リスクオン想定に対するリスクオフ浮上

年末年始に米長期金利、10年債利回りは大きく上昇、一時は4.8%と2023年以来の水準まで上昇した(図表1参照)。これは、トランプ大統領の経済政策、特に関税政策のリスクを先取りした面が大きかったと見られた。

【図表1】米10年債利回りの推移(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

こうした中で、米ドル買いも急増したようだ。ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(主要5通貨で試算)は、買い越しが30万枚を大きく上回るまで拡大した(図表2参照)。これは、経験的に米ドルの「買われ過ぎ」懸念が強くなった可能性を示すものでもあつた。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作

カナダドル売り越しは一時、過去最大規模に拡大

米ドル買い越しのほぼ半分を占めたのがカナダドル売り越しで、一時は過去最大規模に拡大した(図表3参照)。これは、トランプ大統領がカナダからの輸入に25%の関税を課すと述べてきたことが理由だと考えられる。

【図表3】CFTC統計の投機筋のカナダドル・ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ただし、過去最高規模の売り越しとは、別な見方をすると、「売られ過ぎ」懸念が強くなったとも感じさせる。要するに、「トランプ関税」リスクを想定した取引は、カナダドル売り・米ドル買いなどを中心に、「行き過ぎ」懸念も強くなっていた可能性があった。

1月27日の米ドル急落は、「トランプ関税」関連取引の逆流か

そうした中で1月27日、日経平均は300円以上の急落となった。きっかけは、中国のスタートアップ企業、DeepSeekのAIモデルが米欧企業の優位性を崩すことへの懸念とされた。「トランプ関税」関連の取引は、「安全資産」とされる債券の売りに代表されるように基本的にはリスクオン取引である。ただ上記のように行き過ぎ懸念も出ていたなか、それとは逆の株安、リスクオフ急拡大となった。

以上のことから、1月27日の米ドル急落は、「トランプ関税」関連の取引の逆流が基本だったのではないか。そうであるなら、さらに「トランプ関税」関連の取引、債券売り、米ドル買いなどの逆流が広がるかは、株安、リスクオフがどこまで拡大するかが鍵になるだろう。

ひとつ気になるのは、米ハイテク株の相対的な「上がり過ぎ」が2000年のITバブル並みに拡大していた点である(図表4参照)。今回株急落のきっかけとなった「中国のスタートアップ企業、DeepSeekのAIモデルが米欧企業の優位性を崩す」ということが、果たしてそのような「バブル破裂」をもたらすだろうか。それは、「トランプ関税」リスクを見込んだ取引、債券買い、米ドル買いなどの逆流も左右しそうだ。

【図表4】米ナスダック指数とNYダウの相対株価(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成