「レートチェック」以降急拡大した投機筋の米ドル売り
ヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、カナダドル、豪ドルで試算)の売り越しが、1月23日の日米通貨当局による「レートチェック」の後から急拡大した。1月20日時点ではほぼニュートラルだったが、2月10日時点では18万枚まで売り越しが拡大した(図表1参照)。
同統計では、米ドル売り越しが20万枚以上に拡大すると「行き過ぎ」懸念が強まる(図表2参照)。その意味では、1月23日の「レートチェック」を前後して、ほぼ3週間程度という短期間で「行き過ぎ」懸念が拡大するほど米ドル売りが急拡大したことになるだろう。
もともと2025年のトランプ政権発足以降、それまでの国際的な慣行から逸脱した行為が連続する中で米ドルへの信認も揺らいで「米ドル離れ」が広がっているとの見方があった。そうした中、1月23日に米当局自らが米ドル売り・円買いの為替市場介入に動いた可能性が浮上したことは、「米ドル離れ」が拡大するきっかけになったのではないか。
米ドル売りの「受け皿」は「第2の基軸通貨」ユーロ等の買い
このような米ドル売り拡大の「受け皿」となったのはユーロや豪ドルの買いだったようだ。CFTC統計の投機筋のユーロ買い越しは、1月20日時点の11万枚から2月10日時点では18万枚まで拡大した(図表3参照)。このように20万枚近くまでユーロ買い越しが拡大することは、経験的には「行き過ぎ」懸念が強くなっていることを示している。「米ドル離れ」拡大に伴い、短期間でユーロ買いの「行き過ぎ」懸念が強まるほどに、かつて「第2の基軸通貨」とも呼ばれたユーロへのシフトが加速したということではないか。
投機筋の豪ドルのポジションは、1月20日までは売り越しが続いていたが、その後は買い越しに転じた(図表4参照)。こうした中で豪ドル/米ドルも0.7米ドルの大台を上回る一段高となった。
円安予想でも円売り限定的=選挙後の円高は米ドル安の影響大か
投機筋の円ポジションは、1月20日時点で4万枚の売り越しだったが、それが2月10日時点では2万枚弱まで縮小した(図表5参照)。円安予想が支配的だったものの、1月23日の日米当局による「レートチェック」をきっかけにその修正を余儀なくされた結果と言えそうだ。
米ドル/円は2月8日の衆院選挙で与党が歴史的圧勝という結果となると、その後から円高への急反転が起こった。ただ、この投票日直前、2月3日時点で投機筋の円売り越しはすでに2万枚弱と小幅にとどまっていた。その意味では、あくまでこのデータを参考にした場合、投票日を前後した円安から円高への急反転は、円安予想による過大な円売りの反動の影響は限定的だったと考えられる。それよりも、すでに見てきたように「レートチェック」以降の「米ドル離れ」急拡大の影響が米ドル/円にも波及した面が大きかったのではないか。
これまで日本の財政への懸念に伴う円安リスクが注目されてきたが、一方でトランプ政権への不信感をきっかけとした「米ドル離れ」に伴う米ドル安リスクも存在し、「レートチェック」はそれを再認識させるきっかけになった可能性もあったのではないか。
