この1年でアベノミクス継承をトーンダウン
高市氏は、1年前の自民党総裁選に立候補した際に、経済政策において「アベノミクスの継承」を強調した。それを象徴したのが、「いま金利を上げるのはアホだと思う」というセリフだったのではないか。
第2次安倍政権の経済政策であるアベノミクスの中核とは、「日銀による大胆な金融緩和と、それを受けた円安容認で日本経済のデフレからの脱却を目指す」ということだった。そのアベノミクスの継承とは、低金利の継続と円安容認ということになるだろう。
ただしそれは、今回の自民党総裁選では少し変わった。具体的には、1年前ほど利上げ反対を強く主張することはなかった。この1年で物価高対策への国内の期待が、主食のコメの販売価格急騰などをきっかけに一段と高まったことの影響がありそうだが、それとともに米国の政権が前回の総裁選時のバイデン政権から、今回はトランプ政権へ交代した影響もあったのかもしれない。
アベノミクスのままならトランプノミクスと全面衝突のリスク
トランプ政権のベッセント米財務長官は6月に、「トランプ政権は米国の貿易不均衡拡大を助長するマクロ経済政策は容認しないことを貿易相手国に強く警告してきた」と述べていた。「米国の貿易不均衡拡大を助長する貿易相手国のマクロ経済政策」とは、日本の場合なら大幅な円安をもたらす金融・財政政策ということになるだろう。それを容認しないとトランプ政権が述べていたことは、1年前に比べて高市氏が利上げ反対を後退させた一因だったのではないか。
アベノミクスとは、基本的にリフレ政策ということであり、それは金融緩和と通貨安容認が柱になる。そのアベノミクスの継承を目指す場合、すでに見てきたようにトランプ政権の考え方と真っ向からぶつかるリスクがある。
高市氏がこのまま新総理に就任した場合、10月下旬予定のトランプ大統領との初の日米首脳会談が実現する可能性がある。そこでの「アベノミクス継承」は、トランブ政権の貿易相手国の政策への期待と完全衝突の危険があるだろう。
最初の関門は10月末の日銀会合
そこで大きな焦点になりそうなのは、10月末の日銀の金融政策決定会合だろう。ここで利上げ見送りなどがきっかけで円安が広がるようなら、トランプ政権の貿易相手国への期待に反する結果となる。それは日米関係の悪化を受けた、トランプ政権による対日関税の再引き上げなどをもたらさないだろうか。
日銀が10月利上げを検討した場合、「アベノミクス継承」を自認する高市氏がどのように対応するか、大いに注目される。それらを確認しながら、当面の為替相場の方向性が円安か、それとも円高か見極めることになりそうだ。
