S&P500が史上最高値を更新するアメリカ、一見景気が良さそうにも思えるのですが、先日こんなことがありました。 
ニューヨークに住む友人のKさんから、息子のS君が仕事探しに苦労しているという知らせを受けました。S君は大学でコンピューター・サイエンスを専攻したものの、希望する職がなかなか見つからず、現在はマンハッタンのミッドタウン、ロックフェラーセンター近くにある高級中華レストランでアルバイトをしながら就職活動を続けているそうです。 

実は米国では、S君世代のジェネレーション Z(Gen Z)卒業世代(13-28歳)の失業率が問題になっているのです。初心者・ルーティン業務の一部がAIや自動化に取って代わられる傾向が強まり、新規参入者のポジションが最初に削られやすいというわけなのです。 
「大変だね」と返事をすると、その友人は「実は…」と話を続けてくれました。 
このところ、マンハッタンの有名レストランは非常にビジネスが好調だそうで、S君の働く店でも最低の時給は22ドル(約3,300円)。チームリーダーになると26ドル(約3,900円)まで上がるといいます。物価の高さを考えれば当然とも言えますが、それでもかなりの金額です。 

ところが、そんな高給レストランの中でも「どの仕事をするか」で、まったく別の世界が広がっているといいます。 
アメリカではご存じのとおりチップ文化が深く根付いており、接客を担当する「フロントサイド」のスタッフは、チップ次第で驚くような収入を得ることができるのです。 

フロント業務をしているS君の同僚のひとりは、なんと1日でチップだけで800ドル、約12万円を稼いだそうです。単純計算で月に20日働けば約240万円になります。もちろん毎日同じように稼げるわけではありませんが、その半分でもチップだけで月120万円の収入になる計算です。しかも、トランプ大統領の公約により、このチップ収入が正式に非課税となる見通しだという点です。 
こうした背景もあり、S君の関心は今や「本業の就職活動」よりも、「どうすればフロントサイドのポジションに就けるか」に変わってきているとのこと。もっとも、既にフロントで働いているスタッフたちは自分の地位を守るため、簡単には新人を受け入れない雰囲気もあるようです。また、お客様を喜ばすために、キッチンサイドのスタッフに早く食事を出すよう催促するなど、厳しい人間関係の妙が、ここにもあるわけです。 

そんな状況の中で、親としての思いは複雑でしょう。 
Kさんは「せっかく大学で学んだ専門知識を活かしてキャリアを築いてほしい」と願っているものの、現実は厳しくなっているのです。しかも、簡単な職種に応募しても「求められる以上のスキルを持ちすぎている(オーバースキル)」との理由で断られるケースもあるとのこと。 
S君の父親のKさんは、「こういう時期だからこそ月々のアルバイト代から少しずつでも米国株の投資をしなさい」と、息子さんに投資をさせているとのこと。さすが、長期投資の名人のKさんです。 もちろん、その意見には僕も大賛成です。