ハイテク株の上昇が香港ハンセン指数の上昇に寄与

中国株の2025年6月30日終値~7月31日終値までの騰落率は、上海総合指数は+3.7%、香港ハンセン指数は+2.9%と上昇基調が続いています。ただし、香港ハンセン指数は月末にかけて50日移動平均線に向かって調整しているところです。香港ハンセン指数の推移を振り返ると、トランプ関税問題で急落し、4月7日にはハンセン指数が3000ポイント下落し、過去最大の下げ幅となりました。下げ率は1997年以来の水準で、売買代金も過去最大を記録し、売り込まれました。その後、4月9日に関税の90日間延期が発表され、世界的に株式市場が回復基調となりました。香港市場もやや出遅れながら、5月には香港ハンセン指数が50日移動平均線を回復してきました。そして5月12日、米中貿易協議の共同声明が発表されると、商いを膨らませて大幅高となりました。

その後の動きは緩やかでしたが、しばらく50日移動平均線をキープし、7月に入ると一段高となって続伸する日が多くなり、7月24日に高値を付けました。しかし7月25日に反落すると、7月30日には売買代金を20%も膨らませて大きく下げました。続く7月31日もさらに大きく下げています。

トランプ関税問題で急落し、その後切り返してからの上昇はあまり勢いがなかった印象もありますが、上昇期間としては約3ヶ月に及ぶ長いものでした。また香港ハンセン指数は7月に2021年11月以来、3年8ヶ月ぶりの最高値を記録し、上海総合指数も2022年1月以来3年半ぶりの高値を付けました。(ここにきて少し調整はしているものの)上昇トレンドは確かなものだったと言えるでしょう。加えて年初来の香港ハンセン指数は日経平均やS&P500、ナスダック100指数を上回る上昇となっており、ここまでのところ、香港市場は世界の中でも勝ち組に入り、数年来の高値も更新し、堅調さがうかがえます。CSI300指数や上海総合指数など、中国本土市場の株価指数はわずかな上昇にとどまっていることから、香港に上場するハイテク株の上昇が香港ハンセン指数の上昇に寄与していると考えられます。特に1~3月にディープシークが話題となり、香港のテック企業が大きく買われました。

2025年後半はトランプ関税の影響が試される

2025年の中国株の上昇や下落の転換となる要因は、中国独自のものというより、トランプ関税の影響によるものと考えられます。関税は中国の景気や景況感にも大きな影響を与える要因です。

米国の貿易交渉は、中国以外の主な地域では合意に達しています。中国の次に貿易赤字の多いEUは15%、4番目に多いベトナム(繊維・アパレル製品の輸入が中国の次に大きい)は20%、日本や韓国との赤字額はベトナムより遥かに小さいものですが、いずれも15%となりました。どの地域も妥結したとはいえ、4月に設定された10%の相互関税よりも負担が重くなることになります。

新関税は8月から実施され、その後、米景気や対象地域の経済に影響が出てくると、相場の重しとなる可能性もあります。最大の貿易赤字国である中国と、3位のメキシコは現在も交渉中で、いずれも合成麻薬の流入を理由に上乗せ率が高くなっています。中国には一時145%という関税を課す方針が示されていましたが、大部分は停止され、期限を延長して交渉が続けられています。最終的に米中間で合意が成立すれば、かなりの相場材料になるでしょう。

しかし、これまでは、各地域との交渉進展や合意への「期待」が株式市場を上昇させてきたのに対し、それが一巡して合意済みという「結果」が出たことで、今後は現実的な関税の負の影響に焦点が移る可能性があります。

新関税適用の8月に入った途端、米国株は大きく調整しました。直接の原因は雇用統計の悪化ですが、これまでは雇用統計が良かったことで、関税の負の影響を覆い隠し、貿易交渉の進展に注目が集まっていたのだと思います。関税は経営者のマインドに影響を与えるため、雇用を左右し、さらに物価を押し上げます。

今後は関税交渉の進展に対する期待のフェーズから、合意後の現実的な影響を見極めるフェーズに移っていくように思います。その中で米国と中国との交渉がどのような結果になり、相場にどのような影響を及ぼすのかが、2025年後半最大のポイントとなるでしょう。