1.2米ドルはユーロ/米ドルの重大分岐点なのか=2026年予想は1.1~1.25米ドル
2025年のユーロ/米ドルは、年明け早々は1ユーロ=1米ドルの「パリティ(等価)」割れ寸前まで下落しました。その後上昇に転じると、一気に1.2米ドルの大台に迫る動きとなりました。ただ、2025年後半は一転して狭いレンジでの小動きが続きました(図表1参照)。
金融政策を反映する独米2年債利回り差(米ドル優位・ユーロ劣位)は2025年後半に一段と拡大しました。これはECB(欧州中央銀行)が利下げを一段落した一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)が9月から利下げを再開したことに沿った動きでしょう。その金利差拡大からすると、1.2米ドルの大台を超えて一段とユーロ高・米ドル安となってもおかしくなかったと見られますが、そうならなかったのはなぜか(図表2参照)。
ユーロ/米ドルの5年MA(移動平均線)かい離率を見ると、上値が切り下げる一方で下値が切り上がる傾向が続いてきたことがわかります(図表3参照)。欧州統一通貨ユーロの誕生をきっかけに、ユーロ/米ドルが極端に上がり過ぎず、逆に極端に下がり過ぎることもないボラティリティ(変動率)の縮小が中長期的に起こってきた可能性を感じさせます。
その5年MAかい離率の上値が切り下げるトレンドが、2025年のユーロ/米ドルの上昇により、試される局面を迎えたように見えます。これはトランプ政権の政策を受けて、米ドルが「基軸通貨」転落を試されるようになった可能性を示しているのではないでしょうか。
ユーロ/米ドルの1.2米ドルという水準はその重大分岐点なので、ユーロ高・米ドルは一旦踏みとどまったものの、2026年にかけてはついにその水準も超えてユーロ高・米ドル安が広がる可能性があるのではないでしょうか。以上を踏まえ、2026年のユーロ/米ドルは1.1~1.25米ドルのレンジで予想したいと思います。
2026年のユーロ/円の予想は155~185円
2025年のユーロ/円は、年央から上昇が再燃すると、2024年7月に記録したこれまでの最高値も更新し、10月に高市政権が誕生し円安が加速すると、ついに180円の大台も上回る動きとなりました(図表4参照)。
ただしこのユーロ高・円安は、日独金利差(ユーロ優位・円劣位)がむしろ縮小する動きを尻目に起こったものでした(図表5照)。このように米ドル/円、クロス円の多くで、金利差円劣位縮小を尻目に円安が広がったのは、日本からの資本流出による「金利上昇=円安」が続いているためとの見方が多いでしょう。
こうした中で、ユーロ/円は過去5年の平均値である5年MAを再び上回り出す動きとなってきました(図表6照)。経験的にはかなり「上がり過ぎ」懸念が強くなってきたと言えそうです。
日本からの資本流出を受けたユーロ高・円安の転換はまだ見通せない状況が続いていますが、それが転換した場合は「行き過ぎ」の反動も重なりユーロ安・円高へ大きく動く可能性もあるでしょう。以上を踏まえ、2026年のユーロ/円は155~185円で予想します。
2026年の英ポンド/円は185~210円で予想
最後に英ポンド/円については、英ポンド/円も米ドル/円やクロス円と同様に、2025年後半に金利差から大きくかい離した円安が広がりました(図表7照)。円安がクライマックスを迎え、円高に反転する時には「行き過ぎ」の反動も重なり大きく英ポンド安・円高へ動く可能性があるのではないでしょうか。2026年の英ポンド/円は、185~210円で予想します。
