昨日は、立秋でした。古今集夏歌最後の歌は、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の「夏と秋と行きかふ空のかよひぢはかたへすずしき風や吹くらむ」、そして古今集秋歌最初の歌は、藤原敏行の「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」です。この頃、季節は着実に移ろっていきます。東京も、一昨日は涼しいとは云えないけれども随分過ごしやすい気温でしたし、空の表情が明らかに変わって来ています。
そんな季節ですが、トランプ政権の一挙手一投足が、やはり世界の空模様を日々変えていると感じます。今回の日米相互関税のすったもんだも驚きですが、マーケットは冷静で、このような結末になることを普通に読んでいたような動きでした。私は元々は債券マーケットで修行した身なので、個人的には関税交渉以上に、各国との対米投資の約束に興味を惹かれます。
日本と韓国だけでも、5500億ドルと3000億ドルで8500億ドル。約125兆円です。私の理解では、これは基本的に株式型の投資ではなく、融資型のものです。これは、トランプは日本政府と韓国政府から、米国債(長期債ですね)を125兆円、米政府から直接購入する約束を取り付けた、とも云えるような効果を持つ内容です。トランプは、トップ外交で、米国債を市場外で125兆円買わせる約束を取ったのです。凄い。これは史上最大の債券セールスではなかろうか?
5月にトランプの発言を機に米長期債の金利が上がった時に、大慌てで発言を修正し、TACO(Trump Always Chickens Out)ートランプは最後はいつもビビる、などと揶揄されましたが、トランプ政権にとって、そして金庫番であるベッセント財務長官にとって、米国債、特に長期債をきちんと消化する、金利を上げないで大量に売り続けられることは、極めて重要なことです。そして彼らはそれを関税交渉という餌で、見事にやり抜けたように私には見えるのです。米長期金利は、もちろんインフレなどの理由で上がることはあるでしょう。しかし需給的には、この日本と韓国とのディールで、かなり楽になった、いやそれ以上に引き締まったのではないでしょうか。
トランプ、やるなぁ。今回の関税交渉の顛末を見ても、勘弁してよ、と云いたくなる部分や、そもそも世界最大の大国としてあのようなドタバタでいいのか、と云う意見はもっともです。そして、トランプは毀誉褒貶の多い人です。しかし或る意味で、仕事もちゃんとやっていると思います。うーん、ひいき目が強いかなぁ。しかし、ややひいき目で見ないと、その人が何を本当にやっているのか、中々理解できないものです。引き続き、トランプ政権は注視していきたいと思います。
