モトリーフール米国本社– 2025年8月26日 投稿記事より

企業の株価を左右する2つのポイント

現在の市場環境は不透明なため、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。米連邦準備制度理事会(FRB)が近いうちに利下げに踏み切るのかどうか、新たな関税政策が打ち出されるのかどうか、住宅価格が正常水準に戻るのかどうか。これら全てが、少なからず株式市場に影響を与えるため注視したほうがよいでしょう。

このような時こそ、目先の小さな動きにとらわれず、大局的な視点を持つことが重要です。結局のところ、企業の株価を長期的に左右するのは「製品の質」と「市場での持続的な存在感」です。

長期的に高い需要が見込まれる業界のリーダー3社

このレポートでは今、多少割高に見えても、長期的に保有する価値がありそうな成長株3社について詳しくみていきます。

世界の約3分の2のマイクロチップを製造、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング[TSM]

台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング[TSM](以下、TSMC)は、多くの方が日常的に使っているデバイスの多くに同社が製造したチップが搭載されています。

同社は、エヌビディア[NVDA]、インテル[INTC]、アップル[AAPL]といった大手企業向けに半導体やマイクロチップ、プロセッサを製造しています。各社が自前で工場を持つより、専門技術と設備を備えるTSMCに委託したほうが効率的でコストも安く済むためです。

その結果、TSMCは世界のマイクロチップの約3分の2を製造し、AIプラットフォームに搭載される高性能半導体においてはさらに高いシェアを誇ります。

もちろん、インテルのように自社ファウンドリ建設に数十億ドルを投じ、外部依存からの脱却を試みる企業もあります。しかし現状では事業が複雑で費用もかさみ、計画通りには進んでいません。実際には、アップルがアリゾナ州のTSMC工場からチップを調達する契約を結んだように、多くの企業は外部委託の合理性を理解しています。TSMCの優位性は今後もしばらく揺らがないでしょう。

さらにAIの普及が進むことで半導体市場の成長余地は大きく広がります。調査会社Precedence Researchは、世界の半導体市場が2024年の6,000億ドル弱から、2034年には1.2兆ドルを超えると予測しています。アナリストの予想では、TSMCの売上高は2024年の30億ドル未満から、2027年には50億ドル超へと拡大すると見込まれています。

世界の7割以上にOSがインストールされているマイクロソフト[MSFT]

現状、マイクロソフト[MSFT]の株価は決して安くはありません。2025年の予想利益ベースで30倍以上、2026年の1株当たり利益(18.11ドル)見込みでも28倍です。しかし、高品質にはそれだけのコストを払う価値があると考えられます。

マイクロソフトはコンピュータソフトウェアの王者です。ウェブ解析ツールのStatCounterのデータによれば、同社のWindows OSは世界のデスクトップおよびノートPCの70%以上にインストールされています。

生産性ソフトウェアの分野では、Googleドキュメントの登場により、かつてのような圧倒的な存在感はやや薄れたものの、依然としてこの領域の主要プレイヤーであり続けています。さらに、クラウド事業「Azure」も存在感を増しており、アマゾンには及ばないものの直近の第4四半期には25%の成長を達成しました。

しかし、マイクロソフトを長期保有すべき最大の理由は数字以上の部分にあります。同社はブランドとして確固たる地位を築いており、PCの分野に深く根付いています。ユーザーにとって他社のプラットフォームへの移行は手間が大きいため、マイクロソフトには優位性があると考えられます。

加えて同社は近年、ソフトウェアの「買い切りモデル」から「サブスクリプションモデル」へビジネスモデルを移行しました。月額料金は負担が小さく、継続収益は安定的で、繰り返し顧客を「獲得」する必要もありません。顧客の多くは、慣れ親しんだシステムやソフトウェアをそのまま使い続けることを選び続けます。

この流れは今後も変わらないでしょう。人々はもっと重要な課題に取り組む必要があり、わざわざ他社製品へ乗り換える理由は乏しいと考えられます。

業界最高水準の処理能力を備えたデジタル信号処理チップを発表、ブロードコム[AVGO]

エヌビディア[NVDA]のプロセッサが人工知能データセンターの心臓部であることは広く知られています。この膨大なサーバー群を相互接続して1つの統合AIシステムにする技術を提供しているのが、ブロードコム[AVGO]です。

もちろん、競合は存在しますが、ブロードコムは最大手であり、おそらく最高峰の企業と言えるでしょう。例えば、最近発表された「Jericho4」イーサネットファブリックルーターがその一例です。これは「次世代の分散型AIインフラ向けに特別に設計されたプラットフォーム」であり、100万個以上のプロセッサを相互接続し、これらのプロセッサ間で毎秒最大3.2テラバイトの速度でデジタルデータを送受信することが可能です。

さらに2025年初めには、業界最高水準となる1レーンあたり200ギガバイトのデジタルデータ処理能力を備えたデジタル信号処理チップを発表しました。端的に説明すると、ブロードコムの技術はAI基盤アーキテクチャに膨大な容量と驚異的な高速性をもたらし、人工知能プラットフォームの性能をさらに強化します。

投資家が注目すべきは、ブロードコムのCEOのホック・タン氏の見通しです。同氏は2024年末、AIハードウェア市場は早ければ2027年までに600~900億ドル規模になる可能性があると述べました。これは、同社の2024のAI関連収益122億ドルの数倍にあたります。AI分野は、現時点で同社全体の売上301億ドルの半分以下にすぎませんが、成長余地は非常に大きいのです。

調査会社グローバルマーケットインサイト(GMI)も「世界のAIハードウェア市場が2034年まで年平均18%のペースで成長する」と予想しています。こうした見通しと、同社の現在のリーダーシップを踏まえれば、8月上旬以降の同社株価調整は今後得られる数少ない「投資好機」となるかもしれません。  

免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者James Brumleyはアルファベット[GOOGL]の株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アルファベット、アマゾン・ドットコム[AMZN]、アップル、インテル、マイクロソフト、エヌビディア、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]の株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はブロードコムを推奨し、以下のオプション取引を推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、インテルの2025年8月満期の24ドルコールのショート、マイクロソフトの2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。