4月の振り返り=最大10円以上の下落で米ドル/円140円割れ

相互関税発表以降、3月までとは「違う円高」に

4月の米ドル/円は一段安となり、一時2024年9月以来の140円割れとなりました(図表1参照)。月初は150円台に乗せる場面もあったので、月間の最大下落幅は10円以上の大幅となったわけです。ではなぜ、4月に入ってから米ドル/円の下落がこのように急拡大したのか。

【図表1】米ドル/円の週足チャート(2024年1月~)
出所:マネックストレーダーFX

米ドル/円は1月の158円から140円割れまで、すでに20円近くも下落しました。ただし、米ドル/円の下落は、3月までと4月以降では日米金利差(米ドル優位・円劣位)との関係が大きく変わりました。3月までの米ドル/円の下落は、基本的に日米金利差縮小に沿ったものでした。ところが、4月から下落が一段と拡大したのは、一時は金利差拡大を尻目に起こったものでした(図表2参照)。つまり、4月に入ってからの米ドル/円の下落は、3月とは「違う下落」、「違う米ドル安・円高」と考える必要があります。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

4月に入ってから顕著になった金利差とは逆方向への為替相場の動きは、米ドル/円に限ったものではありませんでした。例えば、ユーロ/米ドルも4月に入ってから一段高となりましたが、これも金利差とは逆方向の動きでした(図表3参照)。

【図表3】ユーロ/米ドルと独米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「米国売り」は対米投資引き揚げ、「米ドル離れ」なのか

4月2日、トランプ大統領が自身の肝入りの政策である相互関税を発表すると、間もなく世界的に株価が急落し、その一方で米金利は急騰に向かう「トランプ・ショック」となりました。米金利が急騰したことで金利差米ドル優位は拡大し、それを尻目に米ドルは下落が拡大することとなったわけです。

このように金利が上昇する中で株価と通貨が下落することを「悪い金利上昇」と呼びます。また、金利上昇は債券価格の下落ですから、株、債券、通貨の「トリプル安」、それが今回は米国で起こったので「米国売り」とも呼ばれます。つまり、米ドルの下落は3月までとは異なり、4月に入り相互関税発表後からは「米国売り」の結果に変わったということでしょう。

金利差変化の中身を独米で見ると、4月に入ってからは米金利が上昇する一方で独金利は低下が続いていました(図表4参照)。前者は米国債価格が下落していること、そして後者は独国債価格が上昇していることを示しています。これを見ると「米国売り」は、対米投資をユーロ圏などへ引き揚げている可能性もあるのではないでしょうか。米国からの資金還流、米ドル建てポートフォリオの見直し、いわゆる「米ドル離れ」ということがもしも始まったなら、それは一時的にとどまるか微妙かもしれません。

【図表4】独米の10年債利回りの推移(2024年12月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

5月の注目点=「米国売り」再燃は回避できるのか

トランプ政権1期目(2018年)の「悪い金利上昇」は2ヶ月以上続いた

トランプ米大統領の肝入り政策発表をきっかけに広がった「米国売り」、それを受けた米ドル/円の一段安。こうした中で、トランプ政権は相互関税の一時停止や、「米国売り」を加速させるきっかけになったと見られるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長解任発言をトランプ米大統領が撤回するなどにより、その再燃回避を目指したようですが、それらが奏功し、「米国売り」再燃が回避されるか否か。それが5月以降も米ドル/円下落が続くか、それとも反転するかを考える上での最大の焦点でしょう。

トランプ政権1期目の2018年にも、今回のように「米国売り」という表現ではなかったものの、「悪い金利上昇」「米トリプル安」は起こり、それは2~3ヶ月続きました(図表5参照)。その意味では、今回も「米国売り」の鎮静化はまだまだ予断を許さないのかもしれません。

【図表5】米ドル/円と日米10年債利回り差(2016~2020年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

2025年5月は米国債の四半期定例入札も予定されています。「米国売り」リスクが残る中で、この四半期入札を乗り切れるかは大きなヤマ場になるのではないでしょうか。5月には、日米の金融政策の会合も予定されていますが、これらも「米国売り」再燃回避にどのように貢献できるかが大きなテーマになりそうです。

5月の米ドル/円予想レンジは137~147円

米ドル/円は4月に入り「米国売り」が拡大したことで、一段安となりました。これは3月までの米ドル/円の下落は米景気減速の可能性などを受けた日米金利差縮小に反応したものでした。その意味では、何とか「米国売り」再燃を回避できても、米景気が2022年以来の減速が続くようであれば、基本的な米ドル安・円高の流れが転換するまでには至らないのではないでしょうか。

「米国売り」が再燃した場合、米ドル/円は一段の下落に向かうリスクが高まり、それが回避された場合でも米景気減速が続く中では米ドル高・円安への戻りは限られる。そうした見方を踏まえ、5月の米ドル/円は137~147円で予想したいと思います。

4/28~5/2の米ドル/円予想レンジ=139~145円

今週(4月28日週)は4月30日(水)に2025年第1四半期の米GDP発表が予定されています。そして木曜日から5月になり、雇用統計などの4月の米景気指標発表が始まります。事前予想では、GDPも4月の米景気指標も急悪化の予想となっていますが、それを見極めることが今週の大きなテーマになります。

また、5月1日(木)には日銀の金融政策発表が予定されており、今回政策変更は予想されていないものの、金融市場が過敏に反応するイベントだけに、結果を受けて為替相場の値動きが拡大する可能性には注意が必要でしょう。

最大のテーマは引き続き「米国売り」再燃を回避できるかであり、それを巡る綱渡りが続く可能性が高いのではないでしょうか。そうした中で、米ドル/円は上値が限られ、荒い値動きが続きそうです。以上から、今週の米ドル/円の予想レンジは139~145円とします。

(※)5月7日のウィクリーレポートは休載とさせていただきます。