先週(9月22日週)のS&P500は史上最高値更新も週を通しては下落
先週(9月22日週)の米国株市場は、9月22日(月)に6,693.75ポイントで史上最高値を更新したものの、週を通しては下落し、S&P500は−0.31%、ナスダック100は−0.5%の下げで終わりました。
ここ数ヶ月、株式市場を押し上げてきたのはAI関連を中心とする成長のテーマでした。エヌビディア[NVDA]やマイクロソフト[MSFT]といった象徴銘柄はすでに時価総額の新境地に入り、個人投資家にとっても「AIが世界を変える」という共通認識がリスクテイクの根拠となってきました。
その勢いが続く中で、先週(9月22日週)はFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策や経済指標が「現実」を突きつけた格好です。
「利下げ期待は後退するが、景気は減速していない」構図から相場は方向感を欠く状況に
発端は、先週9月23日(火)のパウエルFRB議長の発言でした。従来のように利下げの継続をほのめかすことなく、インフレと雇用の両面に依然として課題が残ることを強調。市場は「追加利下げは保証されない」と受け止め、これまでの一本調子の強気に冷水を浴びせられました。さらに、改定GDPや雇用関連指標が予想以上に強く、逆説的に「景気が強すぎるから利下げ余地が狭まる」という見方が広がり、テクノロジー株を中心に利益確定売りが進みました。
ただし、この「強すぎる経済」は完全に株価の逆風となったわけではありません。米国の消費は依然として旺盛で、関税負担や物価高の影響を受けやすい低所得層は苦しい一方、富裕層が支出を牽引しています。その結果、消費支出は堅調を維持し、景気全体の腰折れは回避されているのです。
投資家にとっては「利下げ期待は後退するが、景気は減速していない」という複雑な構図。好悪材料が同時に存在し、相場が方向感を定めにくい状況が続きました。
さらに、政治要因も市場の不安定さを増幅しました。予算協議の中止で政府閉鎖リスクが再び意識されたのです。
結局のところ、今週の米国株は小幅安で終えましたが、それ以上に重要なのは「強い経済が株にとって必ずしも追い風にならない」という逆説的な相場環境が鮮明になったことです。投資家にとっては、インフレ指標や雇用統計が強いほど株が売られるという「良いニュースが悪いニュースになる」相場のロジックを再確認した週だったと言えます。
米国株にとって「9月は最も株価を下げやすい月」
それでも、この相場を一方的に悲観する必要はないと考えます。そもそも米国株にとって9月は最も株価を下げやすい月として知られていますが、正確に言うと、月の中で下げやすいのは9月後半なのです。加えて、ウォール街には「ロシュ・ハシャナで売って、ヨム・キプールで買え」という格言があります。
ロシュ・ハシャナ(ユダヤ暦の新年)からヨム・キプール(贖罪の日)までの約10日間は、高聖日としてユダヤ系投資家が市場を離れることが多く、流動性が低下して株価が軟調になりやすいとされてきました。統計的にも、この期間のS&P500の平均リターンはマイナス気味。ただ、その後も下がり続けるわけではなく、その後の2週間はプラスに転じやすいため「買い戻せ」という言葉が生まれました。
2025年の相場に当てはめる場合、9月22日夕刻から9月24日夜の間に売却し、10月1日夕刻から10月2日夜にかけて再び買いを入れる、という意味合いになります。
現代では市場の多様化により影響は小さくなりましたが、「9月後半は荒れやすい」というアノマリーと重なり、今も投資家心理に残る知恵となっているのです。
上昇基調を維持できるのかが決まる3つの焦点
今後の市場展開を左右する焦点は3つあります。第1に、10月に発表される雇用統計やインフレ指標が再び市場予想を上回るかどうか。第2に、政府閉鎖リスクを含む政治要因がどこまで市場を揺さぶるか。そして第3に、10月半ばから始まる米国企業の決算発表です。現時点では前年同期比で+7%の増益が予想されていますが、これまで同様に最終的に事前予想を上回ることができるかどうかが注目されます。
この3つの材料次第で、年末にかけて上昇基調を維持できるのか、それとも一時的な調整に入るのかが決まってくるでしょう。
株式市場の内部構造をみると、依然としてテクノロジー株の牽引力は強く、S&P500におけるセクター間の相対優位も鮮明です。さらに、金や暗号資産を含めたリスク資産への資金流入が示すように、グローバルなリスクテイク意欲もなお健在です。
私の見立てでは、9月19日のコラムでも書いた通り、S&P500の年末ターゲットは依然として7,000ポイントにあります。仮にここから下げ局面に入ることがあっても、それは押し目買いの好機と考えています。
