・ムーディーズが米国債格付けを最上位から1段階引き下げた。米債の格下げは3社目で3回目となるが、あくまでも市場のテーマはマクロ環境によるもので、格下げ(または格上げ)によって真新しい話を織り込む必要はない。今回は米ドル、米国への信認が懸念される中で起きた。過去2回とは状況も異なり、単純に比較はできない。

・外貨準備に占める通貨割合は、米ドルが一番大きく6割強となっている。過去25年にわたってその割合はゆるやかに低下している。とはいえ米ドルが占める規模は大きく、代わりとなる先は一つではない。それは債券市場も同様である。

・現状、米国はトリプル安の状況にあるが、その背景に財政の問題があると言われている。主要各国の債務残高のGDP比率と30年債の変化をみると、総じて債務残高に懸念がある国の超長期債が売られる傾向にある。どの国でもイールドカーブがスティープ化している。世界的なテーマとして財政が注目されるタイミングに入っているのではないか。

・債券投資の中心となりそうな10年金利の推移をみると、健全な動きの範囲内ととらえられる。関税は景気を押し下げる材料になるが、一方で、財政や減税は景気刺激策として期待され、金利上昇の材料となる。金利の上昇によって、財政政策への抑止力につながることが予想される。このままでいかないのではないかとイールドカーブや30年債が警鐘を鳴らしている。結果として弱めの減税策になることが予想され、景気の盛り上がりに欠け、結果として金利低下につながるのではないか。短期的なリスクに対して、中長期的な債券投資機会としてみてよいのではないか。

・今後、利下げ予想はどうなるか。FRB(米連邦準備制度理事会)高官のさまざまな発言はあるが、不確実性の高い中、経済を確認するのに数ヶ月は要する。しばらくは利下げも織り込みづらいものの、金利が横ばいであれば、投資機会をうかがうチャンスもそれなりにある局面ととらえられる。

・景気動向として中国から米国へのコンテナ船数の推移をみると、4月まではトランプ関税発動前の駆け込み需要で増えていたが、その後低下し、直近まで見てもあまり元気がない。弱い部分が目立ち始めたがこれは金利低下要因としてとらえられる。全体として体力が弱まっている部分は気にした方がいいだろう。

・債券投資の追い風になる話として、米国の平均実行完全率の推移における年金基金の資金充足状況をみると、資金余剰になっており、債券投資に対する需要が年金基金から出てくることは十分期待できる。

・ヘッジファンドによる米国債先物ショートポジションをみると、短期的に相場かく乱要因は残存しているが、目線を中期的なマクロテーマに向ければ、債券投資の妙味は相応にある。