少数与党で野党の協力が焦点=鍵は消費税減税

石破総理の正式な退陣表明を受けて、自民党は新たな総裁選出に動くこととなった。この自民党総裁選でこれまでと違うのは、衆参両院で少数与党となっていることから、必ずしも「次期自民党総裁=新総理」ではない可能性があるということ。このため、ポスト石破問題は野党からの協力が大きな焦点となる。そうなると、鍵を握るのは参院選でほとんどの野党が主張した消費税減税に対する姿勢ということになるだろう。

消費税減税は、財政赤字拡大に伴う資金流出懸念から円売り要因との位置づけが基本になっているようだ。このため、消費税減税へ反対の立場の石破総理の退陣は円売り、続投は円買い戻しの初期反応が基本とされる。それは7月23日に、一部メディアによる「石破退陣」報道後に見られたものだったが、今回の石破総理による正式な退陣表明の後も基本的な構図は変わっていないようだ(図表1参照)。

【図表1】「石破退陣」報道前後の米ドル/円の15分チャート(2025年7月23日)
出所:マネックストレーダーFX

「減税→財政赤字拡大懸念→資金流出→円売り」への疑問

ただこの「消費税減税→財政赤字拡大懸念→資金流出→円売り」という初期反応が持続的かどうかとなると疑問だ。資金流出が懸念されるなら、株価も下落しそうだが、その株価は石破総理の正式な退陣表明を受けた9月8日、むしろ大幅高となった。株価の大幅高は、資金流出への懸念や日銀追加利上げ先送りという円売り要因を基本的に否定する可能性があるだろう。

そもそも日本の財政赤字懸念においても、日本の長期金利は7月の参院選後よりも上がりにくい要因が出てきた。日本の長期金利が影響を強く受ける「世界一の経済大国」である米国の長期金利が、労働市場の急悪化懸念により低下傾向が強くなってきたということだ(図表2参照)。財政赤字拡大を懸念した長期金利上昇=通貨売りは「悪い金利上昇」と呼ばれるが、それは「世界一の経済大国」である米国の景気への懸念から、日本においても広がりにくくなっているのではないか。

【図表2】日米の10年債利回りの推移(2025年7月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「米国の貿易不均衡助長する政策容認せず」=円安が重要な線引きか

「ポスト石破」の有力候補は、1年前の自民党総裁選の結果などから、高市前経済安全保障担当相、小泉農相などとされる。ただし、米国ではバイデン政権からトランプ政権に交代した。ベッセント財務長官は6月に、「トランプ政権は、米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策はもはや容認しないと貿易相手国・地域に警告してきた」と述べていた。こうしたトランプ政権の方針は、自民党総裁選にも影響しそうだ。

「マクロ経済政策」とは、国家が行う経済政策なので、普通は金融、財政、為替政策などのことを言う。その意味では、次期総理の「金融、財政、為替政策」が「米国との不均衡な貿易関係を助長する」ことにならないかは、トランプ政権との関係を考える上で重要になるだろう。

それにしても、「米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策」とは、行き過ぎた通貨安をもたらすかという観点になるだろう。以上からすると、「ポスト石破」政権の金融、財政政策とも円安をもたらさないことが重要な線引きになりそうだ。