先週(9月22日週)の値動き:NY金は米利下げ継続に内外地政学リスクの高まりで3,800ドル突破6週続伸、海外高に円安も重なり国内金価格も大幅に最高値更新
先週(9月22日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週前半に取引時間中および終値ベースでさらに最高値を更新した。切り上げた水準を週末9月26日まで維持し、この日の終値は3,809.00ドルとなった。週足は前週末比103.20ドル(2.78%)高となり6週連続の上昇となった。
前週9月16~17日開催のFOMC(連邦公開市場委員会)にて0.25%の利下げが予想通り発表され、FOMCメンバーによる金利予測では年内あと2回の利下げが示唆されたことが、引き続き買い手掛かりとされた。
東欧ではロシア軍の軍事ドローンや戦闘機が複数国の領空を侵犯し、NATO(北大西洋条約機構)軍が対応に当たるなど緊張が高まっていることも安全資産としての金(ゴールド)への投資家の関心を高めている。
さらにトランプ米政権による輸入医薬品に対する100%関税賦課や海外技術者に対するビザ発給の規制強化など、不透明要因の拡大も買い手掛かりとなっている。
金国際市場への関与度合を引き上げる中国人民銀行
9月23日には、取引時間中に一時3,824.60ドルを付け同日の終値は3,815.70ドルと、いずれも史上最高値の更新となった。9月15日に取引時間中の高値および終値ともに初めて3,700ドル台に乗せたが、わずか6営業日で終値も3,800ドル台に乗せたことになる。
この日買い手掛かりにされた一つは、米ブルームバーグ通信が報じた、中国人民銀行(中央銀行)による金準備を巡るニュースだった。中国人民銀行が友好国の中央銀行に対し、上海黄金交易所(SGE、中国最大の金現物取引所)を通じて金を購入し、それを中国国内に保管するよう働き掛けているという。目的は金市場における中国の国際的な地位の強化だとしている。
中国人民銀行はこの数年、外貨準備の中で金準備の積み増しを加速させている新興国中央銀行の筆頭格であり、金(ゴールド)へのさらなる傾斜を思わせるニュースは金市場に対し相応のインパクトがあったとみられる。
コアPCE価格指数、FRBの継続利下げ見通しに変更なし
米経済指標では、「今後のFRBの金融政策の方向性を探るうえで注目」と前回のコラムでも言及した8月の個人消費支出(PCE)価格指数(PCEデフレーター)が9月26日に発表された。
結果は7月の2.6%上昇から若干加速したものの、市場予想と一致した。前月比も0.3%上昇で、7月の0.2%上昇から加速したが市場予想と一致した。FRBが重視する変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数(コアPCEデフレーター)は前年比2.9%上昇、前月比0.2%上昇で、ともに7月と同じだった。統計の中で個人消費支出(PCE)は前月比0.6%増と、市場予想(0.5%増)を上回った。また個人所得も前月比0.4%増と予想の0.3%増を上回った。
前日9月25日に発表された4~6月期の米実質国内総生産(GDP)確定値が改定値の3.3%から3.8%増に上方修正されたが、7~9月期の経済も堅調を維持していることを示唆した。
上昇続く米株、NY金の視点の違い
米国株式市場はFRBの利下げ継続観測の中でなお堅調に推移する景気を好感し、全般的に堅調展開が続いている。一方で、同じ利下げ継続を好感しつつも、地政学的要因や政府機関の閉鎖の可能性など米トランプ政権固有のリスク要因に目を向ける金市場というように、市場間で価格上昇には視点の違いがある。こうした中で先週(9月22日週)のNY金のレンジは3,718.10~3,824.60ドルと、値幅も106.50ドルに拡大した。前述の週足の上げ幅(103.20ドル)は、ほぼこの水準だった。
JPX金は連日の最高値更新、店頭小売価格は2万円接近
最高値更新が続くNY金の動向を映す形で、国内金価格も取引時間中および終値ともに最高値更新が続いた。9月23日が秋分の日の祭日で先週(9月22日週)は4営業日だったが、大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、4営業日連続で取引時間中の最高値を更新。終値も3営業日で最高値を更新した。9月26日の1万8272円、1万8218円がそれぞれ取引時間中および終値ベースでの史上最高値となった。
先週は発表された米国関連の経済指標に好調なものが多い一方で、国内は自民党総裁選の結果を巡る思惑もあり、米ドル/円相場が円安方向に進んだことも国内金価格を押し上げた。米ドル/円相場は9月26日に一時149.95円と8月1日以来約2ヶ月ぶりの高値をつけた。
こうした中でJPX金の週足は前週末比723円(4.13%)高で6週連続の上昇となった。レンジは1万7526~1万8272円で値幅は746円と前週の276円から大きく拡大した。NY金と同様に週足の上げ幅に近く、週を通して上昇が続いたことを表している。
なお、金の店頭小売価格の最高値更新も続き、週末9月26日の標準的店頭小売価格(10%消費税込み)は1万9940円と最高値を更新している。
今週(9月29日週)の動き:勢い増す欧米投資資金の流入、米予算協議とその後の経過に注目、欧州・中東地政学リスクやFRB高官発言も材料に NY金3,785.00~3,880ドル、JPX金は米ドル/円の円高への振れを見て1万8060~1万8450円を想定
8月下旬以降に活発化した金市場への欧米資金の流入は、前々週(9月15日週)のFOMCというイベントを通過して材料一巡とならず、ここにきて加速する勢いを見せている。それだけ不透明要因が多いことを表している。
今週(9月29日週)は月初となり、米国関連で重要指標の発表が予定されるイベント週となる。10月3日には9月の米雇用統計が発表予定で雇用者数の鈍化が予想されている。
難航する米予算協議
ところが米国の内政では9月末で終了する2025会計年度末を前に、連邦政府の新年度へのつなぎ予算の合意が難航しており、リスク要因として意識されている。合意に至らなければ一部政府機関が閉鎖され9月の雇用統計など重要指標の発表も延期される可能性がある。本日9月29日にトランプ大統領と米議会指導部との会談が予定されているが、民主党が優先する医療関連予算を巡り難航が予想されている。トランプ米大統領は話し合いが決裂して政府機関の閉鎖となれば、それは民主党の責めによるものとして、むしろ連邦職員の大量解雇を行う機会とも捉えているとの指摘もある。
今週は雇用統計以外でも8月の求人件数やISM製造業および非製造業景況指数など注目指標が多いのだが、その内容もさることながら、米国政治の分断の象徴ともいえる政府機能の麻痺が、従来以上に混乱の度を増す可能性があり、リスク要因として浮上している。通常はギリギリまで緊張が高まるものの、結局は合意し影響は軽微というものだが、予断を許さぬ状況といえる。
NY金、JPX金の想定レンジ
欧州を巡る地政学リスクの高まりや中東情勢からも目が離せず、今週(9月29日週)も多く予定されているFRB高官発言の内容も注目材料となる。
手掛かり材料が多い中で、すでに本稿執筆中にもNY金は9月23日の最高値3824.60ドルを突破し、JPX金も国内店頭小売価格も最高値を更新している。政治要因は数値化できず、発生した結果にファンドなども個別で反応となることから、値動きの振れ幅は拡大しそうだ。
NY金は3,785.00~3,880ドル、JPX金は米ドル/円の円高への振れを見て1万8060~1万8450円を想定している。
