円安による輸入品の値上がり、人手不足による人件費の高騰、気候変動による農作物の値上がりなどによって、日本人の生活コストが上昇しています。ようやく日本でもインフレが意識されるようになってきました。1990年代前半の昭和バブルの崩壊以降、長らく続いてきたデフレによって、日本人には低金利で物価は上がらないというデフレマインドが染み付いていました。
しかし、ここにきての物価上昇の動きは一時的なものではなく、今後も継続するものと考えるべきです。なぜなら、日本政府がインフレ傾向をさらに助長するような経済政策を、今後も展開していく可能性が高いからです。
積極的な財政支出はインフレを助長する
高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、財政支出の拡大を通じて景気の浮揚をはかり、経済を回復させようとするものです。財政支出だけではなく、金融の緩和的な政策を組み合わせることによって、その効果を最大限に発揮できると思われます。
日銀は金融政策を正常化させることを目指しています。このような政策が目論見通りうまくいくか私は懐疑的ですが、確実なのはインフレ助長的な政策であることです。インフレ抑制を政策の1つに掲げている高市政権ですが、経済政策によってむしろインフレがさらに加速するリスクがあると考えます。
預金金利の上昇では資産の目減りを補えない
黒田前日銀総裁が進めてきた異次元緩和によって、低位に抑え込まれていた預金金利も上昇してきました。ただ預金金利とはあくまで名目のものであり、インフレ率を勘案して実績的な金利を計算すべきです。
日本の消費者物価指数が3%程度の上昇で推移している中では、預金金利が上がったとはいえ実質金利はマイナスです。預金を保有している人は資産を目減りさせていることを忘れてはいけません。インフレに対抗するにはインフレ率を上回る資産の増加を実現しなければなりません。
そのためにまず必要なのはインフレに強い株式・不動産・貴金属・暗号資産といった資産を保有することでしょう。ただし、これらの資産は価格変動が大きくリスクが存在します。そのため、1つの資産に集中させるのではなくアセットアロケーションを考えて分散させることが必須です。
例えば、株式は個別銘柄に集中するよりもインデックス投資を行うこと、不動産への投資をするならば複数の物件に分散できるとよいと思います。また、貴金属や暗号資産などは資産全体の10%程度を目安に保有するとよいでしょう。
円安か円高かわからないならどうする?
財政赤字の拡大が円安をもたらす可能性が高いとすれば、為替リスクのコントロールもしっかり行う必要があります。
個人的には長期的な円安方向を想定していますが、円高か円安かわからないとしても、資産と外貨資産を50%ずつ保有するのが合理的です。外貨資産を保有しないまま、さらに円安が進めば、資産の目減りは避けられません。外貨資産の保有はこれからも積極的に進めていくべきでしょう。
借金は最大のインフレ対策
インフレ対策はインフレに強い資産を保有するだけではありません。最大の対策は負債を膨らませること。つまり「借金」です。
借金と聞くと、とにかく悪いことのように思い込んでいる方も一定数いらっしゃいます。確かに消費のための借金は将来の収入を先に使うことですから避けるべきです。しかし、投資のための借金は必ずしも悪いことではありません。
例えば、金融機関からお金を借りて国内不動産を購入した場合、将来インフレになれば、不動産価格は上昇しますが借金の金額は変わりません。
インフレになればお金を借りている人は資産を増やすことができるのです。
デフレマインドから脱却しよう
経済環境がインフレへと変わっているにもかかわらず、いまだにデフレマインドから脱却できない方もいるでしょう。元本保証の預貯金に資金を滞留させ、保険や年金などの安定した資産に偏っているお金との付き合い方は、インフレに対して非常に脆弱です。
日本では特に高齢者の多くが預貯金に多くの資産を滞留させています。預貯金と年金に頼るシニアの人たちが今後のインフレによって経済的な苦境に陥っていくことを危惧しています。
今からでも遅くはありません。2026年からの資産運用戦略を年末年始にしっかり練って、早めに行動を始めてみましょう。
今年も1年間本コラムにお付き合いいただきありがとうございました。来年も皆様のお役に立てる記事を書いていきたいと思いますので引き続きよろしくお願いいたします。少し早いですが、よいお年をお迎えください。
