2026年1月23日(金)日本時間0:00発表
米国 12月CPI、10・11月PCE価格指数、他

【1】結果:12月のCPIは概ね市場予想に沿った内容 コアは前年同月比2.6%上昇

12月の米・消費者物価指数(CPI)のヘッドラインの指数は、市場予想と一致する前年同月比2.7%上昇と、前月から横ばいとなりました。また食品・エネルギーを除いたコア指数(コアCPI)は同2.6%と同じく横ばいで、市場予想(同2.7%)に対してはわずかに下回る結果となりました。政府閉鎖の影響もあり、発表が遅れていた生産者物価指数(PPI)やPCE価格指数の10・11月分も発表されましたが、依然として高止まりの傾向がうかがえる内容となっています。

【図表1】米コア物価指数の推移(前月同月比%)
出所:米労働省労働統計局よりマネックス証券作成 ※コアPCE価格指数のみ季節調整値

【2】内容・注目点:メインは緩やかな鈍化継続も 遅れてきた関税転嫁がインフレ上振れリスクか

先行きのインフレは、現状では緩やかに鈍化していくという見方がコンセンサスです。具体的には、コアPCE価格指数の前年同月比は、2026年前半は2.5~2.8%ほどで概ね横ばい圏の推移、2026年後半から2027年前半にかけて2%台半ばに収束すると市場はみています。実際にCPIのウェイトが大きい住居費や、ISM非製造業景気指数における価格指数といったソフトデータ(図表2、赤丸部分)からはインフレ鈍化が期待できるもので、筆者も根強いながらもインフレ鈍化がメインシナリオと考えています。

【図表2】CPIとISM非製造業・価格指数の推移
出所:米労働省労働統計局、米供給管理協会よりマネックス証券作成

一方で、リスク要因は相応にあるとも考えています。2025年は影響が限定的であった米国の関税政策によるインフレが顕在化するリスクです。一般的に関税の物価影響は、適用されたその当年にコストとして転嫁され、その分のコストに限定し前年比ベースで比較すればその翌年には剥落するものとされています。

しかし、関税政策が実施された2025年後半の物価は高いながらも、再加速といえるほど上昇しませんでした。この理由には企業側のアクションとして在庫を積み上げ、価格転嫁に耐えうるレベルのバッファーを積んでいたことがあげられます。しかし、2026年1月19日よりスイスで行われたダボス会議の中で、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは、「企業が積み上げた在庫が枯渇し始め、輸入コストの上昇を最終価格に転嫁するフェーズにある」と指摘している通り、ここにきて在庫がはけてきたと考えられます。

実際に、米国における輸入依存度の高い最終財品目を見ても物価の上昇は、家具類が3%を超えるものの足元のところは限定的といえます(図表3)。これらの品目は全体に対するウェイトは決して大きくないものの、インフレが強まる際にはコストプッシュ型インフレに寄与する懸念があり、高止まりするインフレ下において消費者への負担増が危惧されます。

【図表3】輸入依存度の高いCPI品目の推移(前年同月比%)
出所:米労働省労働統計局よりマネックス証券作成

【3】所感:インフレ動向もK字型の様相

前回のレポートでは低所得者層の賃金が伸び悩んでいると指摘しました。足元、1ヶ月においてもその傾向が各所でみられており、俗に言うK字型経済、K字型の価格転嫁傾向が確認されます。K字型経済とは、高所得者層や一部の大企業の景気が好調(右肩上がり)である一方、低所得者層や中小企業などが不振(右肩下がり)であり、経済の二極化・格差が拡大する状況を差します。グラフにすると、右肩上がりと右肩下がりの線からKの字に似ているといった理由で、その呼称が用いられています。

直近の価格転嫁の動向で言えば、ユナイテッド・エアラインやデルタ航空といった航空会社の決算発表からは、「プレミアムキャビンといった高価格帯サービスの需要は旺盛であり、先行きも堅調な見通し」との発表がされました。一方で、必需品セクターのプロクター・アンド・ギャンブルは、2025年10-12月期の決算発表の中で「価格を1%引き上げた結果、数量が1%減少した」と発表しており、同CFOも「消費者がより慎重な支出行動をとっている」と発言しています。

全体のインフレに対しては、高価格帯の製品・サービスは一般的な消費者のバスケットを想像してもウェイトが小さいもので、ヘッドラインへの寄与は限定的でしょう。低所得者層の雇用などを支える点でも、利下げは合理的であったと判断していますが、関税を端とするインフレ再加速の懸念は燻り、FRBは難しいかじ取りとなる局面と言えるでしょう。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太