12月の振り返り=11月から一変、約10円もの米ドル高・円安
2024年12月の米ドル/円は、149円台で取引が始まり早々に148円台まで下落しましたが、その後はほぼ一本調子で上昇に向かい、11月のトランプ氏の米大統領選挙後に記録した高値も更新、一時158円台まで上がり、最大で約10円の上昇となりました(図表1参照)。月末にかけて大きく反落した前月の展開から打って変わり、大きく上昇に転じたのはなぜか。
12月は日米の金融政策が注目されました。結果的に、米国では2025年の利下げ見通しが後退することになり、その一方で日本では早期利上げ期待が後退しました。このような日米金融政策の先行き見通しの修正が、米ドル高・円安を後押ししたとの理解が一般的ではないでしょうか。実際に、12月の米ドル/円の上昇は、基本的には日米金利差米ドル優位拡大に沿ったものでした(図表2参照)。
日米の金利、長期金利の10年債利回りを別々にみると、米10年債利回りは確かに大きく上昇しましたが、日本の10年債利回りはほぼ横ばいでした(図表3参照)。これを見る限り、12月の日米金利差米ドル優位拡大は、基本的に米金利上昇の影響が大きく、日本の早期利上げ期待後退の影響は限定的だったようです。
米金利が大きく上昇した影響から、日本の金利低下は限られた
日本の中央銀行である日銀の利上げは、一時は12月にも行われるとの見方が広がったものの、12月19日に行われた金融政策決定会合、その後の植田総裁の記者会見などを受けて、利上げは1月も微妙で3月まで遅れる可能性もあるという見方に変わり、それが円売りを後押ししたとの解説も少なくなかったようです。ただ、12月中の円金利の低下は限定的にとどまりました。ではなぜ、日銀の早期利上げ期待の後退とされた中でも、日本の金利低下は限られたのか。
日本やドイツなど先進国の長期金利は「世界一の経済大国」である米国の長期金利に連動する傾向があります。12月に日銀の早期利上げ期待が大きく後退したとされる中でも実際の金利低下が限られたのは、米金利が大きく上昇し、その影響を受けたことが大きかったのではないでしょうか(図表4参照)。
12月に米ドル/円が大きく上昇したのは、基本的に日米金利差米ドル優位拡大に沿ったものでした。金利差米ドル優位拡大は、日本の金利低下ではなく、ほとんどが米金利上昇の影響によるものだったようです。
以上のことから、さらに金利差米ドル優位拡大で米ドル/円が一段の上昇に向かうか否かは、日銀の早期利上げ見通しの影響は限られ、すこぶる米金利がさらに上昇するか否か次第ではないでしょうか。
1月の注目点=日米の金融政策などにらみ金利差拡大は続くのか
1月は、24日に日銀の金融政策決定会合、そして29日に米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されています。ここ数年、日銀関連のイベントに対して為替市場は大きく反応する傾向が続いていることから、1月の日銀会合を受けた為替相場の反応は要注意でしょう。
ただし、米ドル/円が基本的に日米金利差変化に沿った展開が続くなら、金利差を通じた米ドル/円への影響という観点では、FOMCなどを受けて米金利上昇が続くか否かが本質的な焦点になるでしょう。
念のために確認すると、仮に日銀が1月利上げを見送っても、一方で米金利が低下に転じるなら米ドル高・円安は限られるのではないでしょうか。逆に言えば、日銀が1月に利上げを行っても、米金利の上昇が続くなら米ドル高・円安がさらに広がる可能性に注意する必要があると考えられます。では米ドル/円の行方を左右する可能性のある米金利上昇はさらに続くのか否か。それを考える上で、米国株の動向に注目してみたいと思います。
1月の米ドル/円は155~161円の予想レンジで想定
12月から米国株の下落が目立つようになりました。特にNYダウは約50年ぶりに10営業日連続の下落となりました。2023年8~10月や2024年3~4月の比較的大きな米国株反落は、米10年債利回りが4.5%を大きく超える局面で起こったものであり、その米金利上昇は米国株安が広がる中で終了しました(図表5参照)。
12月の株安と米金利上昇は、この2023年8~10月や2024年3~4月に見られたものと同じように、「米金利上昇を嫌気した株安」という面が大きく、米金利上昇は株安の拡大の中で終わるのではないかと考えています。そうであれば、米国株安を見ながら「米金利上昇=米ドル高・円安」も転換に向かう可能性が高いのではないでしょうか。
以上を踏まえ、1月の米ドル/円は、2024年の高値の161円更新には至らず、「二番天井」を確認するとの考え方から、155~161円の予想レンジで想定したいと思います。
1月6日週の予想=156~158円のレンジ・ブレークに注目
米ドル/円は、過去2週間、156~158円のレンジを中心とした方向感の乏しい展開が続きました。このため、このレンジを抜けた方向に大きく動き出す可能性があるでしょう。今週は為替相場が大きく動くきっかけになることの多い米雇用統計の発表が1月10日に予定されていることから、それらを受けてレンジを抜ける可能性に注目です。
仮に上方向にレンジを抜けた場合は、2024年7月に記録した161.9円の高値トライに向かうと考えられます。その場合は、日本の通貨当局による米ドル売り介入への警戒感が高まることにより、米ドル買いにも自制が働きそうです。レンジを下方向に抜けるきっかけとしては米国株安が注目されるのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は155~160円で予想したいと思います。