でした。このコラムでは何度も触れていますが、相場格言では「解散は買い」です。今回もまさに格言通りの展開にあると言えるでしょう。1月23日に解散、2月8日投開票という日程です。野党間でも再編の動きが顕在化するなど、目が離せない状況となっています。2025年の自民党総裁選の駆け引きに始まり、政治への関心は高まっているのではないかと考えます。世界の地政学リスクは着実に増している中ですが、当面の株式市場は選挙戦の行方を材料視する展開が予想されます。中でも強気派からは、日経平均6万円を目指すといった声も出始めるかもしれません。
結実までは長期戦、試行錯誤の「助走期間」に見出す投資妙味
さて、今回は「宇宙産業」をテーマに取り上げてみましょう。宇宙は今世紀最大の成長領域とする声もあるほど、そのポテンシャルには大きな期待が寄せられている産業です。かつては莫大な投資資金がネックとなって国家プロジェクトでしか対応できなかったのですが、今や米国を中心に多くの民間企業がこの領域に参入するようになりました。衛星通信や気象観測、GPSといった商業用途の広がりに衛星打ち上げコストの低下がマッチし、民間企業でも十分にリスクとリターンが計算できるフェーズに入ってきたということなのでしょう。
日本でも2019年には民間単独初のロケットの宇宙空間到達を実現するなど、宇宙という市場の開拓を目指す動きが出てきています。一方で、2025年12月にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の大型基幹ロケット「H3」8号機の打ち上げに失敗するなど、宇宙開発は一筋縄ではいかないという現実を目の当たりにする出来事もありました。
このテーマはとても長期戦になると考えられるため、大化けするまでには相応の助走期間もまた覚悟する必要があるでしょう。思えば、携帯電話もインターネットも、古くはカラーテレビや自動車も、大きなポテンシャルを秘めた産業は、いずれもしばらく試行錯誤の期間を経た後に臨界点を超え、一気に市場は急拡大してきました。宇宙産業も同じようなプロセスを踏む公算は大きいと考えます。見方を変えれば、そうした助走期間こそが宇宙産業への投資を検討する絶好の機会と捉えたいところです。
宇宙産業とは何か?「機器開発」から「データ活用(ソリューション)」へ
では、具体的に宇宙産業というのは何を示しているのでしょうか。おそらくこの問いに即座に答えられる方は少ないのではないでしょうか。経済産業省の宇宙基本計画によると、2020年時点で国内宇宙産業は市場規模が約4兆円あり、その内訳は宇宙機器が約3500億円、宇宙ソリューションが約3.5兆円としています。つまり、宇宙産業とはどうしてもロケットなどの「ハードウェア」をイメージしがちですが、実際は衛星データを活用した農業・防災・インフラ監視・通信・創薬などの課題解決(ソリューション)ビジネスが圧倒的主流なのです。経産省はさらにその流れを加速させるために、衛星データを無料かつ自由に利用できるようなデータプラットフォームを開発し、様々なユーザーに提供し始めました。
そうした取り組みにより、政府は2030年代早期に市場規模を8兆円に引上げることを目標に掲げています。その内訳は、宇宙機器が6,000億円、宇宙ソリューションが7.4兆円で、規模的にも伸び率的にも、今後は宇宙ソリューションの重要性がより高まる見通しです。
ソリューション領域では、宇宙デブリ(宇宙ゴミ)増加への対策も重要になってきます。NASA(アメリカ航空宇宙局)の調べによると、2024年時点で衛星軌道上には対象を10センチ以上のものに限っても3万個の物体が存在しており、そのうち、人工衛星が1.4万個、ロケットなどの残骸・破片が1.2万個を占めるとしています。人工衛星とこれら物体との衝突を避けるためにも、物体個々の位置・軌道の把握(SSA)は宇宙活動を維持するうえで不可欠です。現在、日本はそれらに関するデータを米国などに依存していますが、国内宇宙産業の成長加速にはそれらを自前で確保する必要があるのです。
裾野広がる関連銘柄、重工大手から注目の宇宙ベンチャーまで総点検
株式投資という観点では、まずロケット関連企業群が挙げられます。JAXAのH3ロケットに関わる三菱重工業(7011)やロケットエンジン開発や関連部品に実績を有するIHI(7013)、川崎重工業(7012)がその代表と言えるでしょう。
このほか、ベンチャーの民間ロケット開発会社に出資しているトヨタ自動車(7203)、キヤノン(7751)、清水建設(1803)なども広義の宇宙関連と言えるかもしれません。
ソリューション領域では、SSA関連技術を有する企業群として日本電気(NEC)(6701)、富士通(6702)、スカパーJSATホールディングス(9412)や三菱電機(6503)、NTT(9432)などが挙げられます。
さらにその他のソリューション開発企業群としてQPSホールディングス(464A)、アクセルスペースホールディングス(402A)、Synspective(290A)、アストロスケールホールディングス(186A)、ispace(9348)、さくらインターネット(3778)などが挙げられます。QPSホールディングスやSynspectiveは既に小型の合成開口レーダー衛星の軌道投入に成功しており、高精細画像やデータ解析といった領域で実績を積み上げています。アクセルスペースホールディングスは運用を終了した衛星の軌道離脱装置の実証を進め、アストロスケールホールディングスは衛星監視・防御技術に関して防衛省との契約実績も有しています。Ispaceも同様に、JAXAと「スペースデブリ対策や廃棄物の管理に関する契約」を締結しました。さくらインターネットは、衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」を開発・運営しています。
他にも関連企業は数多くあり、実はプレーヤーの裾野もまた着実に広がっています。折しも、防衛関連でも宇宙は注目される機会が増えてきました。一気に市場が急拡大する臨界点は、そう遠くない未来に訪れるはずです。皆様はどうお考えになりますでしょうか。
