NYダウ、S&P500、ラッセル2000が堅調、小型株など裾野が広がる
米国市場では、先週11月28日(木)はサンクスギビング(感謝祭の祭日)で株式市場は休場、翌29日(金)は短縮取引となりましたが、主要市場は堅調に推移しました。NYダウ、S&P500、ラッセル2000はそれぞれ1.39%、1.06%、1.17%上昇し、3主要市場はともに史上最高値を更新し1週間を終えました。
小型株指数のラッセル2000が高値を更新していることは、大型株だけでなく裾野が広がっていることを意味しています。高値を更新しなかったナスダック100についても、11月8日に付けた史上最高値の21,117.18ドルまで残すところあと0.89%と、同指数の史上最高値も時間の問題となっています。
根強いインフレが続くなかで12月利下げの可否は?
先週11月26日(火)に発表された11月の連邦準備制度理事会(FRB)会合の議事録からは、インフレ目標2%の達成には予想以上に時間がかかるとの認識が示されました。また、金融政策の調整には、より慎重で段階的なアプローチが必要になる可能性についても挙げられています。
さらに、27日(水)に発表された10月の個人消費支出(PCE)価格指数のデータは、インフレが根強く続いていることを示しており、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げの可否を左右する可能性があります。このため、今週発表される11月の雇用統計やインフレデータは市場にとって非常に重要なイベントとなります。
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatchによると、次回12月18日のFOMCで利下げが起きる確率は現時点で66%です。マーケットが期待する利下げが見送られた場合、株式市場にとって一時的な調整局面が生じる可能性があります。一方で、利下げへの期待が高まれば、年末に向けてさらなる上昇が期待されます。
個人の経済活動が活発化、ブラックフライデーやサイバーマンデーは記録的な売り上げか
ブラックフライデーとサイバーマンデーの売上の動向も、今後のマーケットの動向を左右する要因の1つです。米国の消費活動でみる経済は堅調で、2024年の感謝祭明けのブラックフライデー(11月29日)やサイバーマンデー(12月2日)期間の消費活動は記録的な数字となりそうです。
経営コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは、ブラックフライデーからサイバーマンデーまでの期間における米国の小売売上が初めて750億ドル(およそ11兆2500億円)に達し、前年比で約5%伸びると予測しています。同社は、ホリデーシーズン全体の売上の約8%がこの期間に集中するとみており、これは2019年以来の最高の割合となります。
また、運輸保安局(TSA)によると、先週11月26日(火)から今週12月2日(月)までの間に1,830万人の旅行者を検査する予定であり、これは2023年と比べて約6%の増加になると発表しました。また、自動車協会(AAA)は、記録的な数の旅行者を予測しており、その中には7,200万人近い自動車利用者が含まれています。
米国株は、個人の経済活動が活発ということもあり、株価が史上最高値を更新しています。相対力指数(RSI)の数値で判断しても、S&P500もナスダックも「買われすぎ」の水準には達していません。アメリカ個人投資家協会(AAII)のブルベア指数を見ても、投資家のセンチメントは懸念しなければならないほど強気の領域には達していないのです。そうした意味での懸念は、現状のマーケットにはありません。
閣僚人事や貿易政策…、トランプ次期大統領の動向に注視
トランプ氏は、新政権発足に向けて、人事発表を行っています。その人選は今回の選挙に協力してくれた恩人を選ぶ「お友達人事」と言われ、メディアを賑わせています。
11月22日、トランプ氏はヘッジファンドのスコット・ベッセント氏を財務長官に選出すると発表しました。彼は元ソロスファンドに籍を置き、1992年のポンド危機では、イギリス・ポンドの下落を主導し、ソロスファンドに莫大な利益をもたらしたトレードの責任者として知られています。
そのベッセント氏は、3−3−3を推進すると発表しています。3−3−3とは、「2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)の3%まで削減」「規制緩和を通じてGDP成長率を3%に引き上げ」「1日あたり300万バレルの原油またはそれに相当するエネルギー生産を達成」という3つの「3」を目標に掲げた政策です。ベッセント氏は、政治、経済、地政学に幅広い視野を持つ人物で、同氏の任命発表は市場に安堵感をもたらし、米10年債利回りは下落しました。
11月25日、トランプ氏は自身のSNSで貿易政策の発表も行い、マーケットを驚かせました。カナダやメキシコ、中国という米国にとって最大の貿易相手国からの輸入品に対する関税引き上げを示唆する発言は自動車関連株に打撃を与えましたが、市場全体の反応は限定的でした。トランプ氏の意図は、大統領就任までのおよそ2ヶ月間で、3ヶ国からアメリカ経済にとって有利な提案を引き出そうとしているのでしょう。
この発表を受け、メキシコのシェインバウム大統領は強い懸念を表明。一方、カナダのトルドー首相はトランプ氏の関税発表後に速やかにトランプ氏との会談を申し込み、トランプ氏のフロリダの邸宅で夕食をとりながら、アメリカへの不法移民や麻薬の流入など幅広い問題について語り合ったとされています。
今回トランプ氏による突然の一方的な発言で、マーケットはもちろんカナダ、メキシコ、中国も驚かされた訳ですが、今後の動向には警戒が必要です。また、日本や欧州といった同盟国への一方的な貿易に関する要求発言は、世界的な貿易戦争へと展開する可能性もあり、今後も注意が必要とされます。
年末までのマーケット、強気になれるデータとは?
これらの動きから、2024年末までの市場は、ホリデーシーズンの消費動向、FRBの政策決定、貿易摩擦という複数の要因が絡み合う展開となることが予想されます。ただ2024年年末までの相場を考える上で、強気になれるデータがあります。
感謝祭の先週S&P500は、1.06%上昇しましたが、1928年からのデータでは、大統領選挙の年の感謝祭の翌週(2024年おいては今週12月3日週)の平均リターンは1.12%の下げ、中央値で0.68%の下げ、今週のリターンがマイナスになる確率は67%と非常に下がりやすい週です。
しかし、S&P500の感謝祭から年末にかけての平均リターンは1.38%の上げで、中央値は1.60%の上げ、上昇する確率は75%です。今週下げるとすれば、これは年末ラリー前の調整と捉えられ、安値での買い増しを検討する良いタイミングといえるのではないでしょうか。