物色対象広がる半導体セクター
2026年の1月相場がまもなく終わります。株式市場では年が改まっても半導体関連株の活躍が続いています。
半導体セクターは人気化してから4年目を迎えます。それでもアドバンテスト(6857)やキオクシアホールディングス(285A)のような中心的な銘柄の株価を見る限り、物色の勢いは一向に衰えていません。それどころか今では一段と物色対象が広がっています。
生成AIの出現によって始まった「AI革命」は、当初の物珍しさから話題に取り上げられていた段階はとうに過ぎ、今では社会のあらゆる状況でAIが実際に搭載されるようになりました。
AIブームの実体を支えているのは半導体です。半導体市場はますます活況を呈しています。今回は半導体の製造工程で欠かせない、半導体素材メーカーについて述べます。
半導体製造「前工程」とは?
半導体の製造では、基板となるシリコンウエハ上に微細加工によって回路を書き込む「前工程」の作業と、回路を書き込んだチップを半導体として製品に仕上げる「後工程」の作業に分かれます。今回は主に前工程で不可欠な素材メーカーを取り上げます。
シリコンウエハ:シリコンインゴットを切断、研磨
前工程は、最初に回路を書き込む「土台」を作るところから始まります。シリコン単結晶のインゴットをスライスして、平面を凹凸なくピカピカに研磨して仕上げたものがシリコンウエハとなります。目に見えないナノレベルの塵がひとつ付着しても、ウエハは台無しとなってしまいます。
膜の形成:酸化膜、窒化膜、金属膜等を形成
次に行うのが膜の形成です。シリコンウエハ上に酸化膜や窒化膜、配線用の金属膜を形成しますが、その方法としてはCVD、PVD、ALDなどの手法を用途によって使い分けます。
CVD(Chemical Vapor Deposition)は、ウエハ表面に原料ガスを化学反応させて膜を成長させる方法です。用途が広く応用が効きますが、温度が高くなる点が難点です。
PVD(Physical Vapor Deposition)は、金属の原子をウエハ上に堆積させる方法です。低温で膜ができシンプルですが、膜の密着性が難しいとされています。
ALD(Atomic Layer Deposition)は、原料ガスを何種類か交互に供給して原子レベルで膜を積み上げる成膜法です。膜の厚みを制御する精度は最も高いのですが、装置のコストが高いのが難点とされています。
リソグラフィ工程:回路パターンの転写
ウエハ上に膜ができれば、次がリソグラフィの工程に進みます。レジスト(感光材)を塗布して露光装置で回路パターンを転写します。ここでEUV(Extreme Ultraviolet)やArF(ArFエキシマレーザー)などの露光装置が登場します。
ArFは193nm(1ナノメートルは1ミリの100万分の1)、EUVは13.5nmと露光の波長が決定的に異なります。回路パターンの転写では、いかに狙った形を崩さず写し込むか、が問われます。重ね合わせの精度と線幅の制御がきわめて重要です。
エッチング:不要な膜を除去し回路パターンを実体化
リソグラフィの次の工程が、回路パターンを実体化するエッチングです。不要な膜を削り取って必要な部分だけを残します。下地の膜を傷つけるほど削ってしまうのはダメ。削り残しがあれば回路がショートする要因となりやはりダメ。ドライエッチングが現在の主流となっています。
イオン注入:トランジスタの特性・性能を決める
前工程の最後はイオンを注入して不純物を入れ、熱処理で活性化させます。トランジスタとしての特性・性能はこの工程で決まります。
この後にCMP(化学的機械的研磨)を行って表面を再び平坦化して、ようやく次の層に進むことができます。一連の工程を30~50回も繰り返して、シリコンウエハ上に繊細な配線回路が形成されてゆくのです。
半導体製造に欠かせない素材メーカー4選
主に化学業界を中心に半導体の製造工程で不可欠とされる素材メーカーを挙げます。
東京応化工業(4186)
半導体製造工程で不可欠とされるフォトレジスト(感光性樹脂)の世界トップ企業。フォトレジストは半導体および電子部品に精緻な回路パターンを形成する際にきわめて重要な役割を果たす。最先端のEUV露光で用いられるレジストは台湾メーカー向けにシェア50%以上を有し、韓国メーカーにも食い込む。微細加工と高純度化の2つのコアテクノロジーが圧倒的な優位性を同社にもたらしている。
レゾナック・ホールディングス(4004)
旧・昭和電工。2020年に「日立御三家」の一角と称された日立化成を買収して半導体材料分野に本格進出。事業の構造改革を大胆に進め、世界トップクラスの機能性化学メーカーへと生まれ変わった。2023年に現社名に変更。回路用ソルダーレジスト(微細配線を施したフレキシブル基板の回路表面の保護材料)、封止フィルム(チップを保護するフィルム状の封止材料)、チップ接続用ACF(異方導電フィルム、導電と絶縁を両立するフィルム材料)など半導体向け製品ラインナップが豊富。
関東電化工業(4047)
古河系の化学品メーカー。コア技術である「電解技術」「フッ素化技術」「粒子制御技術」を駆使して、1970年代にフッ酸電解技術を確立。そこから半導体製造用の特殊ガスで地位を固めた。エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料の分野で同社の特殊ガスは微細化、多層化に多用されている。三フッ化窒素、六フッ化タングステン、およびエッチングガスは世界シェアで上位に位置づける。半導体の微細化、多層化には欠かせない。
ステラ ケミファ(4109)
高純度フッ素薬品では世界トップクラス。1930年からフッ素化学を研究開発のメインテーマに掲げ、高純度、高品質のフッ素化合物の開発に取り組んできた(ここでの「高純度」とは、12N=99.9999999999%以上の純度まで精製することを指す)。現在は半導体・液晶ディスプレイ製造用の洗浄、エッチング用薬液(フッ化水素酸)、リチウムイオン二次電池用の添加剤などを軸に、国内シェアは7割、世界では8割に達する。半導体製造工程では不可欠の存在である。
