上昇から急落までの流れと主因
・2025年9月は他資産の上昇に出遅れたが、米国の政府閉鎖を機に「経済・国家の影響を受けにくい資産」として再評価が進み、2025年10月初旬に史上最高値を更新した。
・しかし10月10日前後に急落。トランプ米大統領の対中関税に関する政策発言がきっかけとなった。株式の下落が3%程度にとどまる一方で、ビットコインは約15%と下げが大きかった。
・特定の海外取引所で米ドル連動型ステーブルコインの乖離(デペッグ)が発生し、担保価値の目減りから証拠金取引において連鎖清算が拡大したことが下落圧力を強めた。
・トランプ米大統領の政策発言直前に大口のショートポジションが観測され、市場操作への懸念が広がったことも投資家心理を冷やした。
ステーブルコイン乖離の評価:範囲は限定的で、構造問題には波及せず
・今回の乖離は特定取引所のシステム障害に起因し、同取引所内にほぼ限定された現象で、価格は概ね元の水準へ戻った。
・乖離が目立ったのは暗号資産を担保にヘッジを組み合わせるアルゴリズム型の銘柄であり、裏付け資産を保有する担保型は対象外だった。
・世界的にシェアの高い主要銘柄で広範な乖離が生じたわけではなく、ステーブルコインの仕組み全体に波及する性質の事象ではなかった。
・2022年のテラ(LUNA・UST)大型破綻時は時価総額の毀損規模も価格下落も大きかったが、今回は下げ幅が10%超程度にとどまり、暗号資産の現物ETFの普及などで市場の厚みが増していることが示唆された。
暗号資産保有企業の評価修正と市場への波及、今後の焦点
・暗号資産を大量保有するメタプラネット(3350)の株価は、保有BTCの資産価値に対する企業価値倍率(=「mNAV」指標)の過熱が解消し、ピーク時の約10倍から足元は1倍前後へ収れんしている。
・暗号資産トレジャリー企業(DAT)への投資で個人投資家の損失は累計で約170億ドルとの推計があり、間接投資は現物以上に価格変動の影響を受けやすいという認識が広がっている。
・投資家離れで資金調達が難しくなると、保有資産の売却圧力が企業単位で生じる懸念があり、市場の下押し要因となる可能性がある。
・一方で、米国の規制当局間の協調や上場制度の前進、大手金融機関の参入拡大が進んでおり、短期的には政府閉鎖の解消や金融政策イベントが相場の転機になる可能性がある。
