2月の対ベッセント、石破の連続会談と類似=植田総裁
植田総裁は8月中旬に、ベッセント米財務長官とも会談したとされる。これはベッセント長官があるインタビューの中で明らかにしていた。そして今度は石破総理との会談である。植田総裁が短期間にベッセント長官、石破総理の順に会談したのは2月にもあった。2月5日には、ベッセント長官と植田総裁が電話協議を行ったことを米財務省が明らかにしていた。そして同月20日に石破・植田会談が行われていた。
2月は植田総裁が相次ぎ会談を行い、米金利低下を尻目に日本の金利が大幅上昇に向かった(図表1参照)。そうした中で日米金利差(米ドル優位・円劣位)が急縮小に向かうと、それに連れる形で米ドル安・円高が広がるところとなった(図表2参照)。このようにみると、2月の植田総裁の相次ぐ会談は、日銀の金利高め誘導により円安是正を目指したものだった可能性が考えられる。では今回はどうか。
150円以上の円安に不満の可能性=トランプ政権
1回目のベッセント・植田会談は、米ドル/円が152円程度で推移している中で行われた。そして2回目の会談は、一時150円まで米ドル高・円安に戻してから間もなく行われたようだ。以上のように見ると、会談の目的はやはり為替水準が関係しており、具体的には150円を超える円安に対する米トランプ政権の不満ということではないか。
ベッセント長官と植田総裁の会談はこれまで明らかになったのは2月と8月の2回だが、この2回とも米国側によって明らかにされたものだった。この類の会談はわざわざ明らかにせず秘密裏に行うこともありそうだが、あえて明らかにしたのは米財務長官と日銀総裁の会談なら、円安是正のための日銀への利上げ圧力があったとの思惑が浮上することを狙ったのではないか。いかにもヘッジファンド業界の出身で元々自身がトレーダーだったベッセント長官という、マーケット心理に精通した人物が考えそうなことである。
9月3日に行われた石破・植田会談も秘密裏ではなく公然と行ったのは、会談自体をむしろアピールしたかったのが本音だと考えられる。目的はマーケットに円安是正のための日銀早期利上げ思惑を浮上させる狙いだったのではないか。場合によっては、ベッセント長官からのアドバイスによるものだったかもしれない。以上のように見ると、その目的はやはり円安のけん制という可能性がありそうだ。
