先週(1月27日の週)の動き:NY金の1月月足は2024年3月以来の上昇率、国内金価格も最高値更新
先週(1月27日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は5週続伸となった。週末に月末が重なった1月31日のNY金は、一時2,862.90ドルと取引時間中の史上最高値を更新。終盤には利益確定の売りに上げ幅を削り2,835.00ドルで終了した。
トランプ米政権の政策に対する先行き不透明感から安全資産としての需要を映し、前日には2024年10月30日に付けていた最高値を更新し、終値ベースでも2,845.20ドルと最高値を更新していた。取引時間中としては連日の最高値更新となったが、米新政権が2月1日からカナダやメキシコへの関税実施方針を示したことにより米長期金利が上昇。それを受け、対ユーロを中心に米ドル高が加速しドル指数(DXY)が急伸、利益確定の売りが優勢となり、前述の通り2,835.00ドルで週末の取引を終了した。
週足は前週末比56.10ドル、2.02%高の5週連騰ということに。1月月間では194.00ドル、7.35%高となった。これは2024年3月の183.70ドル、8.94%高以来の上昇率となる。
米株市場の波乱がNY金にも波及
週初めの1月27日は米株式市場でハイテク株が大きく売り込まれ、ここまでの株高の象徴となっていたエヌビディア[NVDA]株が1日で18%も下落。中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)が公開した低コストの人工知能(AI)モデルを受け、AIの収益性や先端半導体への旺盛な需要に対する投資家の警戒が広がりを受けたものだった。AI分野で米欧企業の優位性を崩すとの懸念が広がった。
株式市場の急落を受けた金市場では利益確定の売りが膨らみ、1月27日のNY金は前週末比40.50ドル安の2,738.40ドルで終了していた。本来であれば株価急落の折に、安全資産としての買いを集めるのが金(ゴールド)と思われがちだが、一過性ではあるものの、市況急変の折には決済のための資金調達の手段として、売りの対象となることがある。いわゆるキャッシュ・アウト(Cash-Out)の売りが出たもので、売りが一巡すると週後半に向けて急反発となった。
NY市場での限月交代
ちょうどNY金市場では2月物から4月物へと、中心となる取引(Active-Month)が変更(限月交代)になるタイミングで、4月物の価格には2ヶ月分の金利相応分などプレミアムが乗るため、20~30ドルほど価格水準が切り上がったことも高値更新につながった。
FOMCは予想通りで通過
先週(1月27日週)はFOMC(米連邦公開市場委員会)という注目イベントもあった。市場の予想通り政策金利は4.25~4.50%に据え置かれた。会合後の会見で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「制約的な政策を過度に早急に、もしくは過度に大幅に緩和すれば、インフレを巡る進展が妨げられる可能性がある」としたが、この内容がややタカ派的と株式市場などでは受け止められた。トランプ政権の政策については、どのような結果をもたらすかを判断するのは時期尚早とした。
前週、トランプ大統領がFRBに対して「ただちに利下げを要求する」と述べたことから質疑応答ではFRBの独立性に関連する質問があったが、議長はトランプ大統領からは直接接触はないとしFRBの使命とする物価の安定と雇用の最大化に尽力するとした。独立性を維持するか聞かれ「それが我々の仕事だ」と答えた。
130ドル超のレンジ、輸入関税を巡る観測
先週(1月27日週)のNY金のレンジは2.732.00~2,862.90ドルと、130ドルを超える値幅となった。これは前述したように、限月交代によるプレミアム分を考慮しても想定外であり、米新政権の関税を巡る不透明感が金市場にも影響を及ぼしている。一律関税の範囲に金(ゴールド)も含まれるのではとの憶測から、ロンドンの現物価格とNY金の間に通常の規模を超えたかい離が生じている。ただし、製品でないゴールド本体に輸入関税を課すことで米国の優位性が高まることは考えにくく、早晩沈静化するとみられる。
JPX金 取引時間中、終値ともに最高値更新
一方、国内金価格もNY金の上昇を映す形で高値追いとなり、史上最高値を更新した。大阪取引所の先物価格JPX金は週初めの1月27日に、一時1万4047円と取引時間中の高値を更新し、初めて1万4000円台乗せとなった。週末および月末となった1月31日の終値は1万3966円となり、週足は前週末比93円、0.67%の続伸に。なお1万3966円は終値ベースでの過去最高値となる。1月月間では588円、4.4%の大幅高となった。
今週(2月3日週)の見通し:トランプ関税発動に対する米株式市場の反応を注視、内外金価格は高値圏維持か
月初の今週(2月3日週)は米国関連で重要指標の発表が続くイベント週だが、それよりもトランプ政権の関税を巡る動きが市場を揺るがしそうだ。トランプ大統領はここまで、他国との貿易赤字の拡大(貿易不均衡)を抑えるために、輸入品に関税を付加することで米国製品の優位性を高め、製造業の米国内への回帰を促すと公約していたが、いつ発動されるかは明らかにしていなかった。
1月31日、トランプ米政権のレビット報道官はカナダとメキシコに2月1日から25%の関税を課すとし、中国には10%の関税を上乗せするとした。実際の発動は2月4日からとなったが、早々にカナダは報復措置発動を発表。メキシコも同様に報復措置の意向で、にわかに貿易戦争の様相となり市場に緊張が高まっている。すでに2月3日のアジア市場から市場は混乱の度を増している。
こうした中で内外ともに過去最高値圏にあるゴールドは、前述の1月27日のようにキャッシュアウトの対象となり、水準を切り下げる可能性がありそうだ。まさに「備えとしての金」であり、波乱に備えた投資家の売りが勝るのか、逆に波乱に強い安全資産としての買いが勝るのか見極めることになる。
ポイントは、週明け2月3日の米国株式市場の反応だ。一部の銘柄に物色が集中する中で割高が指摘されていただけに、株式市場が急落に見舞われるとなると、NY金も2,770ドル前後までの下値が想定できそうだ。売り一巡とともに反発が想定できるため、週末には2,800ドル台中盤に復帰というパターンか。
一方で関税賦課の中でドル高が想定できることから、JPX金については円安が一定の支えとなり、NY金の下げ局面でも下げ幅は限られ1 万3700円程度で1万3900円前後の水準を維持するとみられる。