2025年5月16日(金)8:50発表
日本 2025年1~3月期四半期別GDP速報(1次速報)

【1】結果:3月期GDP速報は市場予想を下回り、4四半期ぶりのマイナス成長に

【図表1】2025年1~3月期GDP速報の結果
出所:内閣府よりマネックス証券作成
【図表2】実質GDP成長率と寄与度分解(季節調整値の前期比、%、%ポイント)
出所:内閣府よりマネックス証券作成

2025年1~3月期の国内実質GDPは前期比年率0.7%減と、Bloombergが集計する市場予想0.3%減を超える結果となりました。2024年3月期以来となる4四半期ぶりのマイナス成長となっています。

内訳を見ると、増加すればGDPにマイナス寄与する輸入が拡大したことが大きな要因であることがわかります(図表2)。個人消費は前期比0.04%増(寄与度にすれば0.0%程度)と前四半期からほぼ横ばいとなりました。プラスに寄与したのは、民間在庫と設備投資で、在庫は米国による関税政策の発動を前に積み増しがされ、また設備投資もR&Dやソフトウェア向け投資がプラスに寄与しました。

【2】内容・注目点:物価影響もあり名目GDPは拡大も株式市場は軟調

四半期ベースの名目GDPは624.8兆円と物価影響も相まって、前四半期から0.8%増となりました。実質GDPとは異なり、6四半期連続のプラス成長となりました。年率では3.1%増となり、2024年10~12月期と比較すると成長率の鈍化がうかがえるも、右肩上がりの基調は続いている様子です。

【図表3】名目GDP(四半期実額)とTOPIXの推移(兆円、ポイント)
出所:内閣府、Bloombergよりマネックス証券作成

株式も名目ベースであることから、名目の国内総生産が拡大した際には、株も上昇する傾向にあると言えます。実際にコロナショック以降のインフレ下においてTOPIXも上昇しており、歩調を合わせて推移していることが確認できます(図表3)。一方で、ここ数四半期は株価の出遅れがうかがえ、経済成長よりも足元の関税政策といった不確実性が市場センチメントを下押ししている部分が大きく、一時4月初旬にはTOPIXは2,250ポイント程度まで下落しました。

【図表4】TOPIXのEPS成長率の推移(前年比、%)
出所:FactSetよりマネックス証券作成 *は先行きで市場予想コンセンサスの集計値 
※2025年5月16日時点

先行きの利益予想を見ると2024年と比較すると鈍化となるものの、2025年・2026年は8~9%増益と現時点では堅調さがうかがえます。関税政策といった不確実性が完全には織り込まれていない数値であり、増益率も下方修正される可能性が考えられ、その点も株式市場が軟調である理由と言えるでしょう。

【3】所感:経済成長は堅調に推移する見通しであるが下押し要因も多い

【図表5】先行きのGDP予想(前期比年率、%)
出所:内閣府、Bloombergよりマネックス証券作成、点線は先行きで市場コンセンサス集計値 ※2025年5月16日時点

先行きのGDPは主には前年と同水準の賃上げによる個人消費の伸長によって、再びプラス成長に回帰するとの見方が大半です。株式市場は下落基調ですが、図表3のようにGDPが見通しに沿ってプラス成長で推移すれば、株式市場が再び浮上していく材料になると考えられるでしょう。一方で、今回プラスに寄与した設備投資や、輸出入は足元の不確実性から減速していく可能性があり、予想を下押しする材料も多々推察できる状況です。現在の局面では、予想が変動するものとしてある程度幅を持ちながら、株式投資においても過度にリスクのあるポジションを避けていくことが重要のように思います。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太